昼食に誰かを待つ日は

2021年01月17日(日) 28歳の誕生日


 誕生日を祝うから、といって蔵前に住む友人が豪勢な料理を作っておもてなしをしてくれた。超大手に転職を決めたRの住む部屋はマンションの8階にあり、スカイツリーが家のすぐ近くに見えて、ベランダからは隅田川も見渡せる。家賃4万5千円の私の2倍以上の家賃を払ってこの部屋にひとりで住んでいる。中は広くて、無駄なものは何一つなく、キッチンは広いし湯船はあるし、テーブルもソファもベッドもある。私からしてみれば贅沢の極みだ。
 誕生日の日に友達がごはんを作ってくれることなんて、これまで一度もなかったから、テーブルに並べられた色とりどりの、美味しそうな料理を見ているだけで嬉しくて、笑みが止まらなかった。きのことチキンのクリーム煮、海老と帆立のサラダ、かぼちゃのパエリア、具沢山のミネストローネと、ウーバーイーツで頼んだカラアゲと、美味しい白ワイン。たらふく食べてお腹がいっぱいになり、あとはうだうだと2〜3時間話をして、お風呂に入って、『時計仕掛けのオレンジ』をみて、気づけば寝ていた。
 翌朝は、いっしょにアップルパイを食べて、そこからは仕事や恋愛やらの話を続ける。彼女はいつでもたくましい。適当で大胆であるのが良い。顔は美人だけれど、性格が男前。「絶対なんとかなるんだよ」という彼女の言葉に励まされる。大学時代には何度も喧嘩をしていたけれど、こうして会ってみると、互いに面倒な自我が減り、相手に対し何かを期待することも減り、さっぱりした関係で接しやすくなった。数少ない女友達と、こうして長い時間話せる時間はいとおしい。
 「私、もう結婚しなくていいわ」という意見で互いに合意。全然結婚をしたいとも思わない。でもそういっているのに限って、意外と早く結婚するんだよなあ。 

 夕方家を出て、次に松竹に会いに行く。新宿につくと、「お誕生日おめでとう」といって、彼女は私に抱きついた。そしてパフェをごちそうしてくれた。私はピスタチオのパフェ。松竹は「煙山さん」というパフェを頼んで食べていた。彼女も今年で社会人になる。「早く働きたいなあ」といえるのが素直にうらやましかった。なんでそんなに働きたいの、と尋ねると、「わたし仕事が好きなんだよ。働いていたい」と平然というので、こんな風にさらりと言えるのは、やっぱりいいことだなあと思いながら、珈琲を飲んだ。
 28歳になったのかあ、と他人事のように思う。29になっても30になってもそうなのだろう。とりあえず、28年間も生きていて、ここまで生きているだけで、立派だよと私は自分をほめることにした。
 
 今日は帰ったら、何か荷物が届くらしい。何が届くのかなあ。馬車道は、私の誕生日にひとりで白ワインとナッツを食べて、遠くで祝福をしてくれたそうだ。嬉しいね。


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左岸 [MAIL]