ささやかな日々

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2020年10月10日(土) 
雨。台風が変てこりんな進路を辿っているそうで。一体どうしたらこんな進路になるのかと思うくらい。家人が言う、こりゃ当分雨続きかなぁ、と。冗談じゃあない、そんなんじゃ我が家は洗濯物で埋まってしまう、と、私は心の中で悲鳴を上げる。
娘と孫娘が遊びにやってきた。雨だからと家人が気を使って車を出し迎えにゆく。まだそんな時間が経っていないうちから息子が、「まだかな、まだかな」とそわそわ。最後には「迎えに行ってくる!」と玄関の外に走り出る始末。
ようやくやってきた孫娘は、今日はやたらに家人に纏わりついている。「じいじ、あのね」「じいじ、これね」。これまでにないサービスぶり。私が首を傾げていると娘が淡々と「今日はそういう気分らしい」と言う。
息子と孫娘が喧嘩したり仲直りしたり忙しくしている横で、私はシチューを作り始める。玉葱を山ほど切り、大鍋へ。とろ火でことこと。玉葱から汁が出てきたのを確認して他の具材も次々投入。
息子は何故か、孫娘が遊び始める玩具にばかり執着し、孫娘の手に取ったものを次々取り上げる。孫娘が結局大泣きしはじめ、地団駄踏んで怒っている。娘が「いい加減にしなさい!」と声を上げる。私はそんなやりとりを見聞きしつつも、シチューを煮込む。
外の雨は今頃どうなっているのだろう。アメリカンブルーが何故か一株枯れたようで。他の子たちは元気なのに、一部分だけ。悲しい。台風が去ったら植え替えをしてやらないと。
シチューを煮込みながら実家の父母に電話をする。結婚記念日おめでとう。そう言うと、母が「え、あ、結婚記念日だったわ、忘れてたわ!」と大笑いする。覚えていてくれてありがとう。母が笑いながら言う。私はそれを聞きながら、そういえば去年もそんなやりとりをしたなと思い出す。
家人は、孫娘を抱くたび「ぷにょぷにょだぁ」と顔を綻ばせる。息子の骨ばった体と大違いな女の子の体にちょっとびくつきながら膝にのせてにんまりしている。そのせいか、今日はお酒を飲み過ぎている。
結局家人は布団に倒れ込み、息子と熟睡。孫娘を寝かしつけた娘と換気扇の下で煙草をぷかり。あれやこれやどうでもいいおしゃべりであっという間に真夜中になる。
明日も雨か。そういえば、小川洋子の小説に、ひとつずつ何かが失われてゆく世界を描いたものがあったな、と思い出す。今雨が止むことが忘れられたら、私たちは永遠に雨に閉じ込められるのか、と、想像する。
途方もない想像。静かに夜が更ける。


浅岡忍 HOMEMAIL

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