雑記目録
高良真常



 悪童日記 (本)

悪童日記
  アゴタ・クリストフ
 早川書房



「ぼくら」は母に連れられて、戦禍を逃れ、祖母の家に預けられる。
祖母は「ぼくら」を決して可愛がらず、必要なものもろくに与えない。
そんな中でも「ぼくら」は生きること、それに必要とされるものを己で習得するために、どれだけ手酷い扱いをされても優しく笑っている。
街へ行く。人々の反応を見る。
ありったけの罵詈雑言を被る。それらに慣れて心の痛みを無くす。
「ぼくら」は己で動き、蓄え、学習する。淡々と。
出来事を日記に綴る。交互に書く。常に一緒に行動している「ぼくら」の日常に、相違は全く無い。



「ぼくら」の綴る日記、それこそがこの本の内容です。
地名も人名も出てこず、見たことだけを書き記す双子の日記には、彼らの心境などは一切書かれておらず、無邪気を越えた空恐ろしさにぞっとする。
淡々としたその語り口の中に、物凄く深い意味を抱えている小説です。

最後でどんでん返しの小説ってのはあるけれど、この本は、“最後の一行”で世界をひっくり返す小説だと思います。あのラストは絶対予想不可能。
一度はこの衝撃を体験あれ。


ちなみにこれは全三部作の第一部に当たる物語で、後に『ふたりの証拠』『第三の嘘』と続きます。
三部作、全てにおいて衝撃を受けた、本当に私の読書人生で一番衝撃的な本です。









2004年08月21日(土)



 アベンジャーズ (映)

アベンジャーズ
   ジェレマイア・S・チェチック監督




狂気の科学者により異常気象に襲われたイギリス。
諜報機関のエージェント、ジョン・スティードはその調査を依頼され、さっそくかつて気象シールドを開発した気象学博士のエマ・ピールに連絡を取る。しかし、彼女に犯行の容疑がかけられたため、エマ・ピールとスティードは協力して真犯人を捜し出そうとするが……。



「伝説的失敗作」と呼ばれるこの映画ですが、私は大好きです(笑)。
登場人物の服装はイギリスらしくお洒落だし、ヒロイン・エマ役のユマ・サーマンがすごくカッコイイですしv
悪の組織が悪の集会を開いてるとこなんか、顔が見られないように覆面……ならまだしも、全員クマの着ぐるみを着てる所なんかも妙にラブリーですし(笑)、エマに皮のブーツをはかせてるとことか、なんかやらしーです(笑)。
全体的に「ボケ感」な感じで、ツッコミ役がいないのもまた好き(笑)。

「ネムキ」こと「眠れぬ夜の奇妙な話」という漫画雑誌の映画レビューに載っていたのをキッカケに観たのですが、やはりヘンな話が好きな人にはオススメです。










2004年08月23日(月)



 THE RACE OF A THOUSAND CAMELS (音)

THE RACE OF A THOUSAND CAMELS
Boa
ポリスター


1.FOOL / 2.TWILIGHT / 3.DUVET
4.RAIN / 5.ELEPHANT / 6.SCORING
7.DEEPLY / 8.ONE DAY / 9.WELCOME
10.FOR JASMINE / 11.ANNA MARIA


serial experiments lainのOPテーマ曲『DUVET』をキッカケで買ったアルバム。
実は『DUVET』はアルバムの中でも異色な曲で、全体的にはロックな感じがします。
どこか気だるげな歌い方が魅力的。
しかも、ボーカルのジャスミン・ロジャースとギターのスティーヴ・ロジャースは、かのポール・ロジャースと日本人女性の子供たちだったりするので、アジア的な印象もあります。
どうにもこうにも“ボア”というと韓国のボアを思い出しがちですが(苦笑)、こっちも聞いて広く知ってもらいたい、オススメの一枚。

ちなみに輸入版で、ほぼ曲目の変わらない『TWILIGHT』というアルバムもあり、serial experiments lainがアニメ文化賞を受賞した記念に編集された『TALL SNAKE EP』というミニアルバムも出ています。
『TALL SNAKE EP』はジャケットもserial experiments lainの絵柄なので、ファンなら必須です♪




TALL SNAKE EP

1.デューベイ(オリジナル・ヴァージョン)
2.デューベイ(CYBERIA MIX BY DJ WASEI)
3.デューベイ(アコースティック・ヴァージョン)
4.TWO STEPS
5.LITTLE MISS










2004年08月24日(火)



 迷宮物語 (ア)

迷宮物語
  アトラス



「ラビリンス・ラビリントス」、「走る男」、「工事中止命令」の三編からなる短編アニメ。
「ラビリンス・ラビリントス」はこの迷宮物語の表題作品のようなもので、奇妙な世界に入り込んでしまった猫と少女の道行きを描く話。昭和初期のレトロな雰囲気と不気味さが印象的。監督はりんたろう。
「走る男」は、過酷なレースに耐え続けた男の肉体と精神の崩壊を臨場感満点で描く。監督は川尻善昭。
「工事中止命令」は、3K職の工事を全てロボットに任せたために起こるロボットの暴走と、それを止めるために派遣された男の皮肉を描く。監督は大友克洋。

それぞれ異色な雰囲気を持つ、奇妙なアニメ作品集。



余談ですが、某ビデオ屋でこれを借りたところ、中身が何と「迷宮物件」という別物だったことがありました; それはそれで面白かったんですが……店員、間違いをそのままにしておくなよ;











2004年08月25日(水)



 ステップファザー・ステップ (本)

ステップファザー・ステップ
    宮部みゆき
   講談社



泥棒家業の“俺”は、ある夜、巨額の遺産を相続した若い独身女性の家に侵入するが、とんだドジを踏んでしまって落下、気絶してしまう。
子供の声に眼を覚ますと、そこにはサラウンド喋りの双子がいて、“俺”にある提案を持ちかけてきた。
それは、“俺”を警察に通報しないかわりに、自分たちの父親のフリをしてほしいという、常識はずれな提案で―…。
何でも、双子の両親は、それぞれ別の人と駆け落ちをしたというのだ。勿論両親はお互いが子供たちの面倒を見ていると思っているようで……。
仕方なく双子の父親役を引き受ける“俺”。
破天荒な双子と即席のステップファザー(継父)の奇妙で暖かい生活とは――。


笑いあり、ドタバタあり、ちゃんとストーリー構造もしっかりしていて、後でじーんとくる、そんな連作短編集。双子にほだされていく泥棒と、仲良くなっちゃってるヤミ系の住人が面白オカシイです(笑)。
最終話には、しっかり未来への道があって……、とにかく可愛らしい話。
ファミリーものだと、私はそう思います。










2004年08月26日(木)



 THE WATER GARDEN (音)

THE WATER GARDEN
   KOJUN
  東芝EMI




1.Parade / 2.Lady with chainese Parasol
3.Gate of market / 4.The water garden
5.Vessel with torch / 6.Ravine
7.Dancing in the lotus garden / 8.Parade(オルタネイティヴ・ヴァージョン)



沖縄の持つ熱帯と雰囲気をインストゥルメンタルでつづるアーティストの代表アルバム。これ以前に、『水中庭園』というアルバムが出ていますが、こちらは廃盤。
『水中庭園』と『THE WATER GARDE』、同じ意味を持つアルバムなので、曲目はあまり変わりません。ただ、『THE WATER GARDE』のほうは少しリミックスがあるような……?
賑やかな市場を思い出させるような一曲目の『Parade』、どこかアジアを思い出す『Lady with chainese Parasol』、地元の天気予報のBGMにも使われていた(笑)『Gate of market』、そして、廃園にただ水の音だけが聞こえてくるような情景を思わせる『The water garden』……。
近いようで遠いような、別の『アジア』を彷彿とさせるアルバム。











2004年08月27日(金)



 転校生 (本)

転校生
  森真沙子
 角川ホラー文庫



プロローグ / 理科室―少年は虹を渡る― /
美術室―樹下遊楽図屏風― /
音楽室―みんな集まって来るよ― /
図書室―堕ちる鳩― / 寄宿舎―女友だち― /
エピローグ 


学校には、そこに巣食う暗闇がある。暗闇には、誰も知らない住人がいる。ふとしたきっかけでその世界に入ってしまった者は、そこに囚われて――……
親の都合で転校を繰り返す美貌の主人公、有本咲子。
彼女は次々と移り変わる学校で、そこに巣食う闇と闇に囚われた人とに出会う……。


怖い小説です。
連作とも言えないこともない短編集で、それぞれの共通点は、主人公が「有本咲子」であるということ、それが「学校」で起こるということ……。
特に音楽室の話は、夜一人では読めないくらいです。
とにかく怖い話なので、暑さに悩んでる人にオススメ。

ちなみに続刊が出ています。

続刊⇒ 「真夜中の時間割〜転校生2〜」 「水域 アクアリウム〜転校生3〜」









2004年08月28日(土)
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