てくてくミーハー道場

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2017年10月09日(月) 『人間風車』(東京芸術劇場 プレイハウス)

基本的にホラーが嫌いなぼくは、この作品、観るチャンスは何度かあったんだけど意識的にスルーしてきました。

大きな上演というところでは、2000年と2003年に上演されていて、その時の出演者を見るともう「なんで観ておかなかったのか」と今さら後悔必至のメンツです。

しかも演出・G2だし。

でも、とにかく観てこなかった。

で、なぜか今回は観ようと思った。

そしたら、演出が総代(河原雅彦)に替わってる。

これはイヤな予感(つま××そうという意味ではなくて、グロさ倍増しそうという意味)しかしない。

その予感は見事に的中。

でも、観たことに一片の悔いもない!(ラ▽ウですか?)

プロレスネタについていけてないところが若干残念だったけど、別にそれは知らなくても内容を咀嚼する上で何の影響もございませんのでご安心ください。

でも、知ってたら2倍は面白かっただろうな、と思います。





観た後で(プログラムを読んで)知ったんだけど、今回脚本がさらに暗黒化パワーアップしてたらしい。

実は観ながら、

「ここで終わるのかな?」

っていうシーンがいくつかあった。つまり、「オチ」にふさわしい感じの瞬間が何回かあったのだ。

でも、終わらなかった。

そして残酷場面がとつとつと続いていく。

途中から、「これ、どうやって収束させんの?」と心配になった。

それにはちゃんと答えがあったので、不満はなかったのだが、以前の脚本だと、もっと「ああ良かった。でも・・・悲しいね」みたいな終わり方だったらしい。

それが、今回はとことんまでやっちまってから終わらせる。

そしてオマケがつく。



ぼくの感想も、ネタばれしたくないせいで何言ってるかわかんない感じになっている。

困った。

ただ、「休憩なし2時間35分」という貼り紙をロビーで見て青ざめてしまったぼくが、結局その時間を一瞬も退屈することなく過ごせた、という、送り手側にとっては最大級に嬉しいであろう感想を書き留めたい。

あと、今回も例によって出演者の予習をせずに行きました(唯一の例外:加藤諒)

途中で「あ、この人出てたのね」と気づいた人もいたのだが(なんせ顔が判別できない視力のまま観てるんですいつも)、びっくりしたのがラチ君(良知真次)と矢崎広君。

奇妙だったのは、矢崎君に対するイメージががらっと変わってしまったこと。

こんなに背、高かったっけ?

共演者との比較のせいかな?

性格が軽ワルいギョーカイ人(小杉)の役だったけど、以前からぼくが矢崎君に抱いていた「いまいち完全二枚目になれない男」色が全然なくなっていた。

やってる役でイメージが変わっちゃうって、ぼくも単純ですね。

ラチ君に関しても、これまた逆で、今回の役(国尾)はなんだか小者臭漂う役。

この二人、(ここ、すごいネタばれですよ)ものすごいえげつない殺され方をするんだけど、それも仕方ないのかなー(お、おいおい/大汗)というキャラだった。

観客に一筋の同情もされないような役を、こういうイケメン俳優にさせちゃうあたり、今回の制作陣もえげつないっすねー(そこ?)

ただ、ここがぼくが今回一番感心したところなんだけど、サムを加藤諒にやらせたことによって、目をそむけたさ度が少し緩和されていたような。

以前の上演では、阿部サダヲと河原雅彦が演じていたそうで、想像するに、

「ああそりゃー怖かったでしょうねえ(メンタル的な意味で)」

という感じ。

だが、加藤諒だとちょっと雰囲気が違ってくる。

この芝居、平川の話を喜んで聞いている近所の子供たちも大人の役者が演じているので、「この人は10歳設定」みたいに想像力を働かせながら観る必要がある。

そこに、「異様な大人」というテイでサムが登場するんだが、ぼくは最初彼を「見慣れない子供」なのだと勘違いしてしまった。

あら、ほめてない。

そうなの。サムは登場シーンで「なんか、普通の大人じゃないっぽい」という雰囲気を出さなきゃいけないのだが、そうではなかった。そこが唯一、残念だった。

サムが自分を31歳だと言った時点で、やっと「あっ、そういうことなのか」と理解した。

そこからは、良かった。

つまり、加藤君が演じるサムは、一見大人なのか子供なのかわからないところが、サダヲちゃんや総代がそうだったであろう(観てないのに勝手に決めつけたらダメだけど)ような、

(元から)「異常殺人を犯しそうなアブなそうな男」

という感じではなくて、

「何かに操られて無邪気に残酷なことをやってるコドモ(チャッキーみたいな)」

っぽかった。

なので、この作品の大事なところ(本当に事件を起こしているのは平川)がブレずに済んだのではないかと思っている。

しかしまあなんつうか、説教臭い感想で申し訳ないけど、ぼくはこの芝居を観て、

「復讐のための殺戮って、空しい以外の何モノでもないなあ」

と思ってしまった。

だって、気が済まないでしょ、結局。

ぼくだったら、国尾は生かしとくなあ。

いくらでも搾り取れるでしょ、これから。

あんだけ他人の優位に立てる事態を、殺すことでむざむざなくすことないのに。(し、真実恐ろしい人だ、あんたは/震)


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