なべて世はこともなし
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|アイルランド真実紀行へ
2002年11月21日(木) |
アイルランド人が金を溜めれない理由をひとりの男に見る |
最近アイルランドの巷では盛んに新製品の宣伝をしています。その新製品とは…
カメラ付きケータイ
…そういや未だにほとんどのケータイの画面は白黒だな。この国。自分のも含めて。
今日私の書きたいことはそんなことじゃあありません。会社で私のとなりの席に座る同僚Andrew(仮名)についてです。
実は彼、うちの会社は週40時間きっちり働いていてもそれは単なる副業でして、彼の本業は「サッカー選手」です。スポーツにミジンコ程度の興味もない私(過去日記にも書いた通りW杯最中も黙々と仕事をしてました)、よくは知りませんが、彼、日本で言えばJ2の選手らしい。で、それだけでは食っていけないからうちの会社で二足のわらじを履いているわけ。毎週末、先週はスライゴ、今週はコークとアイルランド中で試合をしているらしい。
二足のわらじを履いていればそれなりに金持ちにもなりそうなものだが、彼の場合はそうはならない。…というか、アイルランド人に金がたまらない理由を彼の人生に垣間見ることができるような。今から彼のことをああだこうだ書きますが、私は彼のことを本当にいいやつだと思っていますし、話の分かるやつです。彼のことを好意的に思っている…という前提の上で笑いながら読んでやってください。
数週間前のお話。彼、土曜日の夕方にアイルランド中南部の町キルケニーで試合があったそうな。彼の同僚(…つまり私の同僚でもあるわけですが)の女の子がその週末偶然にもキルケニーに行く用事があって、彼は彼女にキルケニーまで乗っけていってもらう約束を取りつけた。電車賃も浮いてラッキーというやつ。
その日の12時。彼は彼女が家に迎えに来るのを今か今かと待っていた。すると彼女からケータイにメッセージ。
「遅れます」
…で、彼は忍耐強く待った。何度か電話を入れるも「もうすぐ行く」の一点張り。ところが午後3時になって、彼女は突然ケータイのメッセージで…
「今日はやはりキルケニーには行かない」
アイルランド人の典型的いい加減さ...他に形容のしようもありませんが。困ったのは彼。試合の時間は迫っている。バスではもはや間に合わないし、ちょうどいい時刻の列車もない。彼がとった緊急避難の方法とは…
タクシー
彼は表通りに行き、流しで走っていたタクシーをつかまえる。アイルランドの土地カンのない方のために書いておくと、ダブリンからキルケニーまでは私の記憶が正しければだいたい160キロ程度。かなりの距離です。
タクシーに乗るなり彼は…
彼:「キルケニーまで」
驚いたのはタクシーの運ちゃん。ダブリンのタクシーには「メーターエリア」というのがありまして、平たく言うとダブリン近郊ではメーターを使って運賃を算出しますが、そのエリア外に関しては運転手と事前に運賃を交渉して決めるというのが決まり。で、運賃の交渉の結果「162.5ユーロ」で交渉成立。私にはなぜそんな半端な値段だか理解できない。
で、ほくほく顔のタクシーの運ちゃん、その日は徹夜で働く予定だったものの、「あんたのおかげでさっさと車庫に帰れるよ」などと言いつつキルケニーに到着。
到着したはいいが、彼の財布には150ユーロきっかししか入っていない。私の感覚でいえば、それだけの金が入っていれば十分だと思うが。まあこれだけの大金、私の感覚でいえばタクシーの運ちゃんは「じゃあ150ユーロでいいよ」と言ってくれそうなもの。彼もそう思った。タクシーの運ちゃんに150ユーロしか手持ちがないことを彼が伝えると…
「あっそう。それは大変だ。ならATMを探そう」
…162.5ユーロきっかり請求されたそうです。蛇足ながらその日の試合は負けたらしい。踏んだり蹴ったりとはまさにこのためにあるような言葉。
162.5ユーロという大金をどぶに捨てた彼、その悪夢の記憶も覚めやらぬうちに彼は私の机にやってきて…
「Snigel、Snigelのクレジットカード使わせてくれない?」
なんでも12月の週末、イギリスに行きたいらしく、航空券をインターネットで予約したい。その為にはクレジットカードが必要なものの彼はもっていない。彼は現金先渡しでくれたので私としてはノーと言う理由はない。で、100ユーロ超の航空券を私のクレジットカードで決済した。
ここまではまあいい。
ところが航空券を予約したたった数日後彼は…
「Snigel、ヒコーキ予約した日、試合があったことすっかり忘れていた…」
彼の買った航空券はいわゆる格安航空券。当然変更・取消不可。某英国航空に電話するも
「取消変更はできません」
とつれない返事。…というわけで、162.5ユーロに続き、100ユーロ超の金を彼はドブに捨てる。こんなことをしている限り金は貯まらんわな。
今日になって彼は…
「Snigel、今度ドイツに行くからまたクレジットカード貸してくれない?」
…と言いつつ120ユーロを私に渡す。
さっそく航空券を購入したものの、彼が本当にドイツに行くかどうかはまさに神のみぞが知る。
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