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<謹告>今日の日記、「Snigel行くところ事件あり」という説を見事に裏付けるものになってます。こういう事件がある限りこのホムペは永遠に続きます。 Sport and Social Committee 10人乗りのボート。マリーナの中はゆっくり走っていたものの、マリーナを出るやいなやダブリン唯一のヌーディストビーチ(んなもんがあるなんて私はついと知らなかったが)を横目に、ボートはスピードを上げる。水飛沫はまともに全身にかかってくるし、ボートは跳ね回る。そんなに波が高かったわけじゃあない。だけどボートはこれでもかと跳ねるのだ(写真をご覧頂けば分かると思いますが、船首はこれでもかというくらい上がってます)。 …なのに、このボート、各席にシートベルトがついてない。 もしかしたら万一転覆した時にシートベルトがついていない方が脱出しやすいとかそれなりの理由があるのかもしれない。だけど、跳ね回るボートの上で私(を含め全員)はしっかり目の前の手すりにつかまるを得ない。そんな状況下で写真を撮った私はこのホムペのために命を張っていると威張ってもいいかもしれない。ちなみに上の写真、2隻のボートで出発したので私が乗っていない方のボートを撮ってます。 そんなこんなでたった10分ほどでIreland's Eyeに到着。Howthのハーバーから見るとおそろしくちっぽけなIreland's Eyeも近くで見ると意外にでかい。 さらに、勝手に無人島だと思い込んでいたのだが、実はこのように建物もある。なんでもどっかの銀行のオーナーがこの島を所有しており、「私有地につき立入厳禁」なんだそうな。まあひところに比べて落ち着いてきたとはいえ地価狂乱のダブリンで何と贅沢な。 かくして上陸できないIreland's Eyeの岸に沿ってボートは進む。ここではボートは動物観察の目的も兼ねてゆっくりと進む。 見てくださいよ。これ。Howthからたった数キロ沖合いの島に住む動物たち。ダブリンの交通渋滞の中で毎日ケンカしながら、猫の額のような狭い家に住む私にとって、ダブリンからたった数キロのところにこんな「聖域」があるという事実自体が大きな驚き。ダブリンに5年も住んで初めて知った事実。 かくしてカンドー的なIreland's Eyeを見物してボートは一路Howthへ。島の反対側にくると、沖合いに出たせいか波はひときわ高く、ボートは振り落とされるんじゃないかというくらい激しく上下する。ボートがすーっと波の谷間に落ちるたびに大きな歓声(というか悲鳴というか)が上がる。私はもはや写真を撮る余裕もなくなり、カメラを必死に右手で防水服の中にしまいつつ、左手で目の前の手すりをしっかり握る。 折りしも襲ってきたシャワー。雨粒が顔を叩きそれも痛い。でどんどん顔が濡れているのは波のせいなのか雨のせいなのかわからなくなる。 するとひときわ大きな波がボートを襲う。海水をもろに被ると同時に感覚としては2メートルくらいボートは落っこちた。再び上がる歓声と悲鳴。ところがその歓声に紛れて Stop the boat!! という苦しげな声。後ろを見ると、私の真後ろに座っていたIT担当のInver(仮名)がひっくり返っている。 緊急事態発生。 …と今は無き「電波少年」ならテロップが流れるところ。賢明な読者さんならもうお気づきと思いますが、Inverはボートの上下運動に耐え切れず腰を痛めてしまったわけ。しかもInverの真っ青な顔を見る限りではシャレにならない事態。Inverは絶対に子供だったら泣いていただろうという激痛に歯を食いしばって耐えている。船長(というか操縦士)の若い兄ちゃんは、 船長: 「大丈夫?」 と心配顔。たぶん、Inverの様態よりも自分の過失の方が恐かったのではないかと推察。くだんのInverの顔はますます青くなるも改善される兆しは無し。船長の判断でボートはそのまま「微速でMalahideに戻る」ことに。船長はひとこと 船長:「誰か痛み止めを持ってない?」 …お前が荷物は全部置いていけと言ったんだろうが! Malahideへの帰路。これがまた長い旅でして。時速70キロで進んだところを時速15キロで進めば当然5倍近く時間がかかるわけで。取り合えず船は揺れないが、シャワーと時折襲う波のおかげで顔がずぶ濡れになりながら所要45分でMalahideに戻る。 で、到着後、問題発生。 Inverが動けない。 わかりやすく言えばぎっくり腰の状態です。私はなったことはないものの、経験者によると動けないほどの激痛だそうな。Inverも何とか船から下りようとするものの動けない。この日記を書いている時点ではまだわかっていませんが、たぶんぎっくり腰よりももっと深刻だと思うのですが。 船長判断で救急車を呼ぶことに(ここから先の写真、暗くなってきた上にこんな緊急事態時にフラッシュを焚いてアホ面をして写真を撮っていると顰蹙を買うというきわめてまっとうな判断からフラッシュ無しでこっそり撮影してます。ゆえに写真は暗くて見づらいですがご勘弁を)。 救急車を呼ぶくらいだったら沖合いから救急車を呼んでいればマリーナに着くなりにInverを搬送できたのではと思うのは結果論でしょうか。 ともあれ、驚いたことに連絡からおよそ15分で救急車到着。アイルランドのことだから1時間は来ないのではないかと思っていた私には素朴に驚き。救急隊員は2名、ゆっくりと走ることなく歩いて船へ。…ポーズでもいいから走れよ。お前ら。 他方Inver。彼は救急車が到着するまでに根性で船から降りる。がそこで力尽きマリーナで四つんばいになって動けなくなっている。世にも情けないポーズ。ま、本人じゃないからそんなふざけたコメントができるのだが。 で、彼が動けないという事実にようやく気がついた救急隊員(さもなきゃおまえらなんか誰も呼ばんというのに)は担架を持ってくる。そんなことをしていると別の緊急車両のサイレンの音。 …しょ、しょ、しょ、消防車まで来たー。 どうやら動けないInverのためにレスキュー隊が呼ばれたらしい。その頃すでにInverは最後の力を振り絞り担架の上に。そう お呼びでない。こりゃまたシツレーいたしました …状態なわけで。 かくして、Inverは、私が数週間前にお世話になったBermount Hospitalに運ばれていきました。 ねえねえ、Inverさん。今日の事故。非常に不運だったというかなんというか。心から同情する。でもさあ、今回のボートツアー あんたが幹事 じゃなかったっけ。こういうのを自爆テロっていうんだよ。たぶん。 で、いつもの日記ならここで終わるわけですが、今日の日記は映画よりも見事な多段オチになってまして、さらにもう一つオチがつくわけです。 救急車が去り、取り合えず解散…という状況になり各自が車に向かっていると ああぁぁぁぁぁぁ という情けない声。声の方を見ると、同僚の車は 駐車違反で輪留めをつけられていたそうな。 かくして一部の人にヒジョーに高くついたSport and Social Committeeのイベントでした。この本当の意味でのアドベンチャーが楽しめるシーサファリツアー、御興味のある方はオフィシャルサイトからどうぞ。 <謹告>今回のシーサファリツアー、とんでもない内容になってしまいましたが、船長いわく「初めての騒動」だそうで、通常であればこのツアー、本当に楽しいらしいです。私も機会があればまた参加しようと思っているくらいですのでオススメできます。ただ、Snigel行くところに騒動ありというわけで私が行くとこういう騒動になってしまうわけです。 日記才人の投票ボタンです(ご協力感謝) |