2005年06月28日(火)...機能停止
真夜中を劈く音で眼が覚めた。蒸し暑さに脳味噌が今にも溶け出しそうで、咄嗟にリモコンのスイッチを押す。眠りを妨げた原因の死にゆく様を幾通りも想像して、気付けば朝になっていた。今日はなんだかとても眠い。
2005年06月24日(金)...ココナッツミルク
午後の授業を総て切り上げて、暑い陽射しを横目で見ながら、うつらうつらバスに揺られる。ふらふらと降り立った駅の構内で、誘われるように出来立てのワッフルをひとつ買った。
ホームの縁で無心に頬張って居ると突如歓喜が込み上げてきて、時計も、電光掲示板も、足元の黄色も全て、きらきらと光って見えた。酷く陽気な渦の中にすとん、と落ちて、全身の力がくらり、と抜けてゆくのが解る。化学の力に頼らない其れが、生命力と直結している様に思えて、未だ大丈夫だと少し頷いた。
2005年06月23日(木)...密やかな狂気
だだっ広い食堂の片隅でぼんやりとひとの群れを眺めていた。11時を少し回ったばかりで、まだ犇めく程にはならない。テーブルに突っ伏して耳をぎゅ、と押し付けていると夏のプールの匂いがした。陽射しが面倒で、眼の前を動く健康的な太股に揺らいだ視線を投げ掛けていた様な、開放感という閉塞にゆらゆらと沈んでゆく。
何時かの明け方去り際に握らされたビニールを、ふっ、と思い出して鞄から引き摺り出す。あと2時間、丁度よい空白に空腹の感情。舌の上に転がした濁色を硬水で飲み干す。訪れるのは引き伸ばされた世界と、拡張された声。
[ 14:25 ]
別館のトイレの鏡台に座って、華やいだ空気をただやり過ごしていた。廊下を歩く足音と、誰かが云った、全てぶち壊したい。
2005年06月22日(水)...セーフティネット
足元がぐら付いていて、此の侭墜落すれば柵を越えて仕舞うだろうそんな、想像すら容易にする。
健全さや正当性を振り翳す救いの手よりも、地の底の1歩手前で寝そべって、他愛のない会話を紡ぐ宛てが欲しい。
2005年06月21日(火)...小試験
押し込まれた教室に空調が効いていて、飼育されているみたいだと思った。白い紙に試された知識を書き殴って早々に退出する。
2005年06月20日(月)...教室移動
30度を超える最中の、真昼のアスファルトを公然と踏み締めるのは一体何時ぶりだろうかと思った。余りに健全な甘さの中に放り出されて救いすら見当たら無い。
2005年06月17日(金)...欠損に欲情する
右手の爪が割れた。1本だけ不恰好に短くなった小指は、少しぎざを残したままで、足りない部分に欲情する、と衒いもなく述べたひとが余りにうっとりと其れを眺めるものだから、アンピュティが好きかと尋ねてみた。
>いいね、素晴らしくどきどきするよ
2005年06月10日(金)...深夜2時の
軽快なサウンドが空っぽの胃にずんずん、と響いた。黒い皮張りのソファはスプリングが少し固めで、沈めた身体を押し戻してくる。溶けたフロートをぐちゃぐちゃ掻き混ぜながら、柔らかな茶髪を眺めて居た。ガラスの向こうは点滅する信号と車のヘッドライト、水色と桃色に光るネオン。