てくてくミーハー道場

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2009年05月13日(水) 『きらめく星座』(銀河劇場)

寝不足で頭がふらふらするので(じゃあ寝ろ)短めに。



『太鼓たたいて笛ふいて』と同様、井上ひさし先生による戦時中のお話だが、こちらは有名作家が主人公ではなく、市井の“善意の人々”が主人公。

使われてる音楽が、ぼくもよく知っている昭和10年代の流行歌だったので、よりすんなり楽しめた。

それにしても、井上ひさし先生の筆力には感動する。

そして、その“濃い”セリフを、ちゃんと伝わるようにしゃべってしまう役者さんたちにも、感動する。

タモ(愛華みれ)がお目当てで行ったのだが(ビジュアルが近いわけではないのだが、どことなく「サザエさん」を彷彿とさせた/笑)、やはりというか、木場勝己さんに、まいってしまった。

だけど正直言うと、ぼくが今回一番「この人、好きだ」と思ったキャラクターは、なんと(なぜ「なんと」なのかは、この芝居をご存じの方にはお分かりいただけると思う)「源さん」=高杉源次郎であった。

最初はびっくりするほどいけ好かない男なのである。

これがまた、今回彼を演じたのが、このテの男の「いけ好かなさ」を表現するに超長けている相島一之だというから始末が悪い(あっ、こらこらっ!/汗)

褒めてるんです! 最大限の賛辞なんです!(本気)

今まで相島さんがテレビドラマなどで数々演じてきた「ちょっとやな性格の男」とは少々違っていて、良く言えば「自分の信念を曲げない男」、悪く言えば「自分がいつも正しいと思ってる男」なのだが、ぼくにも実はこういうところがあるので、「やだな」と思いつつ、共感してしまうのである。

それは、「何故オレは嫌われるのだろう?」と、実は分かってるくせに直せない、そういう痛がゆい共感なのである。



それはともかく、源さんは(元)軍人らしく、日本(軍)の正義を信じて疑わない。

戦後60年以上経っている今だからこそ、「日本の大陸進攻は、正しかった」なんて思考は物笑いのタネだが、当時は大真面目にそう信じていた人はたくさんいたのだろう。

だけど、どういう経緯でそうなったか学習すれば、今のぼくらは彼らを笑えない。

いや、“現代”に生きるぼくらだって、ぼくらの“今”の思想が100パー正しいかどうかなんて、本当は誰にも断定できないのだ。

未来の誰かに判定してもらうまでは、本当のところは分からないのだ。

だから、ぼくは源さんを、「今の観客が『昔の日本人って、間違ってたんだね』と断定するためのステレオタイプなキャラ」だとは、とうてい思えないのだ。

それに加えて源さんは、小笠原家にやってきた経緯からして、どうにも「忸怩たる」思いを拭えない、気の毒なキャラでもある。

ところが、こういうケース(半ば政略的に結婚を斡旋された傷痍軍人)は当時はけっこうあったらしい。

これこそ戦時中だからこそであって、今ならぞっとする話だが、確かに言われてみれば、彼らが体の一部を失ったのは明らかに国のせいだし(つまり、国民全員の連帯責任)、戦地で敵を殺すより、内地で結婚して子供をつくる方が、国策に合ってる・・・なんて理屈も通りがちだ。

くじ引きみたいにして源さんを選んだみさをのことを、今の感覚で「ちょっと・・・考えられないですよね」と断罪することは容易いが、それでも彼女は結婚すると、ちゃんと妻として源さんに仕え、子供も授かってる。

なんか、昔の日本人のメンタルの強さをまざまざと思い知らされるような、このご夫婦のあり方なのである。

正一(阿部力くんだと、最初知らずに観てた。当然と言えば当然だが、『花男』とのあまりの違いに、同一人物とは思えなかったのれす)だって、「センソーハンタイ」という、現代人には分かりやすい思想などで脱走兵になったわけじゃなく、「大砲の音が耐えられなかったから」逃げただけだ。彼は、兵隊さんをやること自体は、イヤじゃなかった、と劇中で言ってるし(もちろん井上戯曲ですから、話はそんな単純には終わらないのだが)

だから、こうやって「自分の置かれた状況」の中で、最善を尽くして生きようとしている人たち(“蝮の権藤”なんかも、まさにそれ)に、ぼくはひしひしと共感して、

「ぼくも、今まで信じ切っていたものが、もし間違いだと分かったら、それを『変節だ』とか何とかぐずぐず恥じてないで、正しいと思った方へ方向転換するようにしよう」

と思ったのだ。

そういう意味では、妙に“知っている”かのようにふるまう竹田さんには、大好きな木場さんが演じているにも拘らず、ちょっと鼻白んでしまったのである。



そんでもって、観終わってからずっと、「青空」のメロディーが頭ん中でエンドレスリフレインしている(当然)

こういうのが、音楽を効果的に使ったお芝居の妙なのであるな。

タモはあんまり歌上手くなかったけど(こらっ、言うな!)





短めに、とか言いつつ、書き出すとやっぱり長くなる悪いクセ。

では、明日もてくてく(もちろん仕事もどっさり/涙)


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