てくてくミーハー道場

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2014年02月10日(月) 『ザ・ビューティフル・ゲーム』(新国立劇場 小劇場)

この作品、ずいぶん前に櫻井翔主演で上演されてなかったか?



ぼくの記憶は正しく、2006年3月に青山劇場で上演されたのが日本初演だったようです。



自他ともに認めるジャニオタのぼくですが、嵐メンバーの舞台は、『ウエストサイド・ストーリー』以外、一つも観たことがないのはわざとではなく、激戦チケット争奪戦に参加する熱意が薄いから(それを「わざと」って言うんじゃ?)なのですが、この作品も結局観逃がしています(あっ、『理由なき反抗』は観た! ごめん忘れてて)



で、今回は、日本のミュージカル界を牽引するピチピチ20代の俳優たちがこぞって出演するというので、早速チケットをゲット。





(ご注意:以下、寂しくも景気の悪い流れになります)

コヤが「小劇場」? 何かの間違いでは?・・・と思ってたら全然間違いではなく、初演が青山劇場だったことを思うと、いささかスケールダウンの感は否めない。



あまつさえ、そのキャパが今回埋まっていな(いえ! 決して不入りなのではありません!←はっきり書くな!)



青山公演の時みたいに巨大資本が動いてないと、こんなもんなんですかね。メジャー芸能事務所の力でしょうかね。こういうパワーゲームみたいなのが大嫌いよおばさんは!(←なぜキレる?)



しかし、実際に観て思ったんですが、この作品、そんなにオンナコドモがわっさわっさ押しかけるような内容じゃないんだよ。ぼくは今回、キャストもだけど、ロイド=ウェバーの曲だってのに惹かれて観に行ったわけなんだけど、彼の他のヒット作品に比べると(今回のバンド編成のせいもあったのかしらんが)いまひとつエモーショナルさに欠けると申しますか、「これ名曲だなあ」てな曲が見当たらなかった。



そしてストーリーは、平和ボケニッポン人のスイーツ脳でははなはだ噛み砕きづらい「北アイルランド紛争」が中心に据えられているときてる。



これは手ごわかったですよ。



ぼく自身のアイルランドの歴史への造詣のなさ(中学時代にBeatleマニアになった日本の田舎もんは、Paul McCartneyが歌っていた「アイルランドに平和を」ぐらいしか知らなかった。あと、天海祐希時代に宝塚歌劇団月組がやった『エールの残照』でごくちょっと勉強)もだけど、日本の若い俳優たちが、日本の観客たちに、どこまでこの作品の作者たちが“思い入れた”ものを伝えられるのだろうか、と、自分のことを棚に上げて考えてしまいました。



で、いきなり逆のことを書いてしまいますが、現在の日本だって、このころのアイルランドほど切羽詰まった状況ではないけれども、特定の国や民族に対する特定の感情を募らせている人たち(なんだこの腰引けまくりな言葉の選び方は?)がいないわけじゃない。このことは自明ですよね。



そういう人たちに、この作品のジョンの生き方、メアリーの叫び、トーマスが選んだ道を目の当たりにしてインスパイアされてほしいと願わずにはいられないんだけど、昔『レ・ミゼラブル』を観たときにも書きましたが、そういう人たちがそもそもミュージカルなんか(←コラ)観にくるわけがない。



エンターテインメント業界の最大のジレンマですよ。いつも思うことだけど。







景気の悪い話はここまでにして、単純にミューオタとしての感想を書きましょうか。



主演の馬場徹。

この人って不思議な俳優で、つか作品のときは宇宙一スーパーフレアが燃え立ってるのに、ほかの作品では「どこにいた?!」ってくらい影が薄くなったりする。これは悪口じゃなくて、ぼく思うに、彼は地色が真っ白な役者なんだろうなと。

演出家が赤く塗れば真っ赤になり、青く塗れば真っ青になる。変幻自在。そんな俳優だと感じた。

いつまでもそれを言うか。と責められるかもしれませんが、元テニミュ俳優だというのに、ぼくは馬場君の歌って今回初めてまともに聴きまして。

正直な感想を申しますと、声自体は美声なんだけど、周囲の「ザ・若手ミュージカル俳優」たちと比べると、声量の点で若干劣る。

それよりはやはり、(他の出演者陣と比べても)圧倒的な演技力と、昔取った杵柄(笑)のボールさばきに安心して浸らせていただきました。







大塚千弘。相変わらず声が美しい。表現力もある。

ただなんていうか、ぼく自身この物語の中で一番共感できるのが彼女・メアリーなので、逆にとりたてて感想がなかった。それは逆に、大塚がちゃんとメアリーを演じていたってことの証明だと思う。







ガウチ君(中河内雅貴)

キレまくりトーマス。こういうキャラって必ず出てくるよね、このテの話に(←奥歯に物が)

ほとんどの人から共感されないこういうキャラクターは、演じてて辛いだろうな、なんて余計なことを考えてしまいました。

ぼくも思うもん、トーマスって何をよりどころとして生きてるんだろう? って。

『上海バンスキング』の弘田真造・・・とはちょっと違うか。でも、なんか「こいつとは話通じんわ」みたいなところが似てる。

ぼくは彼のような人に対して話し合いをシャットアウトしてしまう性格なのだけど(たとえ無邪気な少年時代に親友だったとしても、大人になって“信条”が分かれてしまったら、そうなる)、ジョンはそうしない。

だからドラマになるんだけど。・・・って、ガウチ君に対してじゃなくトーマスに対しての感想になっちまった。







あとの方たちは皆さん過不足なく・・・って、力尽きてきましたすみません。



吉原(光夫)さんってやっぱり今井清隆さんに声似てるな。(←思考力の限界)



あっそうだ、小さめのコヤでさらに客席でステージを前後に挟むという、いかにもニナガワさんの弟子らしい藤田俊太郎氏の演出だったんだけど、その“密”な感じがこの作品の舞台であるベルファーストという町の閉塞感を的確に表してしたように思う。



空気感が、若干『レント』に似てる気がしました。



負け惜しみ(青山公演を観逃したことへのね)かもしれないが、この作品、絶対、こういう小ぢんまりした演出の方が合ってると思う。大劇場で観るような作品じゃないような気がした。



ジョーイ・マクニーリーの演出がどんなんだったかわからないから、断言はできないけど。


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