てくてくミーハー道場
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2016年05月11日(水) |
『8月の家族たち』(Bunkamura シアターコクーン) |
“端役”が一人もいないという、ステキな作品でした。
もちろん、そういう芝居はほかにもあります(今パッと思いついたのは、『かもめ』とか)
その、“みんなが大事な役”の中でも、やはり中心となるのは、
母=バイオレット=ターコさん(麻実れい)
長女=バーバラ=秋山菜津子さん
次女=アイビー=常盤貴子 ←よ、呼び捨て?(映像畑の俳優にはよそよそしいアタイ)
三女=カレン=キム(音月桂)
の、4人の烈女()たち。
ある意味、演出のケラさん得意(?)の「三姉妹モノ」というわけで。
でも、“三姉妹”だけでも手に負えない()のに、そこにさらに輪をかけて手に負えない“母”が加わって、大変な世界であった。
なにしろターコさんですもの←
次元が違います。←羽生君?(コラ)
軽口はともかく、客観的に見たらトンでもなく問題が山積してる一家なんだけど、メンバー同士のバトル(?)っぷりがスゴすぎて、思わず笑けてしまうというか。
他人事(つうか、まぁ、お芝居)だから笑ってしまうんだろうけども。
この辺も何となく『かもめ』っぽかった(実はぼく、チェーホフ×KERAの『三人姉妹』は観てないのだ。去年放映された舞台中継の録画はあるんだけども)
いわゆる“毒母”に育てられたバイオレットは、ちょっと前に社会問題になった(話題的には古くなったが問題自体は現在もあるんだろうけど)アダルトチルドレンそのもので、自分の娘たちに対しても夫に対しても、それこそ自分自身に対してもまともに向き合えない女。
こう書いちゃうとすごく悲惨な感じだが、ターコさんがあまりにも豪快に演じるので(≒KERAが演出するので)何となく爽快に感じてしまうというアワワな事態。
そういう母親と40年以上付き合ってきた娘たちにしても、バーバラはバイオレットに(本人はいやでたまらないだろうが)瓜二つで、夫に浮気される(+娘を育てることに苦戦している)ところまでそっくり。
バイオレットを完全反面教師視して堅く地味に育ってきたアイビーは、結局この家族の“不始末”の犠牲になるし、いかにも末っ子らしくちゃっかり生きてきたように見えるカレンにしても、この一家の“呪い”(大袈裟)から逃れられない。
いやー皆さん災難ですな。
なんて、無責任な感想でごめん。
ここまで不幸の連鎖を描いてたら、昔の演劇だったらのっしりと重すぎて暗ーーーい気分で家路に着かなきゃならなかったんだろうけど、そこは21世紀のエンゲキ。
上にも書いたように、なぜか爽快感(というかギャグ感?)すら漂う不思議。
本当はチェーホフも『三人姉妹』をこんな風に「ありえなさすぎて笑えるんですけど!」みたいに描いてたのかも知れない。っていうのは、井上ひさし先生の『ロマンス』を観て思ったことであります。
出演陣については、ターコさんや秋山さんの豪快さがまずストレートにすごい。
犬山イヌコさんと木場勝己さんのエイケン夫妻もうますぎて。
日本人が演るとこっぱずかしくなるような気障さをあっさりクリアしてしまう(橋本)さとしーもさすがだなあ。
あたりは普通の感想になってしまったんだけど、今回ぼくが一番感心したのは、周囲の人間たちにはまったく“さえない100%”だと思われているリトル・チャールズを演じた中村靖日。
彼のことはぼくは『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』で知って、このドラマでも彼の見かけどおりの“弱っちい”太田先生をやってたし、ほかのドラマとかでもたいてい気の弱〜い役を多く演ってると思う。
見た目まさにそんな感じの俳優さんなのだが(その“見た目”を逆手にとって、「実は・・・」みたいな役も時々やっている)、今回演じたリトル・チャールズも、おおよそはそのとおり。だけど、彼が“実は恋仲”のアイビーと二人きりでいる場面ではびっくりするような二枚目ぶりで、おばさん思わず刮目してしまいました。
ホント、ふっつーにイケメン。
カッコ良かったわあ。
映画(2013年にアメリカで制作)ではベネディクト・カンバーバッチが演じたとか。
・・・つっても、映画に疎いぼくには「カンバーバッチって誰?」状態だが(←)
気が向けば、あくまでも気が向けば()、そのうち観てみようかと思います。
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