ささやかな日々

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2021年02月16日(火) 
洗濯物を取り込もうとベランダに出て気づいた。三色スミレの蕾がひとつ。嬉しくて思わず声を上げる。「蕾だよ蕾!」。部屋の中から息子があまり気のなさそうな返事を返してくる。「よかったねー、ラッキーだねー」。だから私は畳みかけるように応える。「これからきっと次々蕾が出てくるよ、そういう季節なんだねえ」。
西日がまっすぐ強い風も越えて伸びてくる、そんな時間。

何だかすっきりしない。胸のあたりがもやもやしている。言葉になりきらない何かがどんより、溜まっている。たとえば同じ部屋にいる家人がかける音楽が私の琴線とは合わなかったり、せっかく作ったご飯にヤジを入れられ黙りこくったり。そんな、どうってことのない場面場面で、しこりのように溜まってゆく何かの気配。
こういうときはフォーカシングするに限る、と思うのだが、これまた家人が同じ空間にいて集中できない。悶々としながら時間だけが過ぎてゆく。夜。

怪我をして負った不自由さが、少しずつ少しずつ薄れ始める。だから調子に乗って片手でひょいっと鍋を持ちかけて「痛い!」と思わず悲鳴。怪我前だったら当たり前に片手で持ち上げていた鍋がとてもじゃないが持ち上がらず、両手で何とか、という具合。ああまだこれっぽっちかあ、なんて、しょんぼりしたり。
自転車を漕いでいて今迄意識することなんてなかった段差、段差を越えるたびハンドルを握る両手首に振動が走り同時に鋭い痛みが生じたり。

ああ要するに、私は、今のこの自分の身体を持て余しているのだな、と。思い至る。じりじりと、悶々と、するばかりで、ちっとも思う通りに動いてくれないこの身体を。
そもそも毎日朝昼晩と山盛りの薬を飲み、その合間合間に鎮痛剤を飲み、そうして何とかやりくりしていたはずの身体。やりくりできていたはずの身体。それが、たかが怪我でここまでぼろぼろの有様か、と。ほとほと嫌になって来るのだ。
なーんてことを書いていたら、「どれだけおまえは恵まれた奴なんだ」という声が私の奥底からしてきた。自分の身体ひとつ受け容れることもできないで、何を偉そうにぶいぶい言っているんだか。

そして唐突にぱっと思いつくこと。旅に出たい。一人旅に。そうでもしなけりゃまともに深呼吸さえ叶わなさそうな今の自分。情けなや。


浅岡忍 HOMEMAIL

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