なべて世はこともなし
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|アイルランド真実紀行へ
2003年06月14日(土) |
国勢調査員は3度ベルを鳴らす |
ピンポーン♪
誰からうちのドアのベルを鳴らす。夕方8時(明るいので「夜8時」という感覚ではない)。
無視。
だいたいうちにやってくる人間なんてろくなもんじゃないと相場が決まっている。大学時代に独りでアパートに住んでた時もやれパラボラ放送の受信料を払えだの(←それは義務じゃないのか?)、巨人新聞を取れだの、赤旗党のチラシ投げ込みから果てはモロ見えおげれつビデオのチラシ投げ込みまで。
アイルランドもまあ同レベルのような。「チャリティのスクラッチカードを買え」だとか(これが一番多いような気がする)、某与党の地元政治家はうちには参政権を持っている人間はひとりもいないのに2ヶ月に一度は戸別訪問してくるし、今の家ではないけどその昔柄の悪いエリアに住んでた時はガキが車を洗う代わりにチップをくれとやって来たり(車など持ってなかったのに)、例の必ず当たるスクラッチカードを投げ込んでいったりとまあ、とにもかくにもろくなもんじゃない。アパートと違ってインターホンで撃退できないところも辛いところ。呼んでもいないタクシーがやってきたこともあった。
ここまで書いてふっと思い出したけどこんなこともあった。ある日、カタログショッピング用のカタログを投げ込んでいったオッサンがいて、中にはDIYやキッチン用品がごちゃごちゃと書かれているが値段的にも商品的にもまったく興味なし。かくしてそのままごみ箱(正確にはリサイクルボックス)ポイになった。
そこまではよかったが、このカタログを投げ込んでいったオッサンが翌日再びやってきて、
オッサン:「カタログ置いていったものだけど、何買う?」 家人:「なにもいらない」 オッサン:「じゃあカタログ返して」 家人:「え?捨てたよ」 オッサン:「なんて捨てんだよ!」(怒)
ごみ箱の中で水分を吸ってべこべこになったカタログを渡してオッサンを追い返したことは想像に難くないかと。だいたい頼みもしないのに勝手に家のポストに投げ込んで行ったものの所有権を主張するか、フツー?そういえば日本で銀行口座に勝手に振込をして無理矢理お金を貸す悪徳金融業者が問題になってるとかなってないとか。それとは次元は違えど似ているような似てないような…。
閑話休題。話は最初のドアベルが鳴ったところに戻る。この日の夕方のドアのベルも家には私しかおらず、かつ、私は玄関から離れた二階の自室にいた(日記の更新をしていたのです)ので無視。
ピンポーン♪
…何度押されても出ないもんね。例え前庭に自分の車が止めてあっても家には誰もいないのだ。ああ、玄関の外に電気メーターがあるような国じゃなくて良かった。
それで訪問者は諦めたらしくドアベルはそれ以上鳴らなかった。
翌日、同時刻、やはり同じように…
ピンポーン♪
…ドアベルが鳴る。
無視。
もう一度
ピンポーン♪
無視。
…諦めたらしい。
さらに翌日の同じ時刻、同じように
ピンポーン♪
…がこの日は違った。この日私は運悪く二階の自室ではなく一階の台所にいた。台所にいると、玄関の曇りガラスから台所の人影は見えてしまうのだ。つまりここにいる限り居留守は使えない。
私はいやいや玄関のドアを開ける。さあ、今日は何を売りつけようというのか。
そこに立っていたのは年の頃30半ばと思われるおばさま。ブロンドの髪はきれいにショートで決まっており、婦人用のスーツをきちんと着こなし、左腕にはノートパソコンを抱えている。…なかなか知的な女性という印象を受ける。女性はおもむろにノートパソコンを広げると…
女性:「こんばんわ。私、ナントカ省(忘れた)の国勢調査を実施しておりまして、ただいま若干の質問に答えてもらっています。ええと、この家にはAさんとBさんがお住まいでよろしいですか?」
AさんとBさん…確かに住んでるけど。ちゅうか、このおばさんが毎晩やってきてたのか?
私:「はあ?国勢調査?それ去年だかに大掛かりなのをやったんじゃないんですか?たしか20ページも渡る小冊子を埋めて送った記憶があるんですが」 女性:「いえ、それはカントカ省が行ったもので、私どもはナントカ省です」
…なんだかなー。どこかの国がある日は電気屋が道路に穴を掘り、翌日ガス屋が穴を掘り、その翌日道路管理者が道を掘りかえす…とかいうとんでもない非効率なことを当たり前の顔してやってたみたいだけど、アイルランドもあまりやってることの次元は変わらんなあ。そんな質問、いっぺんにやってデータを使い回しすればいいのに。
などと思いつつ、やれ私の最終学歴だの、現在学校に通っているかなどおもに学歴と年収に関する関連について知りたい様子。正直で素朴な私は(私は正直で素朴ですが何か?)それらの質問に素直に答える。女性は手際良くそれらの情報をパソコンに入力していく。唯一、この質問を除いては…。
女性:「ええと、最終学歴は、大学ということですが、学部は何ですか?」 私:「はあ、不経済学部ですが」 女性:「不経済学部…、不経済、不経済、その選択肢はないわねえ。『数学』でいいかしらねえ」
…だいぶ違うぞ。だいたいなんでもっとも一般的ともいえる不経済学部が選択肢にないんだよ。どこかアイルランドはやはり抜けている。
数日後ひでかすにその話をすると、
ひでかす:「ああ、そのおばさんだいぶ前にうちに来たよ。ほとんど全部の質問に『答えたくない』と回答拒否しちゃったよ。おばさんは『Fair Enough』と結構諦めがよかったよ」
…なるほどねえ、そういうテがあったか。こんどこのテの訪問者が来たらそうしよう。そう思った翌週、私の手元に訳のわからん手紙がやってきた。封筒の表には
と書いてあり、中には私の住所・名前・PPS番号(納税者に割り振られている番号)までごていねいに印刷してある。日本で住基ネットがどうこう未だに議論されてるけど、アイルランドではいい悪いは知らんがこのPPS番号で個人は完全に番号管理されている。
質問:「最終学歴は」 質問:既婚・既婚、子供の有無
など個人のプライバシーにもろ首を突っ込んだ質問がずらずら並ぶ。
で、同封の紙には
「あなたはアイルランド中の10万人のサンプルの中に選ばれました。あなたの雇用主には、あなたの勤務時間・給与等の質問に答えていただきます。(中略)この調査は法的な根拠があり、あなたには回答する義務があります。(中略)1週間以内に同封の専用封筒を使い返信してください。」
…なんだかすんごく高飛車だと思うのは私だけですか?
で、質問事項を良く見ると、過日ノートパソコンを抱えた女性が私に聞いていった質問とほぼ重複してます。アイルランド政府はなんとかして私の個人情報を集めようと躍起になっているのではないか…などといつも通りで尾行されていると思う被害妄想を持った人と同レベルの被害妄想を持ってしまう。
さらに中を気をつけて読むと
「個人情報はいかなる場合も政府機関その他に開示されることはありません」
…あ、それでか。要は個人情報の保護のために政府(省庁)間でデータの横流しができないんだ。
ちょっとは安心したものの(というか秘密にするようなデータはほとんどないんだよね)、半面、この効率の悪さは何とかならんものかと思っています。
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