今日も今日とて
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ワタシ、6月から今日まで、だいたい週に1回くらい、とある高校で先生やってました。 教員免許なんてもちろんないので、講師って立場になるんでしょうかね? よくわかりませんが。
何か、産学一体のプロジェクトの一環で、現場で活躍しているプロに、年間何十時間か授業を見てもらうという何かがあるらしく。 じっくり説明してもらったはずなのに、ほとんど趣旨を覚えていないワタシったらどうなのという感じですが。
先生なんてガラじゃないですし、週1とはいえ、朝の9時半から夕方3時半まで拘束されるわけですから。 もう全然無理! ちっともやりたくない! しかもお金ほとんど出ないし! ってことで、話が来たときはまったくやる気はなかったんですけど。
ですけど。
そもそもその話を持ってきたのが、立場上、どうにも断りづらい人だったのですよ。 ある大学の教授センセーで、ワタシより10歳くらいは上ですが、小柄の 美人(*´∀`*) 年に数回ある、県の委員会でしか顔を合わせない人なのですが、だからこそ断りづらい。
断りづらいながらも、ワタシに先生やれって言ってるところが、工業高校って聞いたもんですからね。
工業って、野郎ばっかりっぽい。 すごくイヤ。 汗くさそう。 イヤ。
ということで、でもそうは言えないので 「ビンボー暇なしで、その拘束時間はちょっと無理ですよー(´д`)」なんてごにょごにょ逃げようとしたんですが。 「まあ、とにかく、○工高のA先生から電話行くと思うから、話だけでも聞いてあげてくれない?」と美人に頼まれ。
美人に断るのは気が引けますが、A先生はおじさんとのことだったので、その人に断ればいいやーと思い、電話を切りまして。
少ししてから、A先生がうちの事務所をたずねてきましてね。 で「いやー、その拘束時間はちょっと・・・」なんて、やっぱりごにょごにょ逃げていたんですが、 「なかなか該当する人がいなくて・・・していても、みなさんやっぱりお忙しくてね、お勤めの方では無理なんですよ」とA先生。
ワタシだって忙しいもん(`Д´*)無理無理!
「じょりぃさんも自営だからこそ忙しいとは思うんですが・・・」 「はぁ」 「でも生徒はみんな熱心でしてね。やる気はありますから、その点でじょりぃさんをがっかりさせることはないと思うんです」 「はぁ」
やる気あるとかないとか、そういう問題じゃないのよA先生。
「○○科の生徒たちが、さらに選択授業という形で受けるわけなんですけどね」 「はぁ」 「もともとこの科は女子が多いんですが、今回のクラスも、全員女生徒なんですよ」
そこは! 大きな問題よね!
「へー。 全員女子ですか」 <気がなさそうに。でも確認。 「ええ。みんな、楽しみにしている授業でもあるんです」 「まあじゃあ、ちょっとスケジュールを調整してみます」 コロッと変わったじょりぃ。 「前向きに考えてみてくれます? 僕もね、ホント困っちゃってるんですよ。人がいなくて」
人がいればワタシのところに話が来ないのは重々承知なので、そこにツッコミ入れるようなイジワルは控えておきまして。
A先生が帰ったあと、なっちゃんやきょんにも相談。 ふたりの答。
「これ以上忙しくなるようなこと、賛成できない。やめときなよ」
まあ、そうなんですよ( ´_ゝ`)
それに、全員女生徒といったところで、ワタシは女子高生萌えとかないですしねえ。 どんなナマイキなのがいるかわからないですし。 ワタシの授業なんて聞いてくれないかもしれないですし。 上履きに画鋲入れていじめられちゃうかもしれませんし。 先生と生徒で禁断の関係になっちゃっても困りますし。 だいたいそもそも、何をどうやって教えれば良いのだ? ワタシのやってることは、教えごとじゃないですし。 俺の背中を見て覚えろ。 って言えばいいのかしら。
やっぱ断ろうー。 ほとほと困っちゃってるA先生には気の毒だけど。 ワタシだって、体ひとつしかないしー。
でもでも。
ワタシが「高校のセンセー(もどき)」になれるチャンスなんて、もうないかもなー。 もしかしたら、専門学校とか、何かの企業の研修の講師とかなら声がかかるかもだけど、公立高校で、先生として生徒と関わることなんて、ワタシ想像もしたことなかったなぁ。
なんとなく、神様が「違う人生ちょっとだけバージョン」をプレゼントしてくれたようにも思い始めまして。
どうしようかなーと思っていた頃、両親と食事をする機会がありまして。 なりゆきを説明したら「やりなよ!なんてラッキーなの!その生徒たち!」と、親バカ丸出しな発言( ´_ゝ`) さらに 「人に教えるってことは、同時に教えてもらうことでもあるし。 まあ、忙しいのはわかってるから無理は言わないけど、でも楽しいんじゃないのー? きっと、いろんな初めてが体験できるよねー。幅が広がるよ!」と。
ワタシ、このころ、仕事に対してすごく自信やら情熱やらをなくしていた頃だったんです。 そんなワタシが人に教えるのもいかがなものだろう、とかも悩んだのですが。
結局、日頃よりモットーのようにしている「来た波には乗れ」のフォースに従い、「やります」とお返事いたしました。 何度も通ってワタシなんぞを口説いてくださったA先生の、ホッとした顔が見られてよかったです。 なっちゃんときょんには渋い顔をされましたが。 日頃ワタシの激務ぶりを目の当たりにしているこのふたりにしてみれば、ホントに心配だったんじゃないかと思います。
で、ひぃひぃ言いながらカリキュラムなんて組んでみて。 前の日はやっぱり「あー、なんで受けちゃったんだろうー(´д`) 行きたくない行きたくない」ともんどり打ち。 そして初登校。
ワタシ、決めていたことがありましてね。
ワタシのことは「先生」って呼ばないでもらおう、って思っていたのです。 ワタシはこれが嫌いでして。 教師なら実際生徒にモノ教える先生でありますからいいんですが。 ワタシはただの働く人です。 ワタシの職種、なぜか人によっては「先生」ってつけたがるんですが(古い人ね)、それらも「何もそこまで」ってほどの勢いで 「先生はやめてください」とことごとくお断りしております。 これ、言われ慣れちゃうとろくなことにならない、という偏見がワタシにあるのであります。
と、自分の勝手なポリシーにより、なおさら緊張しちゃったりして。 でも言うぞ! 先生って言うな! じょりぃさんて言え! って言うぞ!
まずは挨拶しまして。 ワタシのような職業になると実際こんな感じで仕事が進んでいくんですよー、みたいな話をしたりして。 それで1限(というか、2限目からワタシの授業なんですが)が終了。
で、次の時間から、実技のようなものに取りかかってもらったわけですが。 わからなかったらどんどん質問してねー、と言ったら、しばらくして
「はい。 先生」 と挙手する生徒が。
先生って言うなーーーーーー!!!!!ヽ(`Д´)ノ とここで、今こそ、言うべきときが来たーーーー!!!
はずなんですが。
まっすぐな目で、ワタシのこと見て「先生」って手を挙げてるその生徒を見たら
か、かわいい〜〜〜〜(*´∀`*)
「はいはい?(*´∀`*)」 はい は1回でいいんですよ先生。
この「かわいい〜」は、桃色にメロ〜ン、とかではなくて、なんといいましょうか、そのまっすぐさというか、 ワタシのように「先生」という言葉にいちいち理屈つけずに、「教えに来てくれてるんだから、先生」っていう、それだけのシンプルさから発せられた、ピュアなかわいさとでもいいましょうか。 ああ、ちょっと違う。 うまく説明できない。
でもこの時点では「とにかく今日のうちに、『先生じゃなくて、じょりぃさんでいいですよ』って言わなきゃ!」と、まだヘンに気負っていたワタシだったんですが。
教室のあちこちから響く「せんせー、しつもーん」「せんせー、ここどうしよう?」「じょりぃせんせー、助けてー」「せんせー、これ、こうじゃダメですか?」などなどの、生徒たちの熱心で素直な様子に
か、かわいい〜〜〜〜 「はいはい?(*´∀`*)」
何て呼ばれようがもうどうでもいーや
と、あっという間にかたくなな心が溶かされたワタシ。
このようにして、たった数ヶ月の命とはいえ、頼りないながらも「じょりぃ先生」が生まれたのでありました。
も少し続きます。
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