てくてくミーハー道場

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2018年03月24日(土) 砂岡事務所プロデュース『東海道四谷怪談』(よみうり大手町ホール)

マチネ洋装バージョン、ソワレ和装バージョン両方観せていただきました。



マチネ 洋装バージョン

劇団鹿殺しは観たことがなくて、当然丸尾丸一郎の演出も初めてです。

出演者は、潤ちゃん(植本純米とかいう変な名前に変えたのは何故であろう?俳優が改名して成功したためしは/以下略)となだぎ武くん以外知らない子ばっかり。

とにかく、脚本・加納幸和という一点のために来ました。

読売新聞社ビルに足を踏み入れ、客層に違和感。

ほぼ10代から20代の女の子。男激少。BBA(この場合、30代でも当てはまります)も激少。

ヴィジュアル系のLiveか声優イベか2.5次元舞台に来てしまったのかと(正真正銘の)BBAびびる。

プログラムを買って納得しました。出演者がほぼ2.5次元系(というか、仮面ライダー俳優(←そんなジャンルがありますか?)とか、ボーイズアイドルユニットとか・・・おばちゃんもうついていけん/泣)の子たちだったんですなあ。

びびりにびびって開演を待つ。

幕が開いて舞台が進み始めたら、あら安心。←

南北の名調子がほぼほぼ残った美しいセリフの数々。おばちゃんが見慣れた『四谷怪談』の世界が一気に立ち上がっていた。

加納さん、ありがとう。

そして、プロ(って言い方もおかしいが)の歌舞伎俳優でさえ苦労するという難しい南北調のセリフを、この半分素人のような(おいこら)若い俳優たちがきっちりモノにしていることに感心した。

ちゃんとセリフになってるじゃん。すごいな。

潤ちゃんが花組入団1年目なんて、こんなにちゃんと喋れてなかった気がするぞ(こらこら)



ただ、全員が全員良かったかと言えば実はそうでもなく。

良くなかった子の悪口をわざわざ書きたくないので、良かった俳優さんを書きます。

なだぎ氏と潤ちゃんは良くて当然なので除外する。

一番良かったのが、一番良い役なので当然かもしれないが、伊右衛門を演じた平野良君である。

洋装バージョンなので、チンピラみたいな服装の伊右衛門。

小道具は和洋共通らしく、殺陣では日本刀を使っていたが、その剣捌きも見事である。

色悪らしい色気もあった。何より、このお話の中心人物らしさ、主役らしさ(主役はお岩様なんじゃねえかと言われるとアレだが)があり、重畳であった。


次に良かったのが、直助役の桑野晃輔君。衣装のせいか80年代のアイドルみたいな雰囲気だったが、芝居はきっちりしていて、声がハスキーなのがぼく好み。

もともと直助もこの演目の中では“良い”役(悪党なのに)だからなあ。

さすがに大きい役には「できる」子を配役したんだろうな・・・って、他の役を演った俳優さんたちを結局ディスってしまった無神経なあたし(反省)

わっ、桑野君のバイオグラフィー見てたら、ぼく、前にこの子が出てた芝居観てるわ。

・・・すまん。覚えてなくて。(でも、端役(コラ)だったんだもん)


演技力という点では可もなく不可もなくだったが(おいこらこら)見た目一番いい男だったのが与茂七役の白又敦君。

いわゆるイケメンです。与茂七にぴったりだ。髪型(ちょい長めのイガグリ)は「何があった?」って感じだったけど←

イケメンはイガグリでもイケメンつうことで(何故か投げやりな感想)


で、出演者は花組芝居同様全員男子だったので、お岩様やお袖、お梅ちゃんなども全員女方。

この辺は、「女方なんてのは、そう簡単にできるもんじゃねえんだよ」の一言でお察しください(あらまあ)

難しいんだから、しょうがないよね。(釘刺し)

素顔はかわいい男の子たちなんだろうけど、化け方の基本がなっとらん(ずけずけ)から、しょうがないよね。

ぱっと見、背が低くて顔がかわいかった今川碧海君(お梅役)も、セリフを発したとたん「え?!」(声が思いっきり低かった)

あとは・・・(悪口は言わない!言わない!)


あ、ほめよう(無理しなくていいんですよ?)

いや、無理してない。お梅の乳母・お槇役他の土倉有貴君。芝居がこなれている。花組芝居にいてもおかしくない。

バイオグラフィー見たら、ぼくがよく行く商業ミュージカル畑の俳優さんなんだ。認識してなくてごめんなさい。次回出演作『GHOST』観に行くから、気を付けてみるね。



さて、感想は内容についてになりますが、歌舞伎なら昼の部夜の部通しでやるくらい長々としたこの演目を、休憩なし2時間半にぴしっとまとめてしかも過不足がない(「夢の場」まで出てきたことにびっくり!)ことに驚嘆。

ラストシーンは花組の『いろは四谷怪談』並みのロマンチックさだったし(ただ、あそこでお岩様がすすり泣くのはぼく的にはどうかなーという感じ)、今回のお客様たちへの吸引力はあったと思う。

加納の手練と、丸尾の演出力のなせる業であろう。

若い観客には、これぐらいのスピード感じゃないとダメなんだろうな。てか、年寄りこそ長い芝居は体力的につらいので、これには感心した(マチソワできちゃったぐらいだもんね)

もともと花組芝居もスピード感が売り物なんで、かつて花組を観た翌週に歌舞伎座に行ったりしてると、芝居のスピード感のあまりの違いにぶっ倒れそうになったこともある。

「歌舞伎を若い人に観てほしい、とか松竹や役者たちが盛んに言ってるけど、『若い人に観てもらう』工夫をお前たちがしてないんじゃないか」

と、思ったものだ。当時はぼくも一応「若い人」の部類だったので。

ただ、単純に話をはしょるだけ、話の展開を早くするだけではスピード感があるとは言わない。歌舞伎には歌舞伎たる「コク」がどうしても必要だし、古典は古典で残していかなきゃならないし。

こういうところにヒントがあるんじゃないかと思いました。





さて、洋装バージョンに結構感心したので、和装バージョンならもっと世界観に入り込めるかな、とソワレ 和装バージョンを観劇。

これがね。










(出た。必殺「行空け作戦」)










そうだった。

出演者、若いんだった。

ほぼ平成生まれなんだった。

(いや、昭和中盤生まれのぼくでも、自分ひとりで着られるのは、教則本と首っ引きで小紋が精々なんですが)

なので、和装バージョンでは衣装が全滅。特に女方の着付けがひどく、がっかりがひどかった。

そもそも衣装の色味や素材自体がひどいので、形にもなってないからしょうがない。

衣装の色味や素材が粗末なのは花組芝居も変わらんけど(こら)、役者がきちんと着こなしているからまだ見られる部分があるのでね。

むしろ立役の方々のほうが、ちゃんと着てた。男のまんまでいられるからその点楽だったのかも。





ともあれ、若い役者たちがこの難しい芝居に一所懸命に挑んでいたことは称賛に値します。

半端な気持ちで演ると「たたり」が怖いからねこの芝居は(そゆこと言うな!)

いやいや、見たところ無事千穐楽まで無事故だったみたいだから、お岩様も彼らの真摯さに感心したのだと思うよ。

公式サイトを見ると、伊右衛門を演じた平野君も於岩稲荷(田宮神社じゃなく陽運寺の方)にお参りしてるみたいなんだが、おいおい(汗)

※『四谷怪談』を上演するときは必ず四谷の於岩稲荷を出演者スタッフ一同がお参りするのがルールなのだが、伊右衛門役者はとりつかれるので()参らないのがならわし

ま、時代は進んでいる←

かたいこと言うなってか。

(適当な終わり方すんな!)



当公演の出演者たちの今後の作品に出合うことがあれば、それぞれに注目していきたいと思いました。


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