てくてくミーハー道場
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2012年12月15日(土) |
『ハーベスト』(世田谷パブリックシアター) |
ぼくにしてはちょっと間が空きましたが、本日も楽しくお出かけしてきました。
英国現代演劇の本邦初演ということで、普段はあんまりこういうものは観ないぼくですが、出演者(誰だかもうお判りですね)目当てで行きました。
こういう話って、どういうスタンスで観たらええんやろか? と時々疑問に思う。
別にスタンスもへったくれもなく、感じたとおりに受け止めればいいのだが。
単純に言えば、一人の男の長い生涯のうちの90年間(!)を描いているのだが、本人は「立志伝中の人」というわけでもなく、ずっと自営の養豚業という、誤解を恐れずに言えば、地味な種類の人である。
そんな地味な人の人生を淡々と描いているのだが、なにせ90年間の話なので、イギリスの1914年から2005年までの時代背景を装置に反映してあって、その風俗が面白い。
日本の話でも、NHKの朝のドラマとかはよくこの辺の時代の移り変わりの中で描かれることが多く、江戸時代とかを舞台にしたら完全に「時代劇」になってしまうが、「明治」「大正」「昭和初期(戦前)」「戦中」「戦後すぐ」「高度経済成長期」「バブル期(笑)」なんかを時代背景にしたドラマは、その時代にまだ生まれていなかった世代でも、なんとなく懐かしく感じたりする。不思議なものだ。
ぼくにとっては、ぼくと同世代の“アラン”が大学生になってる1979年の風景に懐かしさいっぱい。
あのデカいコンポーネントステレオ、色電話、冷蔵庫。
ラモーンズのTシャツ(笑)
あれが最先端だったんだよなあ(^^ゞ
だがお話自体は、主人公ウィリアムの身の上にすごい大事件が降りかかるわけでもないので(いや確かに、戦争に行って両足を切断して帰ってきたり、100歳の誕生日にエリザベス女王から祝い状が届いたりと、比較的トクベツな老人であるのだが)淡々と観ていましたが、最後の場、2005年のシーンで“あの男”が登場した時には、思いっきりべっくらした(^^;)
そこでなにやらスカッとしたものを感じ、ラストはニコニコのエンディングでした。(ネタバレしないように書いてるので、何だか解りにくいね)
ところで、これだけ長期にわたるお話なので、主だった役の役者たちはたいへん幅広い年代を演じます。
主役・ウィリアムの渡辺徹が19歳(!)から100歳過ぎまで。
19歳には若干ムリがあった(汗)が、それ以外はさすがだった。
その弟・アルバート役の平岳大が18歳から48歳まで。こちらはなかなか(18歳・・・は、ちょっと・・・だったかも)
アルバートの妻・モーディー役の七瀬なつみが30代から60代まで。
地主(と、その息子と二役)役の吉見一豊が20代から40代後半まで。この人の役作りが一番面白かった。比較的ぶっとんでる役だったからかもしれないが。
そして、モーディーの姪・ローラ役の小島聖が25歳から85歳まで。
ローラは75歳と85歳を演じ分ける必要があったのだが、若い人からすれば、75歳も85歳もどっちも「おばあちゃん」なんだから、なかなか演じ分けにくかっただろう。世の中には、75歳の人よりも若々しい85歳もいるし。
85歳のときにでかい声でわめくシーンがあったのだが、あんなに力いっぱい声が出るもんかなー? とちょっと思いました。その前の60歳ぐらいのシーンでは逆に年取りすぎてた感じもあったし(相変わらず若い女優にはキビシイわねておどるさん)
でも、全体的にはなかなか良かった(←なにこのとってつけたような感想)
ではでは、わたくしのお目当て、佐藤アツヒロさんでございますが。
あつくんは、そのローラの夫・ステファンの25歳から60歳ぐらいまでを演じ、最後の場では別人(30歳ぐらいの設定)を演じました。
これは“元光GENJI”のメンバー全員に共通した悩みだとは思うんですが、この方、世間からいつまでも子供っぽく思われている。
そして、現に、見た目が(かなり近くで見ない限り←オイ)ひじょーに若い。
実はもう39歳なんですよね。
でも、どう見ても30歳ぐらいで止まっちゃってる。近くで見ない限り(←しつこい)
そして、演技力もさほ(ぐおっほん! ごほん!!)ので、60歳前後の落ち着いたお父さん役を演じるのは少々キツかった。
逆に、25歳時のステファンなんてのは、かなり軽々と演じていたんだが。
とりあえず感想をまとめると、時代の変遷の中で確固たる意思を持って生き抜いてきた人間のカッコよさや、こと「農業」について考えることは、地球に住む生物全部についてまじめに考えることだ、ということなども教えてもらった、イギリス演劇らしく地味だが(一言多いぞ)ウィットのあるお芝居でした。
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