ささやかな日々

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2021年03月26日(金) 
ワンコと夕刻散歩に出掛けた折、土筆を見つけた。どれくらいぶりだろう、土筆の姿を見たのは。思わず声を上げてしまう程久方ぶりで。ワンコが土の匂い嗅ぎに夢中になっている傍らで、私はうっとりと土筆の姿を眺めてしまった。小さかった頃、近くの空き地には季節になれば土筆が山ほど生えてきた。私もたっぷり摘んで帰って料理してもらって食べたものだった。今目の前にある土筆たちは、料理できる程の量ではない。土筆が珍しくなってしまった今どき、摘むなんてことはむしろしたくなくて。先っちょをちょんっと突いた。土筆は、烏野豌豆の絨毯の間々にちょこちょこと生えており。これで捩花が咲いていたら私はとても嬉しいんだけどな、なんて思いながら、空を見上げた。空はぼんやり霞んでいて、眩しさもやわらいだ様相だった。
それにしてもずいぶんと日が長くなった。朝は朝で闇が緩むのがとても早くなった。ついこの間まで五時といったら真っ暗だったのに。今はもう、地平線が色づき、太陽の気配を感じるほど。

義母がやってきた。息子の誕生日を祝いに、ということだったが、確かにそれもあるのだろうが、彼女はお酒が飲みたかったのだな、と、つくづく思う。
義母と家人と息子と蕎麦屋に行った。そこで飲み始めた義母は早々に酔っぱらい始めた。私は、お酒が嫌いなわけじゃない。むしろ、楽しいお酒は大好きだ。でも。彼女とのお酒は苦手だ。何故なら、彼女はお酒に溺れてしまうから。
今回もそうだった。早々に、言葉に棘が出始めた。ああ酔ってるんだなと思ったが黙っていた。その間も彼女は家人と飲み続けており。次第に言葉を放り投げ始めた。それに家人が過剰に反応し、険悪な雰囲気に。
息子と家人を先に行かせ、義母と連れ立って私が歩く。義母はすぐさま、家人の悪口を言い始めた。私が少し家人を庇うと、今度は私に攻撃の矢を向け始めた。ああまたこれか、と思った。いつもそうなんだ、いつも。
そして何より私が嫌なのは。彼女が攻撃の言葉を矢継ぎ早に繰り出す、そのそばから、彼女自身は忘れていくこと、だ。彼女は覚えていない。だから、まったくもって自分の放った言葉に責任を持たない。悪口を言い続ける彼女の隣を歩きながら、私は、心の中で小さくため息をついた。
アルコール依存症と認知症でホームに入っている義父。一方義母は、今も自宅でひとり暮らし、酒を飲む。この歳になってお酒やめるなんて私にはあり得ないわと豪語する義母。そして家人も家人で、日々酒を飲む。酒に溺れる。みながみな、自覚がない。
私は。
そんな彼らを一歩離れたところからじっと見ている。悲しいな、と、思う。周りがどう言ったとしても、結局、自分で気づくしか、術はない。


浅岡忍 HOMEMAIL

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