なべて世はこともなし
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2002年11月11日(月) ラブホテルの「ガイジンお断り」について考える

昼食時。お弁当になるようなものが何もなかった私は、残り物のごはんを他っパーに詰めてそれをお昼ご飯として持参。で、それに日本から持ってきた永谷園の鮭茶漬けのもとをかけて鮭茶漬けにして食べていると…何時の間にか私の周りに人垣が。


「その黒っぽい物体は何だ?」
「のり」
「じゃあ、その黄色っぽいのは?」
「せんべい」
「その隣りの黄色っぽいのは?」
「鮭」



…質問攻めに遭っている間にご飯は思い切り水気を吸ってしまい、お茶漬けなんだかただの水っぽいご飯なんだか分からなくなってしまった。まだまだ日本文化が理解される日は遠いのだろうか(…なんだか論点がずれているような…)


今日の本題。まずはこの読売新聞の記事をお読みください。


「外国人の入浴拒否は違法」札幌地裁判決


 外国人であることを理由に入浴を拒否されたのは憲法や人種差別撤廃条約などに違反するとして、北海道南幌(なんぽろ)町の大学講師有道(あるどう)出人(でびと)さん(37)(米国出身)ら男性3人が、小樽市の入浴施設経営会社と同市を相手取り、慰謝料計600万円の支払いと謝罪広告掲載を求めた訴訟の判決が11日、札幌地裁であった。坂井満裁判長は「外国人一律入浴拒否は不合理な差別で、社会的に許容される限度を超えた不法行為」と述べ、同社に計300万円の支払いを命じた。同市への請求は棄却した。

 訴えによると、有道さんらは1999年9月、家族と入浴施設「湯の花」を訪れた際、「外国人の入場はご遠慮下さい」との張り紙があり、施設側から「外国人が入るとトラブルが起き、日本人の客が敬遠する」と入場を拒否された。日本国籍を取得後の2000年10月にも、運転免許証を示したが入場を断られた。

 有道さん側は「外国人差別というより人種差別。小樽市も差別撤廃措置を怠ったため、精神的苦痛を受け続けた」と主張。これに対し、同社側は「入浴拒否はロシア人船員らのマナーの悪さから苦情が相次いだため。違法性までは認められない」、市側も「外国人へのマナー説明チラシの配布など十分な対策をとった」と反論していた。


出典:読売新聞11/11付サイトより。


ガイジンとしてアイルランドに住む私にとって、そして、日本人から見て「ガイジン」を彼女として持つ私にとって、この記事は非常に興味深い。


これを読んでまず思い出したのは去年のお話。私とMausi(私の彼女の名前。いつも通り仮名)は去年の秋、車で県境を越え、友人が「秘湯」と太鼓判を押す「はげ温泉」に行ってきた。中年男性諸氏、別にあなたにあてつけてません。そういう名前の温泉なんです。


で、ここ、話せば長くなるけど私の知る限りでは貸切の浴槽が10個かそれ以上並ぶいわば「貸し温泉」とでも言うべき施設が数軒ある。別の言い方をすると「家族風呂」というやつ。で、ここに行き、私は「露天家族風呂」にMausiと入ってきた。はい、そこ、いらん想像をしなくてよろしい。私はただ淡々と事実を述べているだけなんだから。


この日、Mausiは紅葉が眩しい渓谷でヤマメの塩焼きを食べQ州中央の美しい山並みを見て、そしてくだんのはげ温泉へ(だからあなたにあてつけてるんじゃないってば)。結論から言うと、別にMausiは風呂の中で体を洗ったとかそういう日本人から見て非常識な行動は私が一切何も言わなかったにも拘らずなかった。仮に彼女を銭湯で見ても私は何一つ文句を言うことはなかったと思う。


「外国人が入るとトラブルが起き、日本人の客が敬遠する」


という温泉施設側の言い分。この点からしてどうも納得できない。もし何らかの不都合があるならその都度そう言えば良いだけで、それが「ガイジン入館拒否」となるという短絡思考が私には理解できない。


たまに銭湯や温泉旅館で「刺青のある方の入館はご遠慮ください」と書いているのを見かける。これの方がまだ説得力がある。銭湯で背中に昇り竜が描かれている人が隣りにいたら確かにある種の違和感…というか恐怖感が出てくるというのはわからなくてもない。が、隣りにガイジンがいたからもうその温泉に行きたくない…というのは論理が飛躍しているのではないかと思う。もし「ロシア人船員がトラブルを起こした」のなら、それはむしろ「団体客のマナーの悪さ」に起因するような気がするのだが。


この裁判の争点になっている通り、どうもこの「ガイジンお断り」の後ろには人種差別、あるいはガイジンを受け容れたくないという思惑が見て取れる。


もっといい例がラブホテル。前にも書いたような気がするけど、私は未だにラブホテルに行く機会に恵まれていない。是非一度行ってみたいと思っているのだが。ともあれ、聞いた話によると、ラブホテルにも「ガイジンお断り」のところがけっこうあるらしい。ガイジンどうし、あるいは一方がガイジンだと、なんでも下のようなことを英語と日本語で書かれた紙がフロントからぬうっと出て来るらしい。


「当館の非常用設備は英語で表記されていません。ゆえに外国人の方のご利用はご遠慮頂いております」


これこそああ言えば上祐でして。「非常口」の表示なんてあのドアから人が出ていく図はまさに万国共通だし、仮に一昔前の表示で漢字で緑地に「非常口」と書いてあればよほどのアホタレでない限り、非常口と書いてあることは想像がつくと思う。もしつかないというなら、デパートや映画館など「ガイジンお断り」の場所が町中に溢れることになると思う。


ラブホテルという密室空間の中ではことのお相手以外の第三者に迷惑をかけることはない。強いて言えば部屋を汚く使って掃除のおばちゃんに迷惑をかける…と言う可能性は否定できないけど、でもそれは日本人でも同じ。たぶんガイジンの方が部屋を汚く使う…という理屈は成り立たないと思う。このことから考えると、どうもこのラブホテルのガイジンお断りも単なる人種差別から来ているのではないかと思うのだ。


話はMausiと日本に行った時に戻るのだが、私が見た限りでは出会ったほとんどすべての人が、Mausiに親切にしようとし、トラブルというトラブルに見舞われなかった。が、ほんの一部の人間が、こんな感じで、「ガイジンお断り」という不条理なことをしている限り、日本はガイジンにとって住みやすい国にはならないだろう。ガイジンに特に親切にする必然性はないと思う。が特に特別視する必要もないと思うのだが。

とりあえず、ラブホテル管理者様、不当なガイジン差別は止めてください。さもなければ私がラブホテルを訪れるのはいつの話になるやら。



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