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2004年07月11日(日) |
おばあちゃんは天使だ! |
本日、ワタシ選挙に行って参りまして。
日本を背負って立つ国民として当然のことですよ。 なんてことはちっとも思ってなくてですね。 投票所までバイクに乗って行きたかっただけです。 狭い駐車場は車でいっぱいになってしまいますからね。 そこを悠々と、バイクで乗り付けたかったと、それだけ。 ついでに投票してきたと。
で、投票が済んで。 バイクの置いてある自転車置き場に向かいましたら、おばあさんが自転車を停めたところでした。 おばあさんと言っても、まだまだ若くて元気そうですけど。 このへんは比較的農家が多いせいか、腰は曲がっておりました。
ワタシが支度をしていたら、おばあさん、投票所に向かわず、ワタシとバイクをぢいっと見つめておりまして。
「きれいなバイクだねえ」
と話しかけてくださいました。
嬉しいな。バイクほめられた。
「ありがとうございます(にっこり)。 色がお揃いですね」
おばあさんの自転車もパールホワイトだったんです。
「いいねえ、若い人は」
実は若くないんですよ、おばあさん。 あなたよりはちょっと若いかもしれませんが。
えへへと笑っていたら
「うちのおじいさんもね?最近バイクに乗りたがっちゃって。親戚にバイク屋がいるから出かけていってね。 『跨がせてくれ』って頼んだら『勘弁してよ。無理だよおじいちゃん』なんて怒られて(笑)。 もう年だからね、無理もないんだけどね」 と、おばあさん。
「無理ってことはないでしょう」 無理だとは思いますが。一応。
お互いにこにこにこにこにこ。
「楽しんでね。いいバイクだね」と言って、投票所に向かい始めたおばあさん。
「どうもありがとうございます」と答え、ヘルメットをかぶろうとしたら、おばあさん、振り返って
「あ、気をつけなさいよ」と。
「はい」
またちょっと歩いてから、おばあさん、くるっと振り向き
「あんた、いい人だからさ」と。
なんて答ていいかわからず、お辞儀をしながら笑って返したのですが。
アレでしょうか。 ワタシが悪い人風な受け答えをしていたら「死ね!」とか言われていたんでしょうか。
って、そんなことはないと思うんですが。
そんなやりとりがあって、確か以前にもこのへんで、似たようなやりとりがあったな、と思い出しまして。
この投票所のすぐ近くのコンビニで。
当時、ワタシは運動のために自転車に乗っておりました。 3日坊主だったんですが。 やっぱり夏だったと思います。 コンビニで休んでいたワタシは、汗だくだった覚えがありますから。
自転車の脇で生茶を飲んでおりましたら、今日のおばあさんよりもっとずっとお年を召していらっしゃる風なおばあさんが、例の手押し車めいたものを押しながら歩いてきて、ワタシの隣で止まりました。
「若い人はいいねえ」
3年くらい前でしたが、ワタシは今よりずっと若く見えていたと思います。 でも若くありません。 でもめんどくさいのでにっこりしました。
「あたしにも、あんたくらいの孫がいてね」 「そうですか」 「最近、ちっとも姿を見せなくなっちゃった」 「さびしいですね」 「うん。 いっぱい孫がいるけど、みんな来なくなっちゃった」 「みんな、忙しいんでしょうね」 「そうなのかね」 「そうなんでしょう」
ごくごくごくごく。 生茶、早く飲んじゃお。
「あんたくらいの孫がいるんだよ」 おばあさん、リピート。 「はい」 「うちのは女の子だけどね。でも高校生だよ。あんたくらいの」
あの。 ワタシも女ですし、高校卒業して何年経ったのか数えるのが面倒なほど年食ってるんですけど。
ちょっとボケてるのかな。 しっかりしている風に見えますが。 すこーーーしだけ、ボケてるのかも。 目が悪いということも考えられますが。
そのときも、「じゃあ」と自転車に乗り出したワタシに「気をつけてね」と心配そうに声をかけてくださいました、おばあちゃん。
そんなことを思い出しながらバイクを走らせていましたら。
ナナの話を思い出しまして。
実はナナはおばあさんなんです、という話ではないんですが。
ナナはおばあちゃん子です。 「あの環境にあって、あたしはおばあちゃんに育てられたようなもんだから」と話していたこともあります。
ある日、ナナに頼まれて、ナナ家の写真の整理を手伝ったことがあったんですが。 写真を見ながら、いちいちその頃のことを話してくれまして。 ワタシにはとても幸せなひとときでした。 だいたい次女ちゃんが生まれたあたりから、今に至るまでのナナ家の歴史を把握することができましたし。
すごい数の写真だったのですが。 その中の何枚か、ナナのおばあちゃんの写真がありまして。
「これ、おばあちゃんだよ」 「ふうん」 「かわいいでしょ?(笑)」 「うん(笑)」 「この写真の頃は、もうすっかりボケちゃっててさ」 「そう」 「でも、幸いなことに、すごく幸せなボケかただったの」 「よかったね」 「はたから見ると、わけわからないこととかぶつぶつ言ってたりするんだけど、おばあちゃんは楽しそうだった」 「ふうん」 「あたしね、このころのおばあちゃんて、天使みたいだなあって思ってたんだ」 「天使」 「うん(笑)。だって、全然邪気がないんだよ」 「なるほど」 「ひとりになるとさびしがっちゃってさ。おばさんと一緒に住んでたんだけど、おばさんの姿が見えなくなると『○子さん?○子さん?』って、必死になって探すの(笑)」 「へえ」 「おばさんは大変だったと思うけど」 「そうだね」 「おばあちゃん、ボケちゃってもあたしを悲しませなかったんだよね」 「・・・・・・・」 「あたしもおばあちゃんみたいにボケたいな」 「大丈夫。ちゃんとボケられるよ(笑)」
ワタシが手にした写真では、おばあちゃんは次女ちゃんに何か話しかけられていました。
「次女ちゃんにもね、『おばあちゃんて、天使みたいじゃない?』って言ってみたことあるんだけど」 「なんて言ってた?」 「『え〜? だってシワシワだよ〜?』だって(笑)」 「(笑)」 「ねえ、じょりぃは? そのおばあちゃん見て、かわいいなと思わない?」
ワタシはそこにあった何枚かのおばあちゃんの写真を眺めて
「うん。かわいいね」と答えました。
ナナに言われたからなのか、本当にかわいく見えたんです。 確かに邪気がありません。 そして、瞳はおばあちゃんにしか見えないものを見ているように見えました。
「ホントに天使みたいだったんだよ。 ボケたおばあちゃんに会わせてあげたかったなあ。かわいいおばあちゃんに」 「うん。 会いたかったな」
そんなわけで。 今日はすっかり敬老の日モードになってしまったじょりぃでありました。
お互いシアワセにボケようね、ナナ。
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