てくてくミーハー道場

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2018年04月30日(月) 『1984』(新国立劇場 小劇場)

前半は1本、とか言っといてコレだ。だって急遽行けることになったんだもん(しょっぱなから言い訳)





さて、本作に関しては、悲しいけれどどうしても書いとかなきゃいけないことがあります。

ご存じのように、2月21日にこの作品に出演予定だった大杉漣さんが亡くなりまして、まだエントリしてないんだけど(多分今後もしないと思うが)、この日ぼくはオーチャードホールにいました。

club三銃士『Mon STARS Concert〜Again〜』に行ってました。

奇しくもその日のゲストが井上芳雄君。

開演中は全く知らずにいて、終演後にロビーでスマホを見ていた方が、お連れの方に「大杉漣さん、亡くなったって!」と話していて、周囲の人たちもびっくりして各自確認し始めたあの空気感を、未だに重苦しく思い出します。

芳雄君は開演前に知っていたのだろうか、それとも・・・と、心が痛んだことも思い出します。

その後、漣さんの代役が決まったことが発表され、まさにShow Must Go Onの精神で今作は開演しました。



さて、漣さんの件はまた後述することにして、この作品の概要についてのぼくの個人的な印象から。

「1984」というタイトルからして自明なように、原作の小説『1984』は、それまでにもSFの名作として読み継がれていましたが、1984年に改めて世界中でバカ売れしました。人類って、ミーハーですよね(他人のこと言えるか?)

ぼくはそれより数年前の大学生時代に買ってたんだけど(一応文学部だったんで)、全部読まないうちに挫折しました(情けない)

で、1984年になって再び読み直したんだけど、やっぱり途中で挫折しました(よくそんなんで文学部入れたな)

確か映画も作られたんじゃなかったかな。ぼくは観なかったけど(おい)

で、当時、現実の1984年には『1984』みたいな世界は実現しなくてほっとしたけども、未だにそこへの人類の危険な歩みは続いているみたいな危機感。アメリカでは去年トランプ政権が誕生したのを機に、再びこの小説がバカ売れしたんだって。なんか心配になりますよね。



さて今回の戯曲は、原作小説をまんまストーリーにしたというよりも、原作者オーウェルが描いた1984年がはるか昔に平穏(かな?)に過ぎ去った21世紀の現在から、この作品の世界を俯瞰したような作りになっている。

まだまだ危機は終わってないぞ、という現代人の不安を表してるようだ。

主人公ウィンストン・スミス(井上芳雄)の視点で話は進むんだけど、彼本人の精神状態がまともかどうかが保証されてないので、観客の認知も常時不安定な状態に置かれている。

話が進むにつれ、最初の方の意味不明だったセリフが「あっ、あれってこれのことか」と判る仕組みになっているので、確実に2回観たくなるという、お見事な(感じ悪い褒め方すんな)作劇であった。

2回目・・・行きたいけど・・・(こら)

WOWOWさん・・・お願い(収録してないみたいだなあ・・・)

原作をこれっぱかしも覚えてなかったおかげで(自慢にならん)、ぼくはジュリア(ともさかりえ)も懐疑心満々で観ておりました。あ、ネタばれ。

そらそうとともさか、相変わらずワリバシのように細い。それは別にいいんだが、こんな変な(おい)声だっけか?まあ、主に『金田一少年の事件簿』の記憶しかないんで。あれから何年経ってるんだっつう話だわな。



で、話は冒頭に戻りますが、大杉漣さんが演るはずだったオブライエンを演じた、もともとチャリントン役にキャスティングされていた神農直隆氏。

漣さんよりずっと若い役者さんです。どころか、芳雄君より若いです!

貫禄に感服。

ただ、声(とくに低音)が漣さんに似ていたせいで、「れ、漣さん・・・(涙)」みたいな感情を客に抱かせる結果になったのはいかがなものかと。

無駄に永井一郎さんに声が似ている茶風林さんの波平みたいな。

似ているからこそ受け入れられる、という気持ちと、変に想起させるのって良くないんじゃない?という疑問の間で観ておりました。

神農さん自身の力で素晴らしいオブライエンだっただけに、その辺のモヤモヤが残ったなあ。



他のキャストさんたちに関しては、演技に対してどうこう言えるほどぼくが知識を持っていないので、省きます。

そうそう、子ども役の子、上手でした。プログラム見たらトリプルキャストで、今日は誰だったのか確認してこず、失敗。



それにしてもな、自分は冷静なんだ、他人に思考を制御されてなんかいないんだ、と信じているウィンストンが兄弟愛同盟への忠誠を誓うシーン、ぞっとしますね。

「正しい」って何?と改めて突き付けられた気がします。

すごい名作です。今度こそ挫折せず最後まで読んでみよう(ほんとかあ?)


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