ささやかな日々

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2023年05月13日(土) 
五月に入り、時間軸が微妙にずれて感じられている気がする。たぶん個展準備のせいだ。今私の照準がすべて個展に合わさっている。日々の時間軸と私の時間軸とがうまく重なり合わない。
そうこうしているうちに紫陽花が蕾を綻び出させている。挿し木で植えたのが去年、すべて青の花だったのに、土も青花用にしたのに、何故か美しい燃えるようなピンク色になっている。苦笑しか漏れてこない。一体どうして、ここまで努力したのにも関わらずピンク色になるのだろう。いや、ピンクも濃くて美しいといえば美しいのだけれど。もう一度土から作り直し、だ。
ワンコとの夕方の散歩、このところいつも息子と一緒に出掛けている。この間息子がアゲハの幼虫をよそのお宅の軒先で見つけてからというもの、合計四匹、幼虫をゲットした。今息子の、虫籠の中にいる。この子は黒ちゃんでこの子はキャタピ、この子は…と、息子は名付けているのだが、私にはその違いが全然分からない。「この子、違う種類だよ、絶対違う!」と言って指さされても、何がどう違うのかが分からない。息子の様子を眺めながら、好きこそものの上手なれ、という言葉を思い出す。彼の生き物に対する愛は本当に淀みなく溢れて来る。勉強に対しては一切出てこないが、まぁそれも彼の特質なんだろう。偏差値40台をうろうろされて正直母はひやひやしているのだが、まぁそれも彼の人生、と割り切るほか、ない。

友人から、久しぶりにメッセージが届いた、と思ったら、「薬40錠飲んでも救急搬送ってされないんですね」というもので。思わず眉間に皺が寄ってしまう。薬40錠、救急搬送。その言葉に自分が反応していることは分かっている。いや、それ以前に、どうしてこういうことをメッセージできるのだろうこのひとは、と思っている自分がいる。
そもそも、これで何度目だろう、彼女からオーバードーズしたという連絡が入るのは。そして、救急搬送されない、というのは、独り暮らしをしていれば当然起こり得ること。救急搬送されたいのなら誰かにSOSを出すほかない。そもそも何を40錠飲んだのか。
しばらく考えて、そっとメッセージを返す。「これ、どう反応すればいいの?」と。即刻「もういいです」と返ってきたうえに、ブロックされた。
なるほどなぁ、こうやって今は、ひととの縁を簡単に切れる時代なのだな、と納得すると同時に、寂しい時代になったな、とひとり思う。
目に見える形で、切ったり貼ったり。ひととの縁は果たしてそういう代物なのだろうか。私にとっては、そういうものでは、ない。
ひととの縁は少しずつ少しずつ、育み続けるものだと私は思っている。簡単に切ったり貼ったりできるものではない、と。時代とズレているのかもしれない。良くも悪くも、私はそうやって生きて来た。そして、これからもそう生きようと思っている。
目に見えてしまう、というのは、或る意味、哀しいことなのかもしれない、と思った。目に見えてしまうから追いつめられるし責められているようにも感じられるし、そもそも、ああこれで終わり!となってしまう。
でも。
ひとの心は、そんな簡単に、リセットできるものじゃぁないんじゃないか?
リセットボタンをひょいと押せば、すべてなかったこと、のようにできるものなのか? いや違う。少なくとも私の心は、違う。

ひとと関わる、というのは、簡単じゃあない。関わるというのは少しの責任を伴っている。そのひとに対して自分がどれだけ誠実に向き合えるか、という責任。
向き合うこと。関わること。それはだから、いつだって一握りの勇気が必要だし、膨大なエネルギーが費やされもする。でもだからこそ、そうやって勇気や責任やエネルギーを費やされた縁にハグされると、あたたかくちからづよく、癒される。もちろんだからこそ時に傷つけ合いもする。でも、そういうものなんじゃなかろうか。ひととひととの関わりというのは。目に見えてしまう切り貼りの関係なんて、体温のない電子情報みたいなもんでしか、ない。

言葉に還元されることと、されないこと。声に乗せられることとそもそも声にできないこと。
語られることの一方、そこには必ず語られないことがあるということ。
最近そうしたことが、とても気になる。
どれだけ言葉に還元できるか、をいつも思っていた。そうやって努めて来た。けれど、そもそも語ることの中にすでに、語らないということが内在しているということ。そのことが、ようやっと腑に落ちて来た。
語ること、語らないこと。
語られること。語られないこと。
そして、どこまでも「耳」であり続けること。

さて。そろそろ作業に戻ろう。目を酷使するプリント作業。こめかみがちりちりする。きっとじきに頭痛もやってくるに違いない。しばらくは、それらとうまく付き合っていくほか、ない。自分、がんばれ。


浅岡忍 HOMEMAIL

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