ささやかな日々

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2020年11月12日(木) 
今日はいろいろ連絡が来る日だ。恩師からも友人らからも、次々。元気そうな声もあれば枯れた声もあり。みんな一生懸命今を生きているからこその声なんだよなと思ったら、何だかどれもこれもが全部愛おしく感じられて、たまらない気持ちになった。

アメリカンブルーは一進一退。調子の良さそうな日もあれば今日はちょっとつらそうな様子で。だからたっぷり水をやる。クリサンセマムが一輪だけ咲いていて、こんな季節に咲く花ではないから何だか嬉しいのと申し訳ないのとが入り混じった気持ちになる。花弁をつんつんと指で突いて、頑張れヨと声をかける。朝顔は今朝もまた一輪咲いた。一体いつまで花が続くんだろうと不思議な気持ちにさせられる。トマトはもう実がびっしりなっているが、まったくもってすべて青いまま。赤くなる気配が感じられない。息子はもう待ちきれんという様子で、毎朝毎朝、まだ赤くならない、とほっぺたを膨らませている。

泊まりに来たCさんは、ひっきりなしに何か喋っていた。ご飯を食べる時は「こんなふうに食卓を大勢で囲むのってどのくらいぶりだろう?!」と目を輝かせていた。結婚願望がまったくない彼女は、いつかシェアハウスに住むのが希望だ、と。私は心の中ふと、もし彼女が被害者でなかったなら、今独り暮らししていなかったかもしれないし、結婚願望も昔のままあったのかもしれないなあと想像してみた。でもそんな想像が無駄なことは、私が一番わかってる。むしろ、今目の前にいる彼女に失礼だ。心の中、私は彼女にそっと詫びた。
映画の話、加害者との対話の話、アートセラピーの話、虐待の話、セカンドレイプの話。あれやこれや、次から次に思いつくまま会話した。話題は尽きなかった。あっという間に帰宅時間になっており。彼女は慌てて鞄を肩にかけ、また来ます!と言ってバスに乗っていった。私はくすくす笑いながら、そんな彼女を見送った。
見送りながら、最後に話をした、死刑についてのことを思い返す。私が死刑は望まない、と言うと、彼女がおいかぶさるように「私もなんです、死刑は反対です!」と言い、私が「死刑より終身刑ができてほしい」と言うと彼女も「そうなんですそうなんです、そう思うんですよ私も!」と言った。彼女は前向きに、罪は生きてこそ償うべきだ、その責任をちゃんと生きて負うべきだ、と繰り返し言っていたが。私はむしろ、後ろ向きの、こうなんというか、そんな楽に、簡単に死なせてたまるか、という気持ちがあってのことだった。そのことを、伝え忘れたな、と、そんなことを思った。

そう、私は自分の加害者にも死刑を望んではいない。むしろ、一生涯罪を背負って生きてくれ、と思っている。でもそれは、罪を罪と認識していれば可能であるだけの話で、罪を罪とも思っていない人間にとっては、背負うも何もそもそもないお話。残念ながら。そして私の加害者は恐らく、歪んだ認識しかもっていない。悲しいかな、それが現実。

カーテンを半分開けて外を見やれば、しんしんと闇がそこに在り。私は生姜茶を淹れ直す。温かいお茶が欲しくなる季節。


浅岡忍 HOMEMAIL

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