ささやかな日々

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2020年11月08日(日) 
ユリイカがまた一輪綻び始めた。開いてしまう前に切り花にする。まだ若いこの樹にこれ以上の負担をかけたくなくて。先日孫娘と植え替えたラベンダーは様子は変わらず、じっと佇んでいる。ホワイトクリスマスは根詰まりしているのかもしれない、新しい葉がうどん粉病だ。近々プランターをひっくり返さなければいけないかもしれない。ベビーロマンティカも本当は土を替えてやりたいのだが、こちらのプランターには零れ種で育ったクリサンセマムがぎっしり育ってしまっていて、とても土替えは無理そう。ちょっと困った。ベビーロマンティカ、もう少し辛抱しておくれ。
アメリカンブルーは少しずつ少しずつ息を吹き返してきている気配。まだ気配だから確かではないけれど、でも。根元から新しく芽吹いた葉の姿がある。大丈夫、きっと大丈夫。私は自分にそう言い聞かす。
昨日は家人の展示を息子とふたりで観に行った。大がかりな展示で、私の展示とは全く異なる姿を見せている。同じ写真家でも、こんなにも違うんだなと改めて思う。写真集作りに勤しんでいた家人は、会場内をばたばた走り回る息子に気が気じゃなくてぴりぴりしている。これは早々に帰った方がいいなと私は判断し、息子を呼ぶ。
帰り道、鬼ごっこしたいという息子のリクエストに応える。でも息子は夢中になると周りがまったく見えなくなる性質で。だから通行人にすぐぶつかってしまう。もうこれ以上だめだよと息子に言い聞かせ、手を繋いで歩き始めたら、足元に雀の死骸。ふたりとも思わず立ち止まって凝視してしまう。「善逸の雀かな?」息子がいきなり言うので私は一瞬反応に困る。ちょっと考えて「そんなことないよ、きっと。でも可哀想だね、どうしちゃったんだろうね」応えにならないことを返す。「きっと猫に潰されたんだよ」息子が言う。え、猫に?私はこれまた反応に困るが、息子は確信に満ちていて、私はさらに困ってしまう。「うんそうだ、猫に潰されたんだ。きっと。間違いない」。本当は、猫じゃないよ、この潰れ方は、と言いかけた私だったが、彼の心を潰したくなくて、そうは言えなかった。だから代わりに「きっと今頃天国で歌うたってるよ、雀さん」なんて夢見がちなことを言ってみる。息子は空を見上げて「そうだといいなー!」と言う。
一時間以上電車に乗るのはやはり苦痛で。それが往復となるとしんどい以外の何物でもない。息子と二人、空いた席に並んで座ったものの、手持無沙汰で、あと何駅で着くかななんて言い合ってみる。流れ飛ぶ景色は曇り空を反映してどんより暗い。

そういえば、通院日の金曜、受付でちょっとした行き違いがあり。大したことじゃない筈なのに被害や被害後の体験のフラッシュバックに襲われ過呼吸に陥ってしまった。まるで自分が立っている足元が、地面という地面が、がらがらとすべて崩れて宙づりになったかのような錯覚にさえ陥る。おかげでカウンセリング中ずっと涙が止まらなかった。久しぶりにこんなに泣いた。すっかりぐしょぐしょに疲れた。何だかいろんなものがぐしゃぐしゃになった気がした。
「それでも人を信じることを止めないでいましょうね。でも。一度信頼を裏切った相手のことは切り捨てていきましょうね、これからは。切り捨てていっていいのよ、もう。」主治医がにっこり笑顔でそう言った。今もその言葉がぐわんと響いてる。「あなたの良い処に一味加えればいいのよ、大丈夫」。
その、一味加えるっていうのが難しいんだよ先生、と心の中で思ったけれど、でも、言わなかった。だって、先生の言うとおりなんだ。わかってる。

明日は撮影。頼まれてポートレイトを。ひとの縁というのはありがたいものだ。ひとがひとを呼ぶ。一枚でもいい、気に入ってもらえる写真が撮りたい。
頑張ろう。


浅岡忍 HOMEMAIL

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