ささやかな日々

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2021年03月28日(日) 
降り出した雨はどんどん勢いを増して、もう外はけぶっている。夜闇でも分かるほど。でもついこの間までの冷たい、刺すような冬の雨ではなく、ぬくい雨だ。春なんだな。新しい季節が、すでにもう訪れているのだな、と改めて思う。

久しぶりに息子と共にワンコの散歩に出掛けた夕刻。息子が「スパイごっこしよう!」と言い出す。一体どんなのだろう?と思っていると、私に見つからないように隠れながら私にタッチする、という遊びらしく。たとえば後方の電柱の陰に隠れてみたり、よそのお宅の塀の陰に隠れてみたり。息子が一生懸命真面目に隠れているのは至極伝わってくるのだが、こちらはワンコ連れ。ワンコがまず匂いに気づく。気配に気づく。そしてリードを握っている私もつられて気づく。「もうっ!なんで分かっちゃうの?!」と息子がげらげら笑いながら私に絡みつく。いや分かるでしょ、だって見えてるもん、と私も笑いながら言い返す。
その後も、彼が考案する何々ごっこが次々繰り出される。よくもまぁこんなに、次々と新しい遊びを思いつくものだ、と、心の中感心する。私も昔はそんなんだったんだろうか。もはや思い出せない。
ワンコが数少ない空地に立ち寄る。茂る雑草に鼻面をこすりつけんばかりに近づけて匂いを嗅いでいる。ふと思いついて息子に「空地ってね、そらの地って書くんだよ。からっぽの地、って」と説明すると、息子が「ふぅーん、ドラえもんでみんながあそんでるところだよね?」と言うのでびっくりしてしまう。そうか、彼にとって空地は、もはや珍しい代物なのだな、と気づかされる。確かに、空地はほとんど残っていないこの辺り。私が子供の頃空地で遊んだと告げても、彼にとっては想像の産物にすぎないのだと知り、愕然とする。空地。遊び場だった。土筆も空地にいっぱい生えてて、私はその土筆を摘んだりして遊びもした。空地は子供たちにとって、秘密基地みたいなものだった。そういった場所が、今を生きる彼らにはもはや残されてないのか、と。飛び跳ねながら私の前を行く息子の後ろ姿を見ながら、なんだか猛烈に、切ない気持ちにさせられた。

窓の外、雨は勢いよく降っているのに音が殆ど響いてこない。それだけ柔らかい雨なのだな、と知る。春の雨らしい。新芽のように柔らかな、ぬくい雨。
明日は人前で話しをする日。出かけるまでに雨は止むだろうか。止んでくれるといいな。


浅岡忍 HOMEMAIL

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