今日も今日とて
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源氏物語の巻みたいなタイトルですが。 じょりぃの縁側日記です。むかーしむかしの思い出話です。
みなさまは、何年も何年も、誰かを捜したことってあるでしょうか。 ワタシは『喉に引っかかった小骨を、取りたくて、でも取れなくて、そしていつも気になってまた取ろうとするけどやっぱり取れない』みたいな感じで、ずっとある人を捜していたことがありました。 よくわからない例えですが。 ものすごく幼かったのと、今と違って情報網が発達していなかったのとで、捜そうにも捜す手だてもなく、上記のよくわからない例えみたいな感じで、何年もある女の子を捜していたのであります。 今日はその女の子のお話を、年寄り臭く語らせていただこうと思います。
名前はミヨとしておきましょう。 ミヨとワタシが仲良くなったのは、小学校の2年生のときです。 ワタシの通っていた小学校は2年ごとにクラス替えがあったので、1年生のときも同じクラスだったはずなのですが、どういうわけか1年のときの彼女の記憶がありません。 2年生になってから仲良くなったのですが、そのきっかけも忘れてしまいました。 うっすらと、「もしかしたら、年度始めに行う予防接種か身体測定がきっかけだったかなぁ?」と思ったりしますが、あやふやです。
そのように、仲良くなるきっかけやら、仲良くなる前のことをほとんど覚えていないのですが、仲良くなってからは寝ても覚めてもミヨミヨミヨ、なじょりぃになりまして。 なんであんなに大好きだったのかもわからないんですよね(笑) 一緒にいて、とにかくものすごく安心していられたのは覚えています。 そして、楽しかった。 話の内容が、他の友だちとはちょっと違っていたようにも思います。 校庭に落ちている石をひとつ眺めて、その石についていつまでーーも話していられたり、ずーっと地面に枝で絵を描いておしゃべりしていたり。 そういうとりとめのない会話が、他の友だちとはなんだか違ってましてね。 2年生だったので、「なんか違うー」とすら思わなかったのですが、今考えてみると、彼女との会話は「深かった」のですね。 2年生という幼さなりに、深かった。 昨日のマンガさー(当時はアニメなんて言わなかった)、という、導入は他の子と一緒でも、ふたりとも細かいことをちまちまと掘り下げて話すのが好きだったんですね。
とはいえ、ミヨはどちらかというと寡黙なほうでして。 主にワタシが話して、ミヨはにこにこ話を聞いていて、そしてたまに話すことがとてもおもしろい。 ワタシはミヨのその「たまに」が聞きたくて、一生懸命おしゃべりしていたようにも思います。 声も枯れたようなハスキーな声で、幼いワタシはミヨのハスキーボイスをかっこいーと思ったものでした。 意外とひょうきんで、変な顔とかもして笑わせてくれたり。 そして印象的なのは、ホントにいつもにこにこしていたことです。 彼女の笑ってる顔と、もうひとつの顔しかワタシには思い出せません。 もうひとつの顔は、もう少し後でお話いたしますが。
で、そのにこにこ顔も、ワタシのように脳みそに花が咲いているような人間の笑顔とはちょっと違っていたのです。 なんというか、常に70%、みたいな、そんな笑顔。 わかりやすく言うと、ちょっと影があったのかもです。 それでもミヨがワタシを見て笑ってくれる笑顔はとても嬉しそうで、ワタシはそれが嬉しくて、世界中にミヨとワタシだけなら、ずーーっと一緒に遊んでいられるのになーなんて思ったものでした。 そんなだったので、休み時間はいつもべったり二人でいて、放課後もミヨと少し遊んでから帰る、そんな毎日でありました。 誰かひとりとべったりと過ごすスクールライフというのは、ワタシ、後にも先にもあのときだけかもしれません。 ご飯を食べているときも、夜寝るときも、いつでもミヨのことを考えておりました。 ミヨのことを考えていればほんわりにこにことしあわせな毎日。
ただ、ミヨは自分の家にワタシが遊びに行くことは嫌がりました。 ワタシの好きになる女の子って、なんかこういうタイプが多いですねぇ。なぜなのかしら。 ワタシの家に遊びに来る、ということもありませんでした。 割と家が遠いからということもありましたけれども。 なので、学校にいるときだけがミヨに会える時間でした。 だからワタシは学校が毎日楽しみでした。 もともと学校大好きっ子だったのですが、このころはホントに、ミヨに会うために学校に行っていたようなモノでございましたよ。
が、ある頃から、ミヨの笑顔が50%くらいになってきまして。 寡黙度も増してきました。 笑顔がない日も増えてきました。 あれー?くらいは思ったのですが、なにしろもともとのんきな上に小学校2年生のじょりぃです。 気の使いようもなく、また、それほど気にしていなかったかもです。 ただ、今までと何か違う、ということは感じておりまして、それを母親に話したりしておりました。 ワタシは当時、学校であったことはみーんな母親に話すウザい娘だったのですが、母親はこの当時ミヨの話ばかり聞かされていたのではないでしょうか。
そしてある日。このときのことはなぜかよく覚えております。 母の車にワタシも乗っていて、ガソリンを入れてました。 ワタシはガソリンの匂いが大好きなので、窓を開けてくんくんと匂いを嗅いでおりましたら、母が急に
「ミヨんちは、この近くなんだよ」と。 「えー、そうなんだー(*・∀・*)」それだけでうれしいじょりぃ。 「ねえ、じょりぃ」 「んー?」 「ミヨの家ね、引っ越しするみたいね」 「・・・・・・?」 <よくわかってない 「転校しなきゃならないんだよ、ミヨ。 学校変わっちゃうの」 「え! もうS小来ないの?!」 「うん」 「いつから来ないの?」 「明日たぶん、学校で話があると思うよ」
がーーーーーーーん。
と書きたいところですが、実はよく状況が飲み込めていないというか、それが自分にどんな影響があるのかまだピンと来なかったじょりぃ。
「学校変わっても、ミヨに会いに連れて行ってくれる?(・∀・)」 と、母におねだりするじょりぃ。 「そうね。 近くだったらいいね」 「うん」
この時点でも、引っ越しくらいなら毎日会うくらいできるだろうとなぜか思っていたじょりぃ。 なぜそう思ったのか。 イトコの家が少し前に、市を変わることなく数キロの引っ越しをしたから、そのアタマでいたのかもしれません。
そして翌日。朝。 ひっこし とか てんこう の話をミヨから聞きたいと思ってミヨを探しますが、ミヨの姿がありません。 ちょっと焦るじょりぃ。 ミヨはどこ行ったんだろう。 まだてんこうしてないよね?
朝のホームルームの時間になって、担任の先生と一緒に教室に入ってきたミヨ。 先生と一緒に教壇の横に立ってます。 ワタシはミヨに笑いかけようとしますが、ミヨは下を向いたままです。
「○○さんは、引っ越しが決まって転校することになりました」と先生。 続けて「今日、これでみんなとはお別れです」 と。
急。 すごく急。
と書いてますが、他の転校を知らなかったので「そんな急に!」と思うことすらできなかった2年生じょりぃ。
「じゃ、○○さん、みんなにお別れ言おうか」と先生。
「今まで仲良くしてくれてありがとう。さようなら」
下を向いたままそれだけ言ったミヨ。 ミヨ! こっち向いて! ワタシの顔見て! 笑ってよー! なんか言え! ワタシにだけなんか言え!
と、ワタシは鬼のような勢いでミヨを見つめ続けましたが、ミヨはうつむいて唇をきゅっと結んだまま、そしてワタシのことを一度も見ることなく、先生と一緒に教室を出ていきました。
さすがに呆然とするワタシ。 ミヨ、こっち見てくれなかった。なんで? ミヨはどこに行くんだろう。 新しい住所とか聞かなくちゃ手紙も出せない。なんで教えてくれないんだろう。
ああ、そうか(・∀・)
きっと、学校が終わってから、ワタシと会って話すつもりなんだー(*´∀`*)恥ずかしがり屋だもんね
と、本気で信じて、放課後までそわそわと過ごしたじょりぃ。 帰りの挨拶が終わってから、担任の先生のところへ走って行き「先生、ミヨは?」と聞きました。
「朝、帰ったよ」と先生。がーん。てか、あたりまえです。
「先生、ミヨはどこにひっこすの?」 「先生、知らないんだ」
(´・ω・`)しゅん 先生のくせに知らないのかー・・・
とぼとぼとひとりで家に帰りながら、だんだんと「これは大変なことになってしまった ような きが する?」くらいには気づいてきたじょりぃ。 なんだかよくわからないけど、不安でしかたなくなってしまったのでした。
家に帰って、母親に今日のできごとを話し。 「ミヨがワタシを見てくれなかった。何も話さないで行っちゃった」と話しながらえーんえーんと泣き始め。 「これからミヨの家へ連れて行って」と、ワタシにはめずらしく、母に強く駄々をこねたのですが。
「たぶんもういないよ」と母。 そしてワタシに話してくれました。
ミヨのお父さんとお母さんね、離婚しちゃったんだよ。 それで、ミヨはお母さんの故郷へお母さんと引っ越したの。 今日もう街を出ちゃったんだよ。
離婚の意味はわかってましたので、ミヨがかわいそうでまた泣きました。 当時は今と違って、離婚て本当にとても珍しかったのです。 死別よりも少なかったのではないでしょうか。少なくともワタシの周りでは。 母も話しながら少し泣いておりました。 かわいそうだったんでしょう。ミヨのこともワタシのことも。 そしてミヨの越した先は遠く、ということでした。
ワタシとミヨが仲良しだったので、担任の先生が前日に母には連絡していたのかもしれませんね。 そんな風に気の利く教師には見えなかったんですが(°▽°) が、母もまさか、別れの言葉も交わせずにさよならしちゃうとは思っていなかったので、ちょっと責任を感じてしまっていたようでした。 そして、詳しい住所は母も教えてもらえませんでした。 ワタシも担任に「教えてください!」と必死にお願いしたのですが「それはできない」と言われました。
ワタシが思い出すミヨの顔は、ミヨの70%の笑顔だけではなくなってしまいました。 転校の日の、ワタシを見ずに、下を向いてきゅっと唇を結んだよく見えないミヨの顔。 一度しか見ていないあの顔が、毎日見ていた70%の笑顔と同じくらいの幅を取って、ワタシの脳内に刻まれることになったのでした。
・・・ここで話がおしまいならば、なんだか甘酸っぱく美しい思い出のひとこま、で終了なんですが。 ナナワタで既にうんざりするほどご承知と思いますが、ワタシの「いつまでーも追いかけちゃうヨ☆」な根気強さという長所ゆえ、この先にも長々と尾を引いていくことになるのでありました。(こう書くと自分でもホント怖い)(ナナ、お疲れさま)
長くなっちゃったので、後編に続きます。
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