2020年12月09日(水) |
曇天。段々に連なる灰色の雲は、何処をとってもひとつとして同色はなく。自然の作る色合いの何と豊かなことか。見惚れてしまう。
薔薇の蕾の綻び始めた子たちを切り花にする。花瓶に活けて台所のカウンターにちょこねんと置く。それだけで部屋が一段、明るくなったような気がしてくるから花は不思議だ。ひとの心を和ませる力を持っている。
今日、ずっとずっと、ずっととってあったスカートの数々を、お友達に貰ってもらった。 引っ張り出せば、いろんな思いの詰まったスカートたちばかりで。 何度も「着よう」と思いながら着れなくて、箪笥の肥やしにしてばかりだった。それが申し訳なくて、罪悪感ばかりが膨らんでた。 でも。 きっと貰われていった先で、たくさんたくさん、着てもらえるに違いない。今度こそ君たちの出番だよ、と、そう思った。 友達をきれいに着飾ってあげてね、心地よく守ってあげてね、あったかく抱きしめてあげてね、そう思いながら、ありったけ、譲った。 友達が帰っていった後、何となく少しの間だけ、ぼんやりした。本当は、何度だって着たい服ばかりだった。スカート、というだけでもう着れなかった。可哀想な服たち。 これからは、幸せになってね。幸せにしてもらって&幸せにしてあげてね。 今迄、一緒にいてくれて、ありがとう。今はまだちょっと、寂しい。
それにしても今日は身体の痛みが酷い。テニスボールを使ってあちこち解そうと試みているのだが、ちっとも痛みに追いつかない。
スカートたちをお嫁に出したおかげで涼しくなってしまった箪笥を今、ぼんやり眺める。そして改めて思う。私はあのスカートたちを愛していたんだなあと。履けなくなっても、愛していたんだなあと。 スカートは。私にとって大事な代物だった。子供の頃からフレアスカートなんてたまらなく好きで、長いフレアスカートは好んで履いていた。もうほとんど思い出せないけれど、私は洋服ダンスの中の長いスカートを、取り出して履く、その瞬間がたまらなく好きだった。風に揺れ陽の光を受けてはためく裾が、とても好きだった。純粋に、好きだった。 被害に遭わなければ、スカートを手放さなくても済んだ? 被害に遭わなければ、スカートを今も履けてた? ―――分からない。そんな、もしも、の話をいくらしても、何も答えは出てこない。だから。
ありがとうスカート。今迄ありがとう。 |
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