てくてくミーハー道場

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2017年07月08日(土) 『ふるあめりかに袖はぬらさじ』(明治座)

なぜか悲報を通勤途中の電車内で知ることが多いぼく。

昨日も、ふと向かいの席でスポーツ新聞を広げているおじさんがいて、「舞台から落下の俳優事故死」という見出しが目に飛び込んできて、「ふぇっ?!誰なんだろう?」と思っていたら、中嶋しゅうさんだった。

好きな俳優さんだっただけに、なんということだ。そんなに打ちどころが悪かったのか?(わずか75センチの高さで・・・?でも頭を打ったらそうかも・・・)とショックを受けて嘆いていたら、今日になって、「急性大動脈解離」を発症したせいで転落したのだったとニュースで知った。

だからといってしゅうさんの死がいたましいことに変わりはないのだが。

そんな痛みを胸の片隅に抱いたままで、この話題の喜劇を鑑賞。

鷲尾真知子さんを平常心で見て笑えるだろうか・・・と心配は募る。



そんなしろうとの心配をよそに、出演者の皆さんは全力投球。

俳優という職業の因果さを実感するとともに、演劇というものはなんと不思議な文化なのだろうと思い至る。

いやいやそういった偶発的な要素は抜きにして作品そのものを語りましょう。それを送り手の皆さんも望んでいると思うので。





一言で言って、

「なんでここで外部公演を見せられたん?」(毒)

と思った。

潤色・演出の原田諒!(呼び捨て)企画書が歌劇団に通らなかったのか?だから明治座に持っていったのか?

大地真央さんが主役演じます歌います踊ります三味線も弾きます小唄うたいますたくさん衣裳着替えます()の徹頭徹尾トップスターだった点は完全想定内だったので何一つ文句はないのですが、攘夷党の志士たちが男役三番手から七番手のチーム編成でカーテン前ナンバーを歌うとは思いもしなかった。←

歌劇団でやるならどの組がいいかなあ?やっぱ“日本物”の雪組?いや、やはり真央さんということで月組かしら?などと現役生を思い浮かべながら聴いてしまったではないか!(なぜ責める?)

新機軸、というよりも、まんま「タカラヅカでやろうとすると、こうなるんですが」の典型のような作劇。

このお話はどう考えても主人公は女のお園だからどんなに面白くてもタカラヅカでは上演できない。だからか?(←)

男役二番手()のブンちゃんこと浜中文一くんは、たかみー(高見沢俊彦)系のバタくさい顔が全然ちょんまげに似合わないという弱点はあったが、彼の舞台はこれまで何回か観てきて悪くないものを持っている(ほめてるのか・・・?)と思っているので安心して観ることができた。

それより、歌が思ったより上手なのが印象的だった。

歩くジャニーズ図鑑()と呼ばれたぼくも今は昔、すっかり最近のジャニっ子たちのことを知らないので、ブンちゃんはジャニーズWESTのメンバーなのかと思い込んでいたら、まだJr.なんだってぇ?

いくつだよ?(←いじわる)

ま、明らかに演技に活路を見出していくのでしょう。ドラマや映画ではお目にかからないかもしれないが、舞台に出られるならきっと今後もちょくちょく拝見するでしょう。がんばってください。

その相手役の娘1()ポジションに中島亜梨沙という聞いたことのない女優。←

まるっきり娘役芝居 (−−;)いつものようにズケズケ

誰なんだコイツ?(そろそろその辺で・・・)

と思ってググったら、なんだ、元・羽桜しずくちゃんだったんだ。

亀遊は病気でやつれた姿が出演シーンの99%を占めるので、メイクも顔色悪く「貧相な娘だな」と思って見ていたのだが(おいおい)、この世にいなくなった二幕に“幻”として登場。

ここがもうタカラヅカ。

堂々たる娘1。

マヤさん(三沙のえる)や真央さんと、時空を超えて月組先輩後輩共演が叶い(観てるこっちが)感激。

だが、改めて聴いたら歌はヘタな子だった(こら、最後に余計なことを)





それにしてもこの話、本当によくできてる。名作だ。今さらぼくが言う必要もないが。

・・・なんで歌必要だと思った?原田せんせい。(まだ言うか)

だって、このお話は、ラストのお園さんの「よく降る雨だねえ」のセリフで終わるからいいんじゃないか。

歌はどう考えても蛇足だったなあ。

これを本当に歌劇団がやったのなら、

「うん、タカラヅカだからね」

で許してた。

でもなあ。(しつこいぞ!/怒)



そして話はまた作品の本質とは関係ないことになるのですが、このラストシーンを万感の思いで見つめながら、

「九州の雨よ、いい加減に止んでくれ!少しなら東京が引き受けるから!」

と勝手に東京代表を気取るぼくであった。

九州の皆さんの安全を祈る気持ちがもちろん第一なのですが、とにかく暑いんだもん東京。

昼過ぎに某駅周辺を歩いてて、「砂漠で遭難する幻覚」に襲われそうになったくらい。

都会の街が異常に暑いのは、地面が石油系物質で草木がなく、建物内のきつい冷房の分の熱が外に放出されているからだ。

この悪循環を頭のいい人が断ち切ってくれないもんだろうか。と他力本願して本日はおいとまします。


2017年07月01日(土) ミュージカル・コメディ『キス・ミー・ケイト』(越谷サンシティ大ホール)

カンパニーの皆さん、日本のボルティモア(嘘)越谷へようこそ☆ヽ(ーー;)コラ



この公演は、一般社団法人日本映画演劇文化協会といういかにも文化的な団体が運営する「ハロー・ミュージカル!プロジェクト」の一環で上演されるものであり、今回で3作目となります。

1作目は2012年から2014年にかけて上演された『王様と私』、2作目は2015年、2016年と上演された『南太平洋』と続き、今年この『キス・ミー・ケイト』にリニューアル(?)したわけであります。

こうして上演作品を眺めてきて真っ先に思ったのは、「これら全部イチロさん(一路真輝)の主演作じゃねえか」(ただしぼくら世代)ということ。

3作とも、かつて東宝制作で上演されている。もちろんぼくは全部観ました(ただし東京で上演された時のみ)

それも今回みたいなド○回り(大失言!)ではなく、ニッポンのブロードウェイである日比谷(日生劇場)表参道(青山劇場)皇居前(帝国劇場)で!

そんなゆかりの深いイチロさんが、このプロジェクトにおいては最初の2作に出演してこなかったことがまず不思議だが、今回満を持して“持ち役”リリーとして登場。嬉しいことである。

決して第一弾と第二弾の主演女優に不満があるわけではない(誰だったのかはググってください)のだが、なんとなく、「やっと安心して()観れるわ」という気分で、ボルティモア越谷へ赴いたぼくであった。



久しぶりのファーストナイト(初日)を、「ド○回り劇団」(正確にはド○回りなのではなくて、向こうの劇団は、まず“ロードショー”と称して地方で何回か上演してからブロードウェイにかけるのがセオリー)が主人公のバックステージもの作品で味わえるという楽しさ。

おなじみの一曲目「Another Op'nin, Another Show」の歌詞が、リアルそのまんまに迫ってくる。

出演している俳優の皆さんが、そのまんま劇中の役者たちの気持ちを歌っている。気分がめっちゃアガる。

普段ぼくはルーティンみたいに毎週末劇場街に足を運び、いろいろな舞台を楽しんでいるが、こういうちょっとしたシチュエーションの味付けが、こちらの盛り上がりに多大に影響することに気づきました。

ド○回りとか言ってごめん(なら何回も書くな)。地方公演て、特別感があっていいね。

実のところこのプロジェクト、ぼくのようなルーティンシアターゴアーよりも、ミュージカルなんて東京でしかやらないし、チケットも高いし・・・と腰がひけている地方在住の「ちょっと興味がある」レベルの人たちのためにやっているそうなんです。

なので、チケット代も抑え気味。

ツアーだから、装置も花のトウキョウでやるときのような大層なものは持って歩けない。コヤのサイズも土地土地で違うし。

そして、オーケストラも同行できないから音源は録音。これはいささか悲しい。“ミュージカル”の“ミュージカル”たるアイデンティティがごっそり失われてる。

でもまあ録音には良いところもあって、決して「間違えない」という(黙れ)

・・・ごほん。そんなこんなでぼくが常々思っているのは、そういう上演形態だからこそ、出演者こそはAクラスをそろえるべきだ、ということ。

これは、公益社団法人全国公立文化施設協会(公文協)がやっている歌舞伎公演に対しても常々思っていることです。

「ふだん観てない人」を啓蒙するためには、その世界で一番うまい人を出さなくちゃだめだ。

「ふだん観てない人」は、その公演が初体験なのだから、その時観た作品こそが「ミュージカル」になるわけじゃないですか。

タモリみたいに、「ミュージカルって、わざとらしいよね」と思われたら、そこで試合終了じゃないですか。

「日本では、歌がうまい人って演歌歌手だけなのね」と思われたら、悔しいじゃないですか(ん?)

でも、Aクラスを旅芝居スケジュールに拘束する難しさ、お手頃チケット代との兼ね合いなどで、理想と現実には大きな壁が立ちはだかっているのも事実なんだよな・・・。そこを何とか頑張ってほしい。

実を言うと本プロジェクトの第一弾第二弾に関しては、そんなわけで若干の不満(なぜかはググれば分かる)がありこれまで感想を書いてこなかったわけですが(実は観ていました。ちゃんと)、今回やっと「そうそう、こういうのを待ってたのよ」と満足に至ったぼくなのであります。





まあ実を言うと、本日も完璧な公演だったわけではなく、大黒柱の上様(松平健様)がいきなりセリフにつまったりして初日感を醸し出していたわけですが。

でも上様は第一弾公演『王様と私』のシャム王の時も思ったのですが、あの歌声の甘さは独自の魅力。

歌ウマなミュージカル俳優は何人も見ていますが、ミュージカル唱法でもなく演歌唱法でもなく、ああいう甘さを持った歌声にぼくはこれまで出会ってこなかったので、新鮮な気持ちになれました。

今回初舞台となるスギちゃん(杉山英司名義)は、借金取りに来たのにいつの間にか舞台に立たされてるギャング、という役そのもののドしろうと感(ほめてます)がリアリズム満点。ツアー終盤にこの初々しさを失わぬまま安心感だけをプラスできてるか、俄然確かめたくなりました。

そしてこれ以外のキャストたちは品質保証万全の面々。

ちょっとだけケチつけるとしたら(べつにつけなくてもいいのに)、若く上昇志向むんむんのキャバレー歌手上がりの女優・ロイスを、クールダンディ(女優の形容詞じゃねえな・・・)チカちゃん(水夏希)が演るという一抹の不安でしょうか。

ノーティなエロさとか、ちゃっかり系のキャピキャピ感とか、ロイスに求められていると思われる要素をおよそ持ち合わせていなさげなチカちゃん(ほめてるのか何なのか・・・)

実際観劇後も、うーん、という感じでした。

てきとうさ100%でできている恋人ビル(平方元基くん)に「Why Can't You Behave」と歌う姿は、だめんずと手を切れないかわいそうな女の子、というよりも、弟に説教してるしっかり者の姉ちゃんみたいだったし(悲)

元基くんに関しては、彼の責任ではないのですが、15年前に帝国劇場でこの作品が上演された時に一種のハイライトだった「ビルの鉄柵登り」が、大道具の関係でショボくなっていたことが残念無念。

『キス・ミー・ケイト』が再演されるとなったら、あれを期待していた人も多いのではないかと思うのだが。



逆に、「ツアー後半に東京に戻ってきたら、この声を聴きにまた絶対行こう!」と思わされたのが、みっきさん(ちあきしん)のハッティー。とにかくめちゃくちゃうまい。

みっきさんは出演者というより最近ではむしろ「歌唱指導」の欄にお名前があることが多いです。

人に指導するくらいなので()彼女自身すごい歌唱力。

もちろん在団時から上手かったのは知ってたけど、今回のようなゴスペル調の歌唱を楽々とこなしてるのを直に聴いたのは初めてぐらいだったので、なんかもう、感動でした。

そして、最後になってしまったがイチロさん。

実は今頃言うが、15年前の初演時には、まだまだキーが女優のものになっておらず、一幕ラストシーン、リリーがコロラトゥーラで「イヤイヤイヤイヤ〜♪」と歌うフレーズに、「うーん、まだまだだなあ」と落胆していた。ファルセットを出すのがやっとという感じだったのだ。

それが今回、年を重ねて(ん?)お子様も産んで(んん?)オンナとしての深みがそうさせるのか、単純に発声をがんばっただけなのかはわからないが、少なくともぼくには大満足の出来栄えになっていた。

これもまたみっきさんのお手柄かもしれないな(いや、イチロさんが昔から歌のレッスンを熱心にやっていたのは知ってるけど)

そして、それでいて相変わらずの登場シーンのエレガントさ美しさ、「So In Love」の情感、と、一路真輝を堪能させてもらいました。

まあ、ところどころ相変わらず鼻声にはなってたが(−−ヾ)おや?見えぬ





初日の今日はそうでもなかったのだが、早くも明日から猛暑に突入模様の日本列島。

二幕冒頭のビッグナンバー「Too Darn Hot」がリアルに響く日々が続くであろうカンパニーの皆さんには、ぜひともお体に気を付けて来月の千穐楽まで頑張っていただきたいものである。

池袋での東京公演に再度はせ参じることをお約束して、初日のお祝いのご挨拶に代えさせていただきます。←


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