2022年09月29日(木) |
早朝空を見やる。どんよりと重たい鼠色の雲に全面覆われている。何処にも隙間がない。みっしり、というのはこういうことを言うのだろうな、なんて思う。 咲いたミントティーという名の薔薇、実に私好みで、一輪挿しに飾っている。これはもうちょっと樹が太く丈夫になったら、挿し木で増やしたい。今からすでにそんなことを思いわくわくしている。 こんな曇天にも関わらず朝顔が幾つも咲く。青い朝顔。この子らは昼過ぎには萎んでしまう。そんな彼らに、この曇天は一体どんなふうに映っているんだろう。せっかく咲いてくれたのに、と思うと少し寂しい。
金木犀の香りが街のあちこちで漂い始める。この香りに会うと、私はやっぱりいつも、実家の金木犀の樹のことを思い出す。 二階の私の部屋の出窓から、あの金木犀の樹はすぐ手が届くようなところにあった。大きく大きく育った金木犀の樹はだから、季節になると溢れかえるほどの香りを漂わせた。夜、出窓に掛布団を引っ張り上げ、ぺたんと座って空を見上げる。秋の夜にはいつも、金木犀の香りがあった。 今、実家に私の部屋も弟の部屋ももう、ない。十年程前に二階をすっかりリフォームしてしまって、私と弟にとっては知らぬ家になってしまった。あの時は弟とふたり話したものだ、自分の部屋がなくなるってさ、寂しいね、と。でも。今なら分かる気がするのだ、私達が出て行った後、父と母、ふたりきりで暮らすにはこの家は大きすぎた。リフォームして、私たちの部屋を潰し自分たちの空間に塗り変えなければならないくらい、私たちの不在による穴ぼこはきっと、大きかったに違いない。当時私たちはそんなこと、想像もしなかったけれど。でも、今なら。分かる気が、するのだ。 父母と再び交流するようになって、最近では息子を連れてふたりで実家を訪問するけれど、二階には決して行かない。そこはもう、私の入り込む空間ではないからだ。あの家は父母の家であって、二階は父母の空間であって、それ以外の何者でも、ない。少し寂しくないわけじゃぁないけれど。それでいい、と、思っている。
ふと気づくと。搬入設営の日はもう明後日。え、本当に明後日?!と今更だけれど吃驚している。大丈夫か、当日晴れるのか、もし雨嵐になんてなったら、この大量の大型荷物、ひとりで運ぶなんて荒業絶対無理だ。 とりあえず。念のためにテルテル坊主を作っておこう。頼むから明後日は、明後日だけは、晴れてくれ。いや、搬入の時間だけでいい、晴れておくれ。
S先生の対談本を、某県の美術館に寄贈することに決めたのだけれど。郵送料もこちら持ち、とは思わなかった。そういうものなんだろうか、美術館って。ちょっと首を傾げてしまう。正直、気持ちがすっきりしない。 |
|