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2007年09月05日(水) ミッション・インポッシブル・後編

さて、前回の続きでございますよ。

わんわんと声は聞こえるものの姿は見えない、ほんにあなたは屁のような、という古い冗談が頭をよぎるような状態でポケの姿を探したワタシでありますが。
そして前回「とんでもないところ」にいたと気を持たせるようなこと書いて終わりにしたわけですが。
どんなとんでもないところだったかと言いますと。

物置の裏でした。


「なーんだ、そんなところかよ」とかためいきつきながらバカにするのは待ってください!
いっそ「屋根の上にいました!」とかだとセンセーショナルでネタとしては非常に有効なんですが、しかし屋根のほうがどんだけ助けやすいことか。
登って抱いて降ろせばいいんですから。
女に一服盛って抱いて朝になったら何事もなかった顔して帰す、というくらい簡単です。
やったことありませんが。

とはいえ、物置の裏と言われたところでわからないと思いますので、図で説明させていただきます。

ポケのいたところ図解。

 


ありえないから。

よくこんなところ入れたなーと一瞬感心しますが、さてどうやって助けようかと。
物置は2メートルくらいの高さがあります。
ポケのいるところは、とても人間が入っていけるところではありません。
ましてや夜です。暗くて様子もよくわかりません。

ポケのはまった場所を、翌日写真に撮ってみたので、こちらもご覧ください。

 

手前にぼうぼうと伸びているのが、イラガだのドクガだのをいつも養殖しているらしい、裏の家の垣根です。
なんかもう、近寄りたくない危険エリアでございますよ。
でもこの写真だと、狭さがわかりづらいですね。
がんばれば人間入れるんじゃないのー?きょんは細いんだろうよー?とか思われそうなので、こちらも。

 

小さいと評判のワタシの手を、大きさ対比のタバコ代わりに置いてみました。
15センチあるかないかの幅でございますよ。
きょんの薄い体に、ワタシの頭をすげかえることができれば、あるいは横向きに進んでいくことはかろうじてできるかもしれません。
しかしそれでも進むことしかできません。身動きもできないでしょう。
それではポケと一緒です。助けなきゃならないのに、ミイラとりがミイラになってしまいます。

ポケちゃんはこの狭いところに、あっちからもこっちからも到底届かない位置にはまり、わんわん!助けてよう!と吠えまくっていたのでした。

きょんが「ポケちゃん、いたー?」とのんきにやってきたので、
「いたことはいたけど・・・事態は深刻かも」と案内しましたら、きょん、絶句。

「・・・ど、どうしよう・・・」と。

とりあえず懐中電灯を取ってまいりまして。
照らしてみましょう。 おお、はまっとるはまっとる。あはははは。って笑い事じゃないんですよ。
しかも、ポケにもかなり狭い空間だったらしく、ビミョウに宙に浮いてるようにも見えます。
はまっているというより、挟まっているといった感じです。

懐中電灯で照らしながら、きょんは「ポケちゃん、なんとかこっちに後ずさりしておくれー。助けに行けないよー」とポケに話しかけています。
ワタシはといえば、状況を正しく把握したくてですね。
まず、何をどうしたら良いのかきちんと考えなければいけません。

ということで、まずしなければならないことを始めてみるじょりぃ。
何をしたかと言いますと、バイクのキーを取りに行きました。

なんでバイク?と思いましょうが、ワタシ、明るい照明が欲しかったんですよ。
バイクのエンジンかけてライトをつけ、ポケちゃんのいるところを照らしだしてまずは解決策を練ろうと思ったのです。
とにかく現場を知りたかった。
写真は昼間撮ったので状況は一目瞭然ですが、このときは曇り夜空で真っ暗だったんですよ。

ということで、バイクの簡易ガレージを開けましたら、きょんが思いっきり怪訝そうな顔で

「あなた、何がしたいの?」と。

「照明が欲しいなと思って。バイクのエンジンかけるの」 ナイスアイデアに自信たっぷりで答えるじょりぃ。
「・・・・・・」

きょん。 なぜ無言なんだ。

しかしですよ!
この緊急時に、一昨日まではかかっていたバイクのエンジンがかかりゃーしませんよ!
ウンともスンとも言いません。
あのオヤジ、手抜き修理しやがったな!明日速攻で怒りのアフガン電話ですよ!

「・・・バイクのエンジンがかからない・・・(´;ω;)」としょんぼりするじょりぃ。

が、悠長にしょんぼりしている場合ではありません。
ポケちゃんは、いつもより悲壮感をもってわんわんと吠えています。なんとかせねば。
ということで、物置の前に停めてあった、修理工場から借りている代車のエンジンをかけ、ライトをつけまして。
ピンポイントでは照らせませんが、ないよりはいいんじゃないk

「ちょっと!なんで車のライトつけるの?!」 ときょん。
「え? 明るいほうがよくない?」
「関係ないところばっかり明るくて、かえってポケちゃんのところが暗くなって見えないよ」

(´・ω・`) じょりぃはよかれとおもって・・・

しかし怒られたので、ライトをスモールに変えました。
ああ、これくらいだとちょうどいいかもです。
どうせピンポイントで照らせないなら、確かにまわりが明るいと暗いところがなおさら暗くなります。
が、スモールライトのおかげで、自分たちまわりの明かりは、いくらか確保できました。

ああよかった( ^ ∀ ^ )さて、家に入るか!

って、まだ全然何も解決してないんですよ!
とにかく人間はもうあたふたしまくりましてね。
助けようにも手が届かない。
ポケは前進しかできない。しかし前進されたところで人間の足場がない。
しかも今現在、はまってるか挟まっているかして、ポケは動きが取れない。
そしていつもより悲壮感をたたえた大きな声で吠えまくりです。
時間は夜の11時近く。近所迷惑もはなはだしいです。

しかしとりあえず、後ろにさがることはできないんですから、前に進めさせる方法を考えねばなりません。
そこから先のことはその場でまた考えるしかありません。たぶん。
たいてい、手でちょっと押してやればすぐに前に進むポケですが、物置の端からポケのところまでけっこうな距離があります。
ベランダから物干し竿でも持ってこなければ届かなそうですが、その作業を考えただけで、悠長なじょりぃでも
「なんか時間の無駄」と思います。

は!(・∀・)

じょりぃ、そういえば良い買い物をしていたではありませんか。
「ばさばさ」・・・世間ではコウモリと言われているあいつを捕獲するために買ったあの網。
買った途端にコウモリなんて出なくなった、あの役立たずな網。

 じゃーん。

これ、もともと釣り用具なので、柄の長さが変えられて結構な長さになるんです。
それを玄関からいそいそと持ち出しまして。

魚捕りの網を手にたったかと走ってくるじょりぃを迎えるきょんの目が、これまた冷ややか。
まあ、ゴキ退治のときのことなんかを思うと「今度はいったい何・・・?」と警戒する気持ちもわからないではないですが。

柄を目一杯長くしましたら、なんとかポケの尻に届きまして。
網がクッションになるので、そのままちょっと強めにぐいぐいと押しまして。
そうしたら、地面に足がついたのか、かろうじて少しずつ前進するポケ。
がんばれポケ。進むのだ。
ぐぐう、腕が。腕と首が攣るーーー。
毛虫とかクモとか、ワタシにたかるなーーー。
そういえばここはゲジゲジ地帯&ナメクジ地帯でもありんす。
と、突然花魁言葉になるほど恐怖を感じますが、今はそういうことを考えてはいけません。
後で自分にたかっていたら悲鳴をあげて踊りまくろうそうしよう。

が、柄も腕も限界です。
ポケ、なんとか物置の端っこちょっと手前くらいまで進めました。
進んだはいいですが。

これからどうしよう(°▽°)

唯一考えられるのが、お隣さんか「斜め裏んち」に入って、そこから何とかポケを抱え上げ救出、というシナリオですが。
斜め裏んちは該当する角に物置がででーーんと置いてあったので、足場がありませんでした。

そうなるとお隣さんから救出、となるわけですが。
これもできれば遠慮したい。
って、ああもう、ポケの吠え声がうるさくて思考がまとまりませんたら!しかし考えねば。

お隣さんとはマメに挨拶は交わしておりますが、何しろここんち、よく廃墟と間違われるほどに雑草が無法地帯。
地雷があからさまに置いてあったとしても誰も気づかないほどの無法地帯。
できれば入りたくない。きょんにも入らせたくない。
しかし、ポケ救出には、もはやこのルートしかありません。
チョモランマ目指して命をかけてルートを模索する登山隊のような気持ちですが、そろそろ決心しなければ。

というわけで、じょりぃ、柵に腰掛けながらポケちゃんのところに移動してみることに。(どうしてもお隣の無法地帯に入るのはイヤだったんです)
用心深いじょりぃは、これから自分が進んでいく柵の様子を知ろうと、柵を懐中電灯で照らしてみました。らば。

子コオロギの群が! ぴょんぴょんと!
なんでこんな高い位置で遊んでるんだねキミたちは!
コドモは親の目の届くところで遊べ!
てか、親コオロギもたくさんいるってことだろうか・・・(もちろんいます)

確認してよかった。
あやうく子コオロギたちをぶちゅぶちゅと我が尻で潰しまくるところでした。
かわいそうとかでなくて、おそろしい。内蔵怖い(´Д⊂)

そしてじょりぃは、またもや家の中に走ります。
軍手とゴム手袋が一体になっているような、大変重宝する手袋を持ってまいりまして。
手袋をして、さっさっ、とコオロギを追い払い。
絡まるツタをむしりまくり。
ひょこひょこと進み始めました。
腰から上が柵の上に出てしまえば、狭いとはいえ柵に腰掛けながら何とか進んでいけます。ひょこ。ひょこ。ひょこ。

と、悠長に進んでおりましたら、きょん、「あたしが行く」と低くつぶやいたあと、柵を乗り越えてお隣さんの無法地帯へ着地。
ええええええええ!? キミ、勇気あるな!

「いいよ!きょん! そっち行くならワタシが行くから!」

今回は本気で言いました。
だってマジで、どんな危険な虫がいるかわからないんですよ無法地帯。
しかし、いつの間にやら長袖を着込み着替えまで済ませていたきょん、「大丈夫」と進んでいきます。
ていうか、「大丈夫」とかカッコつけてますが、不法侵入です。

「じょりぃじゃたぶん、抱き上げ方がわからないと思う。それに腕の長さも足りないし」と。

まあ確かに、ワタシも「届かなそう…」とは思ってましたが。

きょん、「うわぁぁぁぁぁぁ」と小さく叫びながら、柵の隅に到着。
チョモランマ登頂チームは、こんな配置になりました。



ちなみにこんな場所です。



この写真だと、きょんが立ったところが既に踏みしめられ、イマイチ恐怖感が欠けるので、違うアングルからの写真もご紹介しておきます。

 無法地帯。

ここをかき分け、踏みしめて進んだきょん。
眠り姫を助けるためにイバラを掻き分けて城へ進んだ王子様よりも勇敢です。

で、何をどうしよう、ってもう考えても無駄ということがわかってきたので、早速作業に取りかかります。
とりあえず、きょんがポケちゃんの前足付け根あたりに手を伸ばし、なんとかかろうじてつかまえまして。
「もっとこっち来てごらん。がんばってー」と声をかけつつ(ポケは耳聞こえないっつーのに)、ずりずりと手前に引き寄せまして。
しかし、持ち上がりません。
ポケの体重がある上に、軽くはまってます。
さらに、きょんは腕も腰も伸ばしきった上での中腰というつらい姿勢。
そこでワタシも手を出しますが、ワタシの姿勢もつらい。でもなんとかポケの足に手が届いたんですが

「前足は持たないで! 足が折れちゃうから! 体を持って!」 と、きょんから大声で注意が。

ていうか、ここから先の会話は、すべて大声で読んでください。
必死だったもんで、怒鳴り合うようにお互い会話してました。
そして何がなにやらわからぬうちに、反射神経だけでコトは進んでいきます。
そして暗くて何も見えないものですから、ワタシは自分の行動を逐一きょん現場監督に報告。
ホントに、持ち方によっては、簡単に骨が折れちゃうこともあるそうで。
しかもポケは老犬ですよ。骨粗鬆症かもしれません。冗談ですが。いやどうだろう。

じょ「足と足の間に手が入った!持ち上げる?持ち上げる?」
きょ「待って待って待って! あたしがまだ無理!」
じょ「ポケの下にワタシの足入れた!」 

下から持ち上げようと思ったんです。なかなか良いあんばいだったんですが、きょんは何か違う意味に取ったらしく

きょ「足抜いて!」
じょ「え?」
きょ「足抜いて!」
じょ「はい!」

抜いたら、ちょっと持ち上がっていたポケががくんと下に。

きょ「まずいまずい!どうしよう!うぉおおおおおお!」<持ち上げているらしい
じょ「(無言でもう一度足を入れる)」
きょ「あー!持ち上がってきたけど、こっから先どうにもできんーー!」
じょ「頭!頭!ポケの頭が柵の角にはまっちゃってて動けなくなってるって!」
きょ「わかってるから!ちょっと待って!」
じょ「頭はまってるってば!つかえてるよ!これ痛いんじゃないの?!」
きょ「わかってるってば!動かせないの!」

この時点で、ふたりともありえないような無理な体勢でございますよ。
ポケは体の前半分は浮いているものの、後ろ半分はずりずりと落ちていってます。

じょ「落ちてる落ちてる!」
きょ「わかってるけどどうにもできない!」

ここで、もう片方の足をポケのお尻にすべりこませ、腹筋で持ち上げるアスリートじょりぃ。

じょ「ぬぉおおおおおおお」
きょ「もう少し後ろに引いて!頭出すから!」
じょ「どうにもできんーーーーー!」
きょ「うがああああああ」
じょ「ぬぉおおおおおおおおお」

じょ「ワタシの手、入るよ!前足脇の下に入った!」

何かワタシ、柵の上で前屈して、とんでもない姿勢になっております。
もうこうなってくると、コオロギとかゲジとかイラガとか、どうでもよくなってきます。
ポケ救出終了まで、自分の体力筋力が持つかどうか、思うのはそのことだけです。

きょ「うがああああああ」
じょ「ぬぉおおおおおおおおお」

ふたりがかりで抱え上げ、きょんが最終的にポケちゃんを抱っこ。

物置の手前で、きょんからポケちゃんを受け取りまして。

はふーーーーーー。
ミッション完了。

ていうか

「今回、かなりミッション・インポッシブルだったよねえ」とワタシ。
「うん。あたしも無理かと思った」
「しかし、なぜ今日に限ってこんなところに入っちゃったのだ?今までこんなことなかったのに」
「今朝までは入れなかったのよ」
「なんで?」
「物置の裏のところ、草が繁っていたから」

あ!

そういえば、我が家の庭の惨状を見かねたワタシの両親が、3日がかりで草むしりやら庭木の剪定やらをしていってくれていたのでした。
この日が最終日で、「裏までバッチリきれいになったよ!」と、得意そうにほほえんでいた両親。

それが仇になったか。

「きょん、またもや勇敢だったねえ」と、きょんを褒め称えつつ、きょんに毛虫とかたかっていないか何気なくチェックしておりましたら

「どうしたのー?大丈夫ー?」と、背後からやさしげな女性の声が。

声の方向を振り向きましたら、そこには20年前に死んだおばあちゃんの霊が。
というのはウソで、図にあるのと反対側の斜め裏んちの奥さんが、夫様と3歳になる娘さんを伴って、えらく心配そうな顔で自分ちの庭から声をかけてくださっていました。

ぬおおおおおおおとかぐおおおおおとか頭頭!とかどうしよう!とか、もうものすごい騒ぎになってしまっていたので、何事かと様子を見に来てくださったようです。ありがたいですね( ^ ∀ ^ )
てか、警察に通報されなくてよかった。(マジで)

このご夫婦、いつもやさしげで大変感じがよろしくてですね。
唯一気さくにおしゃべりできるご近所なんですが。

ことの次第を説明して、ポケが吠え続けていたことと、人間様の大騒ぎのお詫びを申し上げまして。

「それはいいんだけどさー。ねえ、この犬、飼ってるの?」と奥さん。
「いえ、これこれこういうわけで・・・」
「そうなんだー。じゃあ飼い主さん探さなくちゃねー。
 ねえこの子さ、すごーーーくかわいい顔してるよねー。いつも思ってたのー」

かわいいってさ、ポケ。

 えへ。

なーんておしゃべりしているワタシたちの脇を、ポケちゃんは何事もなかったかのように、またとてとてとてとてと、うっすらほほえんだような顔で歩いていきます。
この様子だとケガもないようです。

人間様は、腕や胸に幾多のひっかき傷ができましたが( ´_ゝ`)
しかしポケがおとなしい犬でよかったですよ。
これがシロちゃんなら人間ふたりとも、パニックになった彼に噛み殺されていたかもしれません。

まあそんなわけで、終わってしまえばなんてことなかったんですが。
ホントにどうしようかとあわてまくったんですが。
不可能かと思われたミッション、無事に完了いたしました。
チョモランマ登頂成功です。ってもう何の話かわかりませんが。





余談。

バイクのエンジンがウンともスンとも言わなかったのは。

ワタシが「ポケが大変!」と焦りまくっていたせいで、ハンドル握ったはずみにキルスイッチをオンにしてしまったからなのでした・・・初心者かワタシは。初心者だけど。

キルスイッチというのは、非常時のためについている、エンジン停止ボタンです。
これがオンになっていると、もちろんエンジンかけてもウンともスンとも言いません。


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