てくてくミーハー道場

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2017年04月30日(日) SHATNER of WONDER #5『破壊ランナー』(六本木ブルーシアター)

この作品の二演目(1994年)をNHKで放映しているのを視て一目ぼれしたのが、惑星ピスタチオにはまったきっかけであった。

実際に生の公演を観ることができたのは『Believe』からだった気がするのだが、記憶があんまり定かではない(まだ佐々木蔵之介や平和堂ミラノ、いちいりえがいた時代だったのは確か)

ああ、こんな時に「おかたづけユニット」(観た人にだけわかるネタ)があったらなあ、六畳間に積まれたっきりの段ボールの山の奥深く眠っているぼくの「パンフレットコレクション」が見つかればすぐ観劇記録が判明するのに(捨てるぞ! by つれあい)そ、それだけは・・・(縋)





小芝居はこんぐらいにして、やはりこの『破壊ランナー』、まごうことなく傑作である。

劇団の最後の上演(三演目)から早くも18年が経ち、役者もがらりと変わってしまった(劇団自体がなくなったのだから、当たり前なのだが)のだが、脚本自体が持っている胸熱くするロマンと演出のスピード感壮大さは全く失われていなかった。

むしろ、2.5次元モノ全盛の現代だからこそ、西田シャトナー作品の、マンガがそのまま三次元に立ち上がってきたような大袈裟感()が、何の違和感もなく表現できるのかも知れない。

あとやっぱり、シャトナー作品のコレ系(パワーマイム系)は、若い役者じゃないとかなりムリ(おいこら)

いや、そうでしょ、実際。

特にこの『破壊ランナー』なんて、登場人物は舞台の上にいる間ほぼ走り続けてる(動きをしている)んだから。

役者自身が舞台の上でずっと走り続ける、しかもそれを映像を一切使わずに(ここ、現在多用されている演出法への一種のアンチテーゼのようでこの辺も好き)距離感とスピード感を表現する、ピスタチオ手法。

ストーリーに筋が通っているからこその、途中のくだらなさ満点のギャグも効いている(上の方で書いた「おかたづけユニット」とかロボット大戦とかのくだりは相変わらずくだらなくて爆笑だった)

そして、今回BBA客のぼくが一番びっくりし盛り上がった(そして若い客にはほとんど効いてなかった←オイ)のが、保村大和の登場であった。

この作品で一番キャラが立っているといっても過言ではない黒川フランクを初演再演三演で演じていた保村。

フランクの登場シーンのインパクトは未だにぼくの脳裏に焼き付いていたので、今回フランクを演じた兼崎健太郎に、ちょっと物足りなさ(あれでも?!)を感じていたところに、その上役として保村の登場。

思わず「ブホッ」となってしまったのだが、周囲の席のお嬢さんたち、無反応(哀)

まあいいや、BBAのぼくだけ盛り上がれば。

と開き直ったのだが、ここでダメ出し。「中央郵便局」のネタ(アドリブ?)は、二ネタ三ネタ事前に用意しとけ。

あんまり面白くなかったぞ(古株ぶってきついお言葉)

そういや、惑星ピスタチオは元々ごく少人数(客演を入れても10人未満)でやっていた劇団なので、どの作品でも一人の役者が二役三役やるのが当たり前で、そこがストーリーをわかりづらくしていた部分もあるのだが、今回は過不足のないちょうど20名での上演。それでも一部の役者たちは二役三役をやっていた。ただ、メインの役を兼ねていなかったので、わかりづらさはぐっと減っていた。

ただ、女優がいたピスタチオと違って、今回は男優ばかりの上演で、登場人物もすべて男(ブルーナイト?だかの妹ってのが出てきたが一瞬だけ)

以前は豹二郎とリコ(以前の役名は「リンコ」)の関係はチームメイトにして恋人同士だったのだが、今回はコーチとランナーという関係になっていた。その分人情劇(?)的な部分は消えたが、2.5次元演劇を好む客層には、むしろその方が良かったのかもしれない。

もちろん、そういう客層に合わせていたからって腐的関係の要素は全くなく、あくまでも作品のテーマは「人間が『限界』を超えるということ」

このテーマに絞っていたからこそ、すっきりと観られたという気もする。



そうなのだ。今回、ぼくが以前にも増してこの「人間が『限界』を超えるということ」というテーマに深く感じ入ったのは、18年前と違って、とあるスポーツ競技に対して、単に「見てて美しいから好き」という意識から、「人間の身体能力の限界」を感じとるような見方をするように進化したからなのだと実感する。

人間は、どこまで生身のまま進化できるのか。

そういうことに対してロマンを感じられるようになったからこその、新しい感動だった。

ウサイン・ボルトは、たぶん2020年に7.7秒で100メートルを走り抜けることはできないだろう。

でも、2020年、ボルトは今よりももっと速く100メートルを駆け抜けるかもしれない。

そして何年後かわからないけど、その人類最速記録は、いつかは誰かが更新するかもしれない。

いや、どうだろう。(ん?)

一体“どこまで”人間は進化し続けられるのだろう。

その“限界”はどこにあるのだろう。

四回転アクセルを世界で初めて跳ぶのは誰になるのか。(あ、やっぱりそっちの競技?)

五回転ジャンプを跳ぶ選手はいつ現れるのか。

それとも永久に現れないのか。

生身の人間が音速を超えて走るなんていうおもいっきりバカバカしいことを描きながら、観客にこれだけのワクワクを抱かせる名作『破壊ランナー』

スポーツ観戦と舞台鑑賞って、やはりどこか通ずるものがあるよな。

音楽のLiveもそうかもしれない。

あまたあるエンターテインメントの中で、経済的に一番割に合わないのがこういった演劇なのが哀しいところ(オイ)だが、こういった良作は永く続演してほしいものである。


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