てくてくミーハー道場

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2017年10月21日(土) シアターコクーン・オンレパートリー2017『危険な関係』(Bunkamura シアターコクーン)

特に好みの役者が出ているわけでもないのに(いきなり暴言)観に来たのは、やはり題材に惹かれたからであろう。

ヅカオタには『仮面のロマネスク』という意味不明な(いちいち一言余計)タイトルでおなじみの、ラクロ原作のスキャンダラス愛憎劇である。

『仮面のロマネスク』が初演されたときに、一応観てみっか、と思って1988年製作のハリウッド版映画を予習したのだが、正直内容が全然理解できず、グレン・クローズおばちゃんがコワイヨー()という感想しか抱かなかった。

そんで、怖々(おい)ヅカ版を観たら、こっちは柴田侑宏先生の真骨頂メロドラマで、すっかり間違った印象がぼくの脳裏に刻み込まれてしまったのであった。

今回、スミレコードを取っ払った「ほぼ原作どおり」のものを観て、ぼくは正(まさ)しく正(ただ)しく理解した。

ヴァルモン、こいつはまごうことなき ゲ ス であると。Σ( ̄□ ̄;)またコレ字がデカいっすね・・・



いやー、ゲスだった。(なぜか嬉し気)

こんなゲスを主演男役にやらせて、しかも女性客たちをうっとりポーッとさせるんだから、柴田先生はやっぱスゴい。

まあ、実は今回の脚本も、そんなゲス野郎がゲーム感覚で“鉄の処女”(人妻だけど)を堕としたはいいが、いつの間にか本気になってしまって身辺をちゃんと管理しなかったせいで、侮っていた若造に法的に正しい手段で殺されてしまう、という(思いっきりネタばれ)本人的には悲劇的な結末ではあったのだが、観客からすると100%自業自得。

ただ、(好みでないから暴言グサグサ)玉木宏の芝居力がその脚本に追いついてなくて、

「ゲス野郎が本気になってしまったがゆえの悲劇」

がいまひとつ伝わってこなかった。

もし「本気になってしまった」ところが充分に伝わってきていたら、ヴァルモンの身に起こった悲劇にこちらもある程度同情できていたと思うのだが、少なくともぼく自身はそうならなかった。残念です。

「稀代のプレイボーイが本気になってしまって破滅する」って芝居を、日本人男優でできる人っていんのかな?とふと考えてしまったのだけど、ぼくあんまり俳優知らないからなあ。

さて、ディスったおわび()に今度は褒めますが、玉木宏、カッコよすぎて○んでほしい(不穏当発言!)

誤解しないで!(?)美しすぎて散る役があまりにも似合ってた、って意味ですよ。

もともとモデル(※)だったんだよね、この人。「こういう肉体こそ『美』と呼ぶのですよ!」てな主張満々の体つき。

※なぜか思い込みでこう書いてしまいましたが、そのような事実はなかったようです。玉木氏は最初から俳優でした。くっそう(←?)スタイル良すぎやがって(怒り()のあまり正しくない日本語)

長すぎるくらいに長い腕と脚、贅肉ゼロの胴体。小さなお顔、精悍な目鼻立ち。

嫌いだ、こういうやつ(←主観!)

性格悪いに決まってるもの。(←主観2!)

・・・そういやミタライの続編はどうなっ(今それは関係ない!)


うーん、唯一残念だったのは、やはりトゥルヴェルに「謝る!最初は確かに遊びだった!でも本気になっちゃったんだ!ほんとだ!」と切々と訴えるところ、いまいち伝わってこなくてなあ。

こういういい男が言うことは頑なに嘘だと思ってしまうぼくの偏見の方に問題があるのだろうか。

でも、できそうな俳優がどこかにいそうな気がするし(さっきと言ってる事違うぞ?)



名前が出たからトゥルヴェルの話になりますが、今回も例によって玉木宏と鈴木京香以外の出演者をnot予習で行きまして。

コクーンの二階席からぼくの視力では顔は全然見えませんで。

全身スタイルと声だけでその役者の力を判断する、という手法で今回も臨みました。

で、しばらく“知らない女優さん”状態で観ていたのと、ヅカ版とトゥルヴェルの性格もちょっと変わっていたのとで、最後まで誰だかわからない状態でした。

終演後にプログラム開いてびっくり!

(野々)すみ花でしたの!?

声が現役時代と全然違うじゃないか!

退団後のすみ花の芝居には、毎回意表を突かれる。これはけっこう嬉しいことである。

なにせ現役時代にはメルトゥイユを演じたすみ花ですから、この作品には出演者中随一の薀蓄?がありそうなもんだけど、演出家からしたら、それは邪魔なのかな?

ぼくの道徳観では、トゥルヴェルはヴァルモンに陥落させられて寝たあと(言葉が直截的!)、自分がヴァルモンとメルトゥイユのゲームのコマになってたのを知って自殺すんのかな?と思ってたんだが(ピストルを拾って退場するシーンがそんな感じだった)、結局ここでは死なないのね(ネタばれ2)

ヅカ版ではどうだったんだっけ?(覚えてないのかよ!)

ところでこれは演出家への疑問なんですが、トゥルヴェルが登場する前にヴァルモンとメルトゥイユが彼女のことを「顔以外は1ミリだって肌を見せない服着てるガチガチのつまらん女」ってボロクソ言うシーンがあるんだけど、実際トゥルヴェルが出てきたら、なんとベアトップのドレスだったという。一番露出多かったという。

こういう皮肉っぽい演出がけっこう随所にあって、なかなか面白かったです。

第二幕の幕開けにヴァルモンが悩ましげな息遣いをしてる音で始まるんで、観客が大いに期待()していると、実はルームランナーで走ってた、みたいな。

そうそう、今回この作品、どういう演出になるのかも楽しみだった。

映画版やヅカ版みたいに18世紀風俗をまんま再現するのかなあ?女優たちのドレスさばき大丈夫かなあ?男たちの白タイツ姿、大丈夫かなあ?みたいな。

そしたら、服装は現代風(といっても、女性たちが着ているドレスの生地は西陣ぽい和洋折衷)。小道具も今風。そして、イギリス人演出家ならではなんでしょうか。大道具が「That's日本の金持ちが住んでるお屋敷風」

わかる、わかるよ。その気持ち←

日本の大金持ちが住んでそうなお屋敷の方が、いまさらロココ調セットにするよりずっとアッパーに見えるよね。

出てくるやつら、みんな金持ち、金持ち、金持ち・・・ダンスニーだけ貧乏人(年収300万円台レベル)ぽいのが直感的に分かる感じ。

ガイジン(雰囲気を出すためにわざとこう書きます)が日本を見るときのセンスだね、あれは。感心しました。





話がとっちらかってて全然まとまりませんが、とりあえず書きたいことは書きました。(えっ?嘘・・・)

はい、ごめんなさい。鈴木京香さんについて。

悪女似合うね。すがすがしいほどにカッコいい。

この話は最終的にはメルトゥイユに同情してほしいのかなあ、ちょっとそこはわかんないんだけど、同情するなんて失礼じゃないのか?ってくらいカッコいい“悪いおんな”っぷりでした。

そこが正解かどうかはわかんないけど。

グレン・クローズ版ともヅカ版ともオチ()が違うからねえ。

むしろ、ヴォランジュ夫人(高橋惠子さん、好演!)のいけ好かなさや、ロズモンド夫人(新橋耐子さん、これまた大好演!)のしたたかさの方がくっきり印象に残ったかな。

セシルとエミリーについては・・・うーんと(女の登場人物への関心が薄いねえ相変わらず)

そして今回こういうオチで観てみて、やはりヅカ版はオンナコドモ向けだったんだなあ、と思わずにはいられない。いや、宝塚はそれでいいと思うんだけど、原作者はもっと違うことを訴えたかったんだねえ、と知れたことが良かった。



今回の脚本は件の映画版と同じクリストファー・ハンプトンのもので、彼はぼくがディカプリオ主演作で一番好きな『太陽と月に背いて』(邦題は正直ダサ/略)の脚本を書いた人でもある。

なんか、日本的な機微とか深謀遠慮とかあんまりない感じの脚本家だなあと(全然ほめとらん)

そういう日本ぽさゼロのストーリーに日本ぽさ満点のヴィジュアルってのが、今回一番ぼくに刺さったところでありました。


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