ささやかな日々

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2023年06月20日(火) 
昨日の朝、義歯を洗っていたら突然ぱりん、と真っ二つに義歯が折れた。呆然と手元を見下ろしたものの、治るわけはなく。
予約をとるために歯医者に電話をするも、今日は混んでいて、と。でも明日は在廊日。今日治らないと困る。そもそもこれがないとごはんも食べられない。事情を話すと、そうですよねじゃあ今からいらしてください、と。2、3時間お待たせするかもと言われたが、承知して出掛ける。
通された診察台の上、座りながら、ぼんやり目の前の自分の歯のレントゲンを眺める。ここまでよくもまぁぼろぼろになったもんだと感心する。
すべては被害に遭いPTSDを患ってからだ。パニックやフラッシュバック、幻聴幻覚が起こるたびに歯を噛みしめるから、ストレスがすべて歯に集中し、歯がぼろぼろになるのにさほど時間はかからなかった。自分がPTSDになるまで、いや、被害に遭うまで、そんなことが起こり得るとは想像もしていなかった。でも、これが現実。
何度も凌辱された陰部は、ストレス過多になると今も爛れ、その周辺にできものができたりもする。これも被害の後遺症だ。
被害者はそんなふうに、被害後もずっとずっと、後遺症に苦しむ。

刑法改正について、私は最初から距離を置いていた。当時私に闘う余力はなかった。それが分かっていたから、最初から距離を置いた。それが私にできるせいいっぱいの礼儀だったから。
闘い続けてくれた友人たちがいたから、今、性的同意云々にまで辿り着いた。すごいなと思う。彼女・彼らのエネルギー、どれほどそれが要ったか、想像に難くない。

紫陽花が終わりに近づき、代わりに種から植えた向日葵が咲き始めた。息子と頬杖つきながら黄色い花を眺める。トマトも花をつけ始めた。
それだけ見ると、平和だな、と思う。
でもここに辿り着くまでに、どれほどの血反吐を吐いてきたか。どれほどの悔しさを噛みしめ呑み込んできたか、知れない。

誰も自分の代わりを生きてはくれない。自分を生きるのは自分しかいない。だから、どれほど理不尽な現実でも、受け容れ、そこから歩くしかない。
分かっている。分かっているし、覚悟もしてる。
でも時々ぼおっと思うのだ。被害後こんなにも長く苦しむのは一体何のためなんだろう、と。途方に暮れてしまうのだ。

被害者みずから声を上げ、周りを巻き込んで、ようやくここまで、性的同意云々まで、辿り着いた。でもこれが実際にうまく動き出すには、まだもう少し時間がかかるんだろう。もちろんそんなことみんな百も承知なのだろうが。でも、これ以上もう、当事者たちが疲弊しないことを私は祈らずにはいられない。
自分の傷と対峙し続けることは、生半可な気持ちではやっていけないことを、私も知っている。

今日は午前中のうちに溜まっていた手紙に返事を書いて、それから個展会場へ向かう予定。早々にへばらないように今からエネルギー振り絞っていかないと。
自分、頑張れ。


浅岡忍 HOMEMAIL

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