なべて世はこともなし
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|アイルランド真実紀行へ
2002年08月31日(土) |
ひでかす洪水のチェコを逝く(その3) |
おとといのひでかす大先生の日記中、「プラハでは毎日ヒコーキが墜落しているらしい」というくだりがありましたが、その証拠写真です。
ひできすがゆく--プラハ途中まで一人旅(3)--
| ――プラハの夏…まだ一人旅――
「決めた」と、二泊分の予約をしてもらいお金を払いました。ここでは全額を払い、手数料も取られない。引換券をもらいホテルに向かうという仕組み。
すでに僕はプラハの旅のしやすさを実感し始めていました。市内では割合英語が通じやすいし、通じにくい時でも片言のドイツ語が通じる。交通システムもわかりやすく安いし、人は親切。残念な事に今回ひできすはチェコ語を勉強するひまが無かった。「ありがとう」すら知らないで旅行するのは恥ですね。今度来る時はもっと勉強してこようと強く思いました(ひできすは、この物語の後編で「近いうちにまた来るぞ」と決心する事になる)。
地下鉄に乗り込み指定された駅に着くと…なあんだ、さっき空港からのバスを乗換えた場所じゃんか。ホテルまでは歩いて3分。すぐわかりました。入り口はロックされていたのでブザーを押そうとするけど、ボタンがずらりと並んでいてその全部にホテルの名前が書いてある。なんだあ、こりゃ?首をかしげながらその一つを押すが、何も起こらない。「ふむ」、片っ端からボタンを押しながら、よく見ると一番端っこに「受付」用のボタンがあるじゃんか。ということは他のボタンは各部屋直通のベル。ああひできすはなんと全ての部屋のベルを鳴らしまくっていたのでした。すまん他の客。
203号室のカギをもらい部屋に入るとベッドにごろん。落ち着くひととき。大きなベッドを右へ左へごろんごろんとやってみる(普段やる機会が無いから)。窓を明けて「ふう」と外の空気を吸い込む。湿った空気だ。
シャワーを浴びた後ベッドに寝転んでテレビのスイッチを入れる。ほとんどのチャンネルはチェコ語かドイツ語。おっ、CNNがニュースをやっている。これを見てから出かけよう。
“…至上最悪の洪水となる模様です。すでにある地域では床上浸水しており、(あれま)…これから水位は更に上昇する見込みで(ほう、そりゃ大変ね)…市内には避難勧告が出されました。以上、わたくし何がしがプラハからお送りしました。”
硬直。
…今、プラハって言ったよな。何だこのオチは? もう一度外を見ると、雨は降っているがたいした事は無い。他人事のような外の様子に、僕の頭の中には「?」が並ぶ。現在4時前、待ち合わせまでまだ4時間弱ある。街を散歩してこよう。
受付氏に洪水について聞くと「この辺は大丈夫らしいよ」。「街は?」…「知らない、えへ」…(うーん、使えん)。同じ地下鉄でさっきの広場に戻る。地下鉄の駅から広場までは旧市街の狭い道が続き、両側に気の利いたカフェや小物屋が並ぶ(途中にSex Machine Museumというのがあったが見ない振りして通りすぎる。通り過ぎたってば、本当に)。先ほどは案内所を目指していたので気づかなかったが、広場には多くのカフェが並び、通りにテントを張って外で飲食が出来るようにしている。テントの中でウェイトレスが機嫌悪そうに箒でテントを内側からつついてたまった水を落としている。突然ざばっと落ちてきた水に驚いて観光客が飛び下がる。広場の中心には有名な時計台があり、上に付いている二つの小窓は時報のたびに何かが起こる事を予想させる。
雨はさらさら降っている。とりあえずあの有名なカレル橋へ行ってみよう。石畳の旧街道をモルダウ川に向けて進む。雨で道がつるつるすべる。観光客が多い。雨傘の列が橋の方へと続く。5分ほど歩くと道が開け、橋の入口が現れた。橋の付け根の両側に石造りの塔が立っていて、人々が雨宿りをしている。その近くには人だかりができていて、面白そうなのでそこに分け入って見ると、
ありゃ、本当に洪水してるわ。
橋は高いところにあってそのたもとのレストランの入口がもう見えないくらいに水が上がっている。ありゃりゃ、ニュースは本当でした。モルダウ川の流れは速く、茶色に濁っている。このレストランだけが低いところにあるようで、他のほとんどの場所は無事。
橋の入口を過ぎて対岸へ向けて歩き出す。橋は長くて横幅も広い。話によると橋の上にはお土産屋さんのテントが並び人で賑わうらしいが、今日はいないようです。橋の両側には数メートルおきに彫刻の像が並んでいる。おお、あそこには有名なSt. Krystofの像が、うへぇ、こっちにはあのSt. Vaclavの像が…(注:ひできすは歴史には疎いので、全て見栄です)。橋の反対側は丘になっていて、その丘の上には美しいプラハ城がそびえたっている。橋を渡りきって向こう側に行ってみようと思う。橋から城を眺めながら「美しいなあ」とゆっくり足を進めた。入口にもあった塔がこちら側にもあり、それをくぐると橋はおわり。こちら側の端の袂では人々がせっせと土嚢を積み上げて洪水対策をしている。いいかげん歩き疲れていた。滑りやすい地面で足をかばいながら歩いていたので、足首が痛くなってきたのだ。
あのカフェに入ろう。ラテン系の曲がかかっていて良い感じのそのカフェの入口近くの席に座り一服する。「’&%#$”!?」とおねえさん、多分絶対「何にいたしますか?」と言っているのだろうと思い顔を上げると、先ほどから登場している例の絶世の美女達の一人がそこに立っていて微笑んでいるでわないかあああ!
「かっ、カプチーノをくださいっっ!(カチチ)」
心拍数2000 / 1秒。はあぁ、「こんにちは」くらい言えばよかった。チェコで通常使われる「こんにちは」は、Ahoi。あの海軍の人が使うあれです。なんか気恥ずかしいじゃないですか「アホイ」なんて(哀)。
何をやっているんでしょうか、僕は。もうすぐ彼女と会うというのに。外を眺める。雨はもうやんだようだ。道歩く人は傘をさしていない。だされたカプチーノについてきたビスケットをそれに浸してしみこませて食べる。そしてカプチーノをスプーンですくってちびちび飲むのがスタイル。疲れた足を前に放り出して休めながら、人々の会話に耳を傾けるが、「!@<#&$!=%」…無駄な事は止めましょう。
待ち合わせ10分前に店を出て、橋へ戻る。待ち合わせの場所は…知らん(汗)。始めの予定で僕は「橋で会おう」とだけ言った。しかし行った事のある人は知っているように、橋は広くて長い。それを知っているSは「橋の中心の右側にしよう」といってきた。「雨が降ったらどうするんでい」と思った僕は、「では塔の下にしよう」と言うと、「いや橋の中心」と言い張る。結局どこに決まったんだか二人ともわからずにここまできてしまった。実はひできす、これにはちょっと自信があった。何故かというと、ひできすは背が高い。きっとSを見つけられる自信があった。Sが橋を上ってくる。ひできすが反対側から近づいてくる。シーンはスローモーションになりまわりの音は聞こえなくなる。僕を見つけたSの顔がくしゃくしゃになる。ひできすの白い歯がきらりと光る。そして二人は磁石のように吸い寄せられていく。
ゴン(ひできすが橋の彫刻に頭をぶつける音)。…漫画の読み過ぎでした。実際はどうなったかと言うと、…橋の反対側に着いちまいました、これが。これは予想した範囲内の事でして、まずSが駅からここへ来るのに手間どう可能性がある。両替に時間がかかる可能性がある。さらに、この雨で列車が遅れる事も有りうる。ここでたばこを一服。そして橋をもと来た方向へ歩き出す。橋の真ん中をゆっくりと、人を見落とさないように雄々歩く。反対側に到着。片道約10分。また一服。 何度往復しただろうか。不安は無かったけど歩き疲れてきた。もうすぐ9時になる。外が暗くなってきた。あっ、しまった。僕は重大な事を忘れていた事に今気づいた。
ひできすは鳥目。
Night Blindと言って、夜になると目が利かなくなる。Snigelとドライブする時も、夜は決まって彼の担当。あっちゃあ、こいつは予想してなかった。再び橋を戻るけど、悠々というよりは目を皿のようにして、すれ違う人にガンをとばすようにして見定めながら歩く。洪水なのに人通りはまだ多い。雨もまた降り出した。しかしひできすに他の選択は残されていない。Sの奴、脅かそうと思って、間抜け顔のひできすの後ろをついて来ているんじゃないか?と思って振りかえるが、犬がこちらを見上げているだけで何も起こらない。肩をすくめて再び歩き出すと、「いた!」。人ごみの中でいつもより小さく見えるS(普段がでかいと言う事ではない)が、すでにこちらに気づいていて微笑んでいる。
こうして僕達は二ヶ月ぶりの再開をしたのでした。
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作者の大事件の話、明日あたりに書けるかな...あーあーネタの尽きない生活をしているなあ(素泣)。
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