てくてくミーハー道場
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2017年04月25日(火) |
白い伝説の星降る夜(スワンダンス) |
「スワンダンス」って言葉は実際ありませんが、「スワンソング」という有名な慣用句があり、その意味は、
KinKi Kidsの29枚目のシングルのこと
ではなくて!(←なぜ怒る?)
Led Zeppelinが設立したレーベルのこと
でもなくて!(←天丼)
「白鳥は死の間際に生涯一度だけ超絶美しい声で鳴く」という伝承(実際には白鳥(主にオオハクチョウを指す)は常日頃からクワックワうるさく鳴くざんすが)から、「一世一代の偉業(名演)」を指す時に使う言葉です。
まあ、上の二つもこの伝承を踏まえてのネーミングだと思います。ちなみにぼくは、KinKiさんの新譜のタイトルが「スワンソング」だと知った当初、ラストシングルになるのかと思って密かにびびっていたのですが、そんなダブルミーニングはなく、ホッとしたものでした。
閑話休題。
かように、優雅に水面をたゆたうその姿から、白鳥は昔から「この世のものとは思えないほど美しい」ものに例えられてまいりました。
フランスの作曲家シャルル・カミーユ・サン=サーンスが作曲した有名な曲「白鳥」(「動物の謝肉祭」より)は、ピアノ2台の伴奏に合わせてチェロで奏でられるその旋律が、いかにも白鳥の優雅さを表現しており秀逸ですが、この曲といえば、ロシア人バレエダンサーであり高名な振付師でもあったミハイル・フォーキンが不世出のプリマ・バレリーナであるアンナ・パブロワに振り付けた「瀕死の白鳥」が極め付きであります。
前置き、長ぇ!(←自己ツッコミ)
(もうちょっと前置きあるヨー)この「瀕死の白鳥」はあまりにもパブロワの当たり役過ぎたので、彼女の現役時代はもちろん、1931年に彼女が亡くなった後も他のバレリーナたちが踊るのを躊躇して長いこと封印されていたが、後にこれまた不世出のプリマ・バレリーナ・アッソルータであるマイヤ・プリセツカヤが、違う振り付けではあるが「瀕死の白鳥」という演目を復活させた。彼女は何十回と日本に来てくれたし、その演技は映像としてたくさん残っているので、バレエに造詣の深くないぼくでもいくつか視たことがある。
「優雅」って、こういうのをいうんだな、と、いたく感動したものである。
そして、プリセツカヤが亡くなった約1年半後(やっと本題)の2016年10月30日、カナダ・ミシサガのハーシーセンターの氷上に、新世紀エヴァ・・・間違えた(わざとらしいぞ)、新世紀の白鳥が舞い降りたのであった。
その名も「Notte Stellata(The Swan)」Performanced by Yuzuru Hanyu
今シーズンの羽生結弦選手のエキシビションナンバーである。
あーここまで長かった(前置きが)
新世紀の白鳥は、なんと両性具有であった(違う!違うぞ・・・一見(コラ)そう見えるが、違う/戒)
まあ、初めて観たときはびっくりしましたわね。
衣装にじゃないよ?(そう言ってるようなもんではないか)
いや、衣装はまあ、「羽生君だな」とは思ったけど、別にびっくりはしてません。背中のVラインはちょっとすごいな、羽生君しか着れないな、とは思ったけど(やっぱそう思った?)
そうじゃなくて、プログラムそのものにびっくりしたの。
スケオタ界隈では、「これでエキシビションのプログラムを作りなさい」と曲を提供してくれたのがタチアナ・タラソワだというビッグなエピソードとか、久しぶりのデヴィッド・ウィルソン振り付けだとかで盛り上がったわけだが、ぼくはニワカなので特にそういうのはピンと来てなくて。
ただ、高速ツイヅルとかクルクル連続ループとか(今季のフリーではちょっと長さ的にムリが見えた)のびのびとしたレイバック・イナバウアーとか、キャメルスピンからビールマンスピンからパンケーキスピンのシルエットはまさに白鳥で軽くリンク半周レベルのハイドロブレーディングとかイーグル3連発とか、ゆっくり両足で弧を描いていく(あれ、真上から見てみたい)ステップとか、全然ジャンプしないで(なのにウットリ見ちゃう)じらしたかと思ったら、べっくら特大のディレイドアクセル! そしておもむろにトリプルアクセル!
と、“羽生君で見たい技大募集但しジャンプ以外に限る但しトリプルアクセルはOK”をまとめて美しく組み立てました的なプログラム。
改めて、ウィルソンすげえ。
ただちょっとだけひっかかってるのが、今季試合でのトリプルアクセルの成功率100%(※)の羽生君が、このプログラムではなぜか毎回トリプルアクセルの着氷が不安定なのが気になる。あ、NHK杯ではきれいに降りてましたが。
※すっかり(わざとじゃないよ)忘れていたが、国別対抗戦のフリーで最後のトリプルルッツの代わりにトリプルアクセル跳ぼうとして失敗してたんだった。これが今季の羽生君の試合での唯一のトリプルアクセルの失敗であった。
なのでそのせいなのかトリプルアクセルの後にやることが毎回違っているのもこれまた面白い。
ひっかかるけど面白い←
国別対抗戦のエキシビションではイーグルから跳んだりして羽生君自身遊んでるのも面白い。
そしてぼくが今回一番びっくりしたのが、このトリプルアクセルからラストのスピンに移るところで、後ろ向きに片足でずーーーーーーー(長いな)−−−っと滑っていくところ。
え? 何にもやってないのに何で止まっちゃわないの?(そこがワザというものだ)
要するにこのプログラム、優雅にゆらゆら滑ってるだけに見えて、その実いかにやってる本人の技術がすげえかを見せ付けるプログラムだってことがわかる。
アンナ・パブロワが、そしてマイヤ・プリセツカヤが舞台の上でやったことを羽生結弦に氷の上でやらせている。
ウィルソンすげえ(2回目)
まさに氷上のフォーキン(おっ)
見たかロシア人(あ、あの・・・そもそもタラソワ先生が発端なのでそういう失礼は/汗)
あ、すみません。タラソワ先生、本当にありがとうございました。
この楽曲「Notte Stellata(The Swan)」(邦題「星降る夜(白鳥)」)は、イタリアの人気ヴォーカルグループIL VOLOが歌っているとのこと。メロディはサン=サーンスの「白鳥」まんまなのだが、歌詞が聴いてびっくり(なぜ)ベッタベタのラブソングである。
その辺りも勘案しつつこのプログラムを観るとこれまた一興。
白鳥に姿を変えたゼウスがレダを誘惑したというギリシャ神話なんかも連想されて(羽生君をスケベなおっさん神ゼウスに例えたりしたらある方面の怒りを買いそうだが)またまた一興。
途中、羽生君が何かを抱き上げるようなしぐさをする振りがあって、そこもまた意味深でグッとくるのですな。
まあ、「レダと白鳥」ならぬ「羽生君と白鳥」といえば、本人も明言しているとおり、羽生君にとって“白鳥”というモチーフは東日本大震災の記憶と切っても切り離せないもの。
2010-2011年のシーズンにショートプログラムでやっていた「White Legend」はチャイコフスキーの「白鳥の湖」をヴァイオリニスト川井郁子さんがアレンジして弾いていた楽曲で、震災が起こる前に競技プログラムとして滑っていたときには、15-16歳という早熟シニアデビューの羽生君の、いたいけさあどけなさが前面に出ていたのではないかと今頃想像している(なんせ当時を知らないので、映像で見るしかない)
ハンス・クリスチャン・アンデルセンが「みにくいアヒルの子」と表現した白鳥のヒナは、人間から見ると全然醜くなんてなくすっげ可愛いんだけど、羽色が灰色なのでそういう意味ではちょっと地味。
お習字の練習半紙をつなぎ合わせたみたいな墨汁が滲んだような(こら!あれがかっこいいの!)衣装で「White Legend」を滑る羽生君は、もちろん当時から神童だったのだけどシニアとしてはやはりまだまだ未熟で、だけどキラキラ光るものを持っている選手で、もしぼくが当時からスケオタだったら、絶対思いっきし入れ込んでただろうなーと思わせる。
ナニかこう、必死に天空に向かって羽ばたこうとしている姿が印象的だ。
震災の後にエキシビションで滑ってたからとか関係なく、「がんばれ」「がんばれ」と言いたくなるプログラムなのだ。
これがショ○心をそそられずにおられようか。(や、やっぱりそっち/汗)
そんないたいけだったヒナが、いまやこんなに美しく色っぽくなっちゃってさ(←なぜか不満気)
何が「君はもう僕を愛している」(「Notte Stellata(The Swan)」の歌詞)だーーーーーー!(お、落ち着いて/大汗)
・・・ぜえぜえ。
とまあ、すっかり成長した白鳥にフクザツな感情を抱きつつも、こうなったらいっそ鳳凰にでもフェニックスにでもなってほしいと(「火の鳥」はジュニア時代にやってたけどネ)大いなる期待を寄せてしまうことであった。
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