てくてくミーハー道場

もくじ前回てくてく次回てくてく


2018年04月28日(土) ミュージカル『リトル・ナイト・ミュージック』(日生劇場)

4月に入ると同時に朝の通勤電車の混雑が増し、新年度が始まったことを実感しておりましたが、あっという間にゴールデンウィーク。

この連休が終わると、なぜか朝のラッシュも若干の緩和を見せるのが例年の現象。

不思議ですよね。ラッシュの原因となった新社会人たちは、この連休後にどこに消えるんでしょうね?(失言)

いやひと月経つうちに、通勤形態も各自変わってくるんでしょう。

そういうのとは関係なく、例年より早めのサクラ満開の時期も4月上旬の気温変動もあんまりぼくの生活には影響しませんで(今年は桜の開花が早すぎたので、吉野山ツアーに行きそびれた/涙)、早速この週末からは劇場通いの毎日になりそうです。

・・・いやそうでもないか。←

甚だしい年は連日マチソワマチソワを繰り返して全くエントリせずに終わってしまうこともあるのですが、今年は前半の三連休ではこの公演1本、後半の四連休は1日おきに2本と、かなり緩いスケジュールになっております(今のところ)





どうでも良い前置きが長い悪いクセ。本題に入りましょう。



例によって大竹しのぶ丈と風間杜夫丈以外のキャストを頭に入れずに観劇。ただしこれは、先入観なしにキャストの力量を判断したいという意図もあります。今回もそれは良い効果を生んだのではないかと自画自賛。

『リトル・ナイト・ミュージック』を観ること自体はぼく2回目で、前回は1999年に青山劇場で上演されたバージョンである。

本棚に収まりきらないプログラムが行方不明になっているせいでこの公演の資料が今見つからない情けない状態なのだが、ぼくの頼りない記憶だけで羅列すると、デジレがターコさん(麻実れい)、シャーロットがヤンさん(安寿ミラ)、ペトラが池田有希子さん、フリートが三谷六九さんというキャストだった。

なんでペトラ(女中)とフリート(執事)を覚えていてもっと大きい役のフレデリックやアン、ヘンリック、カールマグナス、マダム・アームフェルト、フレデリカを覚えてないのかというと、要するにそれらを演じた役者さんたちがぼくの記憶に残るような何かを(以下失礼すぎるので省略)

その記憶によると、ぼくは当時この作品を観てターコさんよりもヤンさんの方がすごく印象に残っていて、シャーロットってすごい面白い役だなあと思っていた。

そのシャーロットを今回は誰が演じるのかも知らずに()行ったら、とうこ(安蘭けい)だったので嬉しくなってしまった。

そしてさらに言うなら、とうこのシャーロットもすごく素敵だった。

前回観た時もなぜかそこだけくっきりと覚えていた、シャーロットとアンがアームフェルト家の別荘に着いて、他の連中に気づかれないように、

「いらしてたのね、お話はあとで」

と耳打ちし合うセリフがまんま残ってたのも嬉しかった。

そしてもう一か所、ぼくがとても好印象で覚えていたのがペトラのソロ「粉屋の息子」

この曲、ほんと不思議なナンバーで、メインキャストとアンサンブルの中間ぐらいの役に過ぎないペトラに、なぜか唐突にソロナンバーが与えられる。しかもストーリーとほとんど関係ない内容の歌なのだ。これ、どういう意図があるんでしょうね?未だに分らん。

もしかしたら、初演でペトラを演じた女優さんが、“ごちそう”の大女優だったとか?勉強不足で知らないですが。

で、当時池田さん(彼女のことは正直あんまり知らなかった)のこのナンバーを聴いて、もうすごい歌唱力で大喝采だった(いわゆるショーストッパー)ことをずっと覚えてた。てか、そのことしか覚えてなかったぐらいだ。

なので、今回もこのナンバーを聴くことを期待していたのだが・・・。




(おなじみの行空け)




瀬戸カトリーヌ改め瀬戸たかのさんが今回ペトラに配役され、前半の芝居部分は持ち前のコメディエンヌぶりをいかんなく発揮していたのですが、歌は少々・・・いや、かなり・・・。

ショーストッパーどころか、拍手すらない状況でした。ミューオタって残酷だよね。でも、これにめげず精進してほしいです。残酷な分、でかした時には惜しみなく称賛するのもミューオタなんで。



で、これ以外の部分は前回公演をすっかり忘却していたので(お前に舞台観せるのって、ほんとに金の無駄! byつれあい)、初めて観る気分で楽しみました。

名曲「Send In The Clowns」まで覚えてないのかよ?!と責められると心苦しいのですが、正直覚えてません(うわっ・・・/呆)

ていうか、実はぼく、この曲は一路真輝さんがCDで歌っているバージョンをずっと聴いていて、そっちで覚えちゃってたので、ターコさん歌唱をあんまり記憶に留められなかったのである。

んで、今回の大竹しのぶ丈の歌唱。



これがまた紛うことなき名唱で。


やっぱ大竹しのぶってすごい女優だ。と再確認。

とにかくピッチとかの問題じゃないのである。正直、ピッチはかなり怪しい(コラ)

ピッチが怪しいと言えば、風間さんもかなり怪しい(おいこらこら)

だけど、この二人の場面の濃密さったら他の比じゃない。

「これぞ演劇(ミュージカル、じゃなくてごめんなのだが)だ!」と感謝の気持ちが迸る事態であった。

盛りを過ぎた中年の男女の滑稽さ、そこはかとないもの悲しさが味わい深くて、愛しくてたまらなかった。

今になって考えてみると、ターコさんのデジレには、こういう哀れさがなかったんだよなあ。ターコさんゴージャスすぎて(言外に大竹しのぶをディスってないか?大丈夫か?)

でもターコさんも結構諧謔味のある女優さんなので、デジレの滑稽さは演技力で出してたと思う。ただ、この「Send In The Clowns」を歌うシーンで一番よく覚えているのが、歌うシーンそのものじゃなくて、歌い終わった後舞台からはけずに、「粉屋の息子」の間、ずっとあずまやに座っているデジレのシルエットが観客に見えているという演出だったこと。この演出の意図はなんだったのかニブいぼくには未だに分らないのですが、かなり印象に残りました。



感想が全然ストーリーの流れに沿ってなくてとっ散らかっていて申し訳ございません。

全体的なふんわりした感想を書くと、まずナンバーが「めっちゃソンドハイムやな」(←)

ソンドハイムの曲って、実にキャッチーじゃないんだよね。なんであんなに難しいのか。役者いじめだろっつうくらい覚えにくくて難しい。

だけど、とっても美しい。ここが憎たらしい。

キャッチーじゃないと今書いたが、かろうじて観客が一回で覚えて口ずさめるのは「田舎でウィークエンド」ぐらいだろうか。それもこのフレーズのみ。

そんな難しさの極致ともいうべきソンドハイムメロディを楽々歌いこなしていてひれ伏さざるを得んな、と瞠目したのが、栗原英雄(カールマグナス)&木野花(マダム・アームフェルト)のお二人。

『不信〜彼女が嘘をつく理由〜』でぼくは初めて栗原さんを知ったんだけども(遅い!)、以来、数本のミュージカルで彼の本領的歌声を耳にしまして、すっかり好きな俳優さんになっていましたので、今回も出てきた瞬間(出てるのを事前に知らなかったってとこが我ながらすごい←)嬉しさ満点。

そんな栗原さんはともかく、木野花さんの歌唱力がこんなすごいと知らなかったので感服してしまいました。

正直言って、最初マダム・アームフェルトを目にしたとき、木野さんによく似た声楽界からの刺客()なのかと思い込んだくらい。

大変な収穫だったと申せます。



ヘンリック役のウエンツ瑛士。はまり役。うまいなあこういう役。歌も普通に上手だし。

ただ、これ以上の感想は、ごめん、あんまりない。←

そのヘンリックの相手役(フレデリックの“妻”なのに?)のアン役が、しばらく見てても全く誰か分らなくて。

歌は「ボイトレを頑張ったのね」というレベルで、もちろん下手ではなかったんだが、どうにも(演技も含めて)たどたどしい印象。

かといってド新人ていう風にも見えない。

誰なんだ?と思って幕間にプログラム観たら、蓮佛美沙子ちゃんだった。

あのー・・・良い女優さんだとは思ってますよ?映像畑では(また始まった、舞台オタの偏見が)

うーんあのね、映像畑での俳優さんによくある、舞台に立つと、客席から全然顔が見えなくなる(物理的な意味じゃなくて、心理的な意味で)タイプの人のようでした。

存在感が消えるというか。

でも、そういう人でも、何度か舞台に立ってるうちにどんどん存在感が出てくる人も少なからずいるので、侮らず今後も拝見していこうと思う。

今回の作品とは全然関係ないけど、映画『白ゆき姫殺人事件』の彼女はとても素晴らしかった。あの役好きでした。

執事フリートは安崎求さん。彼の舞台もこれまで何回も拝見してますが、今回の役は出番が少なすぎるねえ。もったいない。でも安心して見ていられる俳優さんです。

大人びた少女フレデリカのトミタ栞ちゃん。しっかりした子役プラスアルファという印象。このぐらいの年齢の子はまだ先がわからん。今後を見守ることにいたしましょう。

で、使用人役を兼ねつつ歌唱で場面転換などをつかさどるリーベスリーダーの5人(ひのあらた、中山昇、家塚敦子、飯野めぐみ、彩橋みゆ)が、めっちゃ素晴らしい。

色々なミュージカル作品でよく名前を拝見する方々ですが、本当に歌唱力抜群。信頼と安心のメンバーという感じでした。特に中山さんのハイ・テナーが美しかったなあ。



といった感想。正味、ベテラン(て、どの人以上を指すの?って感じだけど)の安定感に助けられたウェルメイドな作品という印象でした。19年前に同じ作品を観たぼくも、年齢とともに抱く感想が変わってきたのかも知れません。次回上演があるとしたら、どんな俳優さんたちが演じるのか、ぼくがどんな感想を抱くのか、実に楽しみであります。


もくじ前回てくてく次回てくてく
ておどる 【昔書いていた日記はこちら】Kin-SMA放言