2005年09月29日(木)...摂取、依存

 強迫観念と渇望、そして、その後の朦朧はねっとりとした温度でゆるゆると身体を蝕んで総てを取り崩していった。
 起因は押し並べて睡眠不足で、媚びた笑みと諦めを乞う安易さが気付けば身体に染み付いて仕舞っていた。如何にかしたいと願いながらも眠気と吐き気、衝動と恐怖はぐつぐつと煮詰められて、足元を雁字搦めにする。
 連鎖を断ち切るには最早手遅れなほどに、時間的にも能力的にも世界からは引き離されていて、追い着こうと努力するよりも短絡的な解決法が脳裏をちらついて魂に伸びた腕に力が篭もった。
 立ち直る切欠は些細で、もう今では思い出せない。

2005年09月26日(月)...じりじり、と

 明確な宛ても無い待ち遠しさに駆り立てられて、ただカレンダーを塗り潰す様に今日を消化している。校門を背に発車するバスの開放感が、生活を象徴している気がした。いきたくない、に含まれる意図が言葉を封じてゆく。

2005年09月25日(日)...新学期

 夏の匂いを閉じ込めた若さに少し、怖じ気付いている。想像するだけで眩しさに眩暈がした。

2005年09月23日(金)...変わって、仕舞う

 夏が終わる、唐突にそう思った。重箱の隅を突いては探し出す躓きに、最近は少し、寛容になった気がしていた。浸るほどにまで極まらない痛みに、時間を手放し始めていると知る。
 肩車、飛行機、キャッチボール、プール、食卓、旅行、公園、虫取り、喧嘩、送り迎え、ゲーム、海、山、川、森、遊園地、縁日、初詣、七五三。思慕と愛情の組み合わせの下で、はしゃいでみたかった場所達。恋と欲情の組み合わせに吐き気がする。

2005年09月21日(水)...自動車道

 22時過ぎに呼び出された部屋の、煌々と付く明かりに眩暈を憶えて居た。貧血気味の身体に入り込む電話越しの抗議を、面倒に押し流される様にただ耳にしている。当初胸にちらついていた少しの反省や謝罪も、1時間が経過する頃にはぺらぺらになって、何処かへ散っていって仕舞っていた。

>信用していたのに
>解っている筈なのに

 同じ文句の繰り返しと、のに、のに、のに、ばかり続く会話に嫌気が差して、銀紙に張り付いたチョコレートを舌で剥がしながら収束を願っていた。


[ 00:20 ]
 泣き疲れる様にして切れた電話と、耳にこびり付くきゃんきゃん、とした喚き声が徐々にはっきりとした輪郭を持って迫り始める。開けた缶の冷たさと安堵感、終わりの静けさにどちらからともなく、気付けば乾杯をしていた。
 日付の変わった夜道はオレンジの光に照らされていて、昼間よりも明るい気がした。互い違いに変化する信号機の色に苛立つ神経さえもう残ってはいなくて、無口になった運転席からは古いバラードが聞こえる。

2005年09月19日(月)...性別意識

 腹痛で眼が覚めた。のろのろと這う様にトイレに行って、ここ3日の苛立ちの原因を知る。
 朝になっての就寝と、肌荒れ、由のない憤り。20世紀の派手なV系バンドを聞きながら、衝動に駆り立てられるがままに、頭を過ぎる靄にシャープを掛けて0と1へと変換してゆく。冷却された此の部屋でただひとつ熱を持つもの、手の平から伝わる温度と液晶。エレベータと網タイツ、トイレとトリップ、そして雁字搦め。

2005年09月15日(木)...飛行機

 寝転がってシートに耳をぴたりと付ける。こうこう、と音が体内を擦り抜けて徐々に存在が薄まってゆくのが解った。マイナス58度の外気に晒されるのは、どんな気分だろう、と少し思った。


[ 20:58 ]
 久々に見詰めるディスプレイに温度差を感じて、胸がつん、となった。自由自在の時間の中にある、確固たる流れの隔たりが眼に見える世界。

2005年09月05日(月)...病院

 台風の前に、と駆け込むひとの多さで混雑していた。ふわふわとした絨毯に足を滑らせて遊びながら、ソファーに座って順番を待つ。呼ばれる頃には疲弊して、本来の症状に加算された頭痛に流されて仕舞っていた。

2005年09月01日(木)...マイナス

 途方も無く陰鬱な気分が身体を支配して、涙腺が愚図愚図とする。逃避願望は地下鉄の規則正しい揺れに乗って何処までも膨れ上がり、出入口を塞いだ。幾度目かに下車意欲を削がれた後は半ば夢現で、終点に辿り着いた。
 陽射しが引いた後の街は潮の匂いがした。

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