なべて世はこともなし
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2002年02月16日(土) ただのヨッパーのオヤジじゃなかった。Christy Mooreのライブを見る

ギネスの工場のすぐ近所のThomas Street近辺はダブリンの中でもかなり治安の悪いところです。で、そのThomas Streetの真っ只中にVicar Streetというコンサートホールというかライブハウスというかがあります。で、ここで金曜日から三夜連続でChristy Mooreなるオヤジがコンサートをしています。私はよく知らなかったのですが、このオヤジ、アイルランド人の中では超のつく有名人で、特に現在のアイリッシュミュージックを語る上で欠かせない人物なんだそうな。で、彼、数年前に酒の飲みすぎでコンサート中に倒れて、それから引退したはずなのに、年に数回の割でコンサートを始めたという…(以上ひでかすによる解説)。


ふーん、つまり、ヨッパーのオヤジなのねん


…くらいの認識しか私は持っていなかった。たぶんアイリッシュミュージックを愛する一部の方は今ごろこれを読んで怒り狂っているだろうけど、知らなかったものは仕方ない。とはいえ、この写真のおっさんを見て、いったいどれくらいの人が、彼がものすごいカリスマ性を持ったすごいミュージシャンだと気がつくだろうか。


やっぱりヨッパー


(数年前にEasonでサイン会をした時の模様。友人(左)より拝借)


EasonのとなりのPennys(安売り衣料品店)で3ポンドで買ったとしか思えないTシャツ、見事に出っ張った中年腹。確かに怜悧そうな顔をしているが、そこを考慮に入れてもダブリンの街中を歩いていたら誰も気がつかないようなフツーのおっさん。蛇足ながら、このおっさんはダブリン近郊のキルデア県出身らしい。


で、まあ、ひでかすに誘われて(やっと話がつながります)Vicar Streetの彼のライブに昨夜(金曜日の夜)行ってきたわけです。


まずこのコンサートホールというかライブハウス、表通りのパブから入って奥に引っ込んだところにあり、広さは、たぶんテニスコート一面程度。二階席もあるが、例え二階席の一番後ろでもステージは良く見えるだろうというくらい狭い。


1階席は横と後ろを除いて4人がけの小さなテーブル席になっており、各自ビールやらワインやらをテーブルに持ち込んでいる。私たちの席は、前から2列め中央、ステージから3メートルもない位置。完全にベストポディションと言える。


で、8時30分。アイリッシュにしては賞賛に値することだが、ほぼ定刻通りにコンサート開始。例のヨッパーのオヤジは何と私たちの目の前。ツバが飛んできそうなところにヨッパーのオヤジは座る。ヨッパーのオヤジは開口一番「健康問題が心配でねえ…」とひとこと。それに会場がどっと沸く。この瞬間に、この会場にはこのヨッパーのオヤジというよりはむしろ、Christy Moore様を慕ってアイルランド中から人が集ってきたことに気がついた。


この汚い部屋は私の部屋ではありません。コンサートは、Christyを含む3人(もうひとりはDonal Lunnyという人でこの組み合わせはその筋の人にはたまらないらしい)で、楽器はアコースティックギターにバウロン(bodhran=資料写真右)というケルトミュージックに欠かせない太鼓、それからごくまれにキーボードという「アコースティックコンサート」と呼ぶにふさわしい陣容。


私が驚いたのは、この3人がステージに着くなり芸能人の記者会見並みにたかれるフラッシュの嵐。こういうとこは撮影禁止だと思っていた私には素朴に驚きだった。よく見ると、ひでかすは録音までしてる。どうやら撮影・録音はご勝手にどうぞ…ということらしい。会場は興奮の中にもリラックスしたムード。


まあ、コンサート特有と言われればそれまでだけど、この会場には不思議な出演者と観客の一体感があった。ただのヨッパーのオヤジではこの雰囲気を作りだすことは到底できないであろう。観客を3時間近く惹きつけるのに十分な魅力を持っていた。アイリッシュミュージックに興味のない私にとっても十分楽しめる3時間だった。何せ、Christyはいい声をしているのだ。ギターもうまいし。


Christy Mooreさん、「ヨッパーのオヤジ」などと失礼なことを言い申し訳ありませんでした。これからは認識を改めます。それにしても、このコンサートでもあなたはPennysで3ポンドで買ったとしか思えない真っ白のTシャツを着てらっしゃいましたね。そんなにすごい人ならもう少しこだわった方が良いかと思います。




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