てくてくミーハー道場
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2012年12月16日(日) |
『助太刀屋助六 外伝』(ル テアトル銀座) |
当分歌舞伎は観る気になれない心境であるが、こういうのは大丈夫。
ぼくは、岡本喜八監督の作品は『大誘拐』(北林谷栄刀自、緒方拳さん、サイコーだった!)しか観ていない、ほんとにばかな観客であります。
『助太刀屋助六』も、全然予習しないで行きました。
先入観を持たないため、といういい訳ですが、今回の『外伝』のストーリーは、G2氏のオリジナルだそうです。
設定とかは別に難しくなく、すぐ理解できました。導入部分、秀逸。
特に音楽がすばらしい。
パーカッションとピアノのコンビによるブルース演奏。
この“ブルース”がもう、えらいカッコいい。
この時代に、ブルース。
○十年も前の話になるが、ぼくが小学生か中学生だったころ、たまたま視ていたテレビで放映されていた時代劇映画(タイトルが未だにわからない)の中で、町人役の若き坂本九さんがいきなり「上を向いて歩こう」を歌い出したのを聴いて、びっくりした記憶がある。
昔の「アイドル映画」では、主役のアイドルが劇中で持ち歌を歌うなんてことが当たり前にあったが、時代劇でってのがめちゃくちゃキッチュだった。
でも、そのミスマッチが妙にオシャレで、「時代劇」=「重厚なクラシック」というありふれた概念をふっ飛ばしていて、とてもカッコよかった。
よく考えると、昭和初期の日本人の音楽のセンスって、輸入されたばっかりのジャズ中心で、後の世代のぼくたちにとっては、すごく大人っぽくて憧れの的だった気がする。
今回の舞台を観て、あの感じを思い出した。
今年のコクーン歌舞伎の『天日坊』も、そうだったなー。
加えて、出演者たちもみな秀逸。
大枠は“喜劇”なんだけど、ドタバタではなく、演じている人たちがみなまじめに役の中で生きている感じに非常に好感大。
亀ちゃん(って呼んでもいいらしい、ご本人によると。でもまぁ、来年からはちゃんとエンノスケと呼ぼう。今年いっぱいは亀ちゃんで行きます)にはもちろん文句のつけようがない。
ぼくとしては昔から亀ちゃんを大評価していたわけではなく、若いころの亀ちゃんは楷書過ぎて、上手なんだろうけどコクが全然なくて、AIBOみたいだなー(どういう意味?)と思ってた。
きれいだけどロボットみたいにつるんとしてるというか。
AIBOって、「世界のSONY」の威信をかけて、ロボットにしちゃ動きが精巧で本物の子犬に近いらしいけど、でもやっぱ機械は機械、みたいな。
だがそんな亀ちゃんも、30歳を過ぎたあたりからすっかり年齢相応の色気が出てきて、今年の新橋演舞場での襲名披露興行では本当にすばらしい演技を見せてくれた。伯父さん生き写しだったけど(←一言余計ですよ)
今回もしょっぱな第一声が猿翁そっくりで「うあ!」(←?)と思ったんだけど、観終わって感じたことは、この人の大いなるかわいらしさだった。
「カワイイ」っていうほめ言葉、見巧者は嫌いますよね。「最近のバカ女は、何見ても『カワイイ!』『カワイイ!』って。ほかに言葉知らないのか!」って。
ぼくもまぁ同感なんですけど、今回の亀ちゃんに対しては、「カワイイ」で鉄板。異論は認めない(←なぜか強気)
つぎはぎだらけの着物を着て朱鞘の一刀を帯び、なぜか女物のかんざしを頭頂にちょん、と挿している、傾奇キャラの助六。
無宿者というよりも、どっかいわくのありそうな(原作映画を観ていないので、うかつなことは書けないが)
助六は年齢的にはさほど若くなさそう。言ってみればルパン三世みたいな、“大人”なんだろうけど、“おっさん”ではないはず、という不思議な感じ。
でも、カワイイ。
カッコいい、とか、ステキ、とかじゃなく、カワイイ。
そんな感じでした。
ほかの出演者たちも、コムちゃん(朝海ひかる)や鶴見辰吾、はるパパ(治田敦さん)、そして猿三郎丈など、安心して見ていられる方々がそろっていたのだが(ただしコムちゃん、現代劇では100%美少女(実年齢はともか・・・ごっほん!ごほん!!)なお方なんだけど、島田のかつらがすがすがしいほど似合わん!・・・まいった/涙)、ぼくが亀ちゃんを差し置いて(何っ?!)「おおっ!♪」と思ったのが、新之助役の石橋直也くん。
第一幕ではてんで剣術ができない情けない若者なのだが、第二幕で助六の「無手勝流」を身に着けたあとに、小気味良いチャンバラアクションを展開。
第二幕で殺陣ができてた、という点じゃなく、本当はできるのに、第一幕でまったくできない様子をバレることなく演じてた点に瞠目(←またもや着眼点が・・・)
いかにも剣術が弱そうないかり肩もいとおしい(笑)
そして、絵に描いたような「100%二枚目」を演じていた吉沢悠くんのカッコ良さ。
ぼくは、休業以前の彼を勝手に「あまたいるイケメン俳優(ここでは“イケメン”は褒め言葉ではない)」の一人としか認識していなかったんだが、最近本当に芝居巧者になったしカッコ良くなったなあと思っている。いや、休業がどうこうじゃなく、単純に年齢を重ねて成長したってことなのかもしれないけどね。
舞台だから、顔よりも立ち姿と声が重視されるわけだけど、それが実にすばらしい。うっとりとしてしまいました(*^^*)
お話自体はすべてが面白おかしいわけではなく、悲しいシーンもある。が、総じて、観終わったあとに幸せになれる芝居だった。
必要以上に深刻でもなく、かといって軽薄でもない。
「信頼のG2」でありました(⌒⌒)
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