2005年05月28日(土)...待ち合わせ

 待ち人が来なくて、ぼんやり佇んでいると徐々に街が起き始めてゆくのが解る。ひとり増え、ふたり増え、数十分後には人待ち顔の人々でそこは埋め尽くされていた。目印となる書店の入口には暇を持て余した警備員がひとり、気だるげに視線をさ迷わせて居る。じりじりと眠気が忍び寄って、此の侭、話し掛けられるがままに流されてしまおうか、と人恋しさが手を拱いていた。

2005年05月23日(月)...解らない

 予報には無い雨が降った。窓ガラスに次々と水滴が叩き付けられて、其れを眺めて居るうちに急に世界から振り落とされた気分になった。湿気の所為で何時もよりうねった髪や、少し禿げたマニキュアが自棄に眼に付いて、苛々する。
 教師がプリントを取りに下りた隙を突いて鞄を持って教室を出ると、そのまま下校してしまった。がらんとしたバスが何時もにも増してのろのろと動いて、ただ気持ちが悪い。
 怒りの矛先は、ひとりの危うさを脱せない自分で、突き詰めれば突き詰める程、遣る瀬無くなる。

2005年05月13日(金)...前後不覚

 頭が酷く痛んだ。フローリングの床に横たわった身体は少し動かすときしきしと厭な音を立てる。耳の奥でざわめきが起きて瞬きをするだけで吐き気がした。
 ゆるゆると左手を伸ばして、サイドテーブルのグラスに触れた。温くなったミネラルウォーターを一気に飲み干す。胃が熱くじりじりしていて、トランポリンに揺られているような錯覚が離れない。粘着テープを無理矢理に剥がす様にのらりと起きがると、そのままに散らばったオブラートを箱に片付け始めた。零れたナツメグが掌に触れてざらざらした。

2005年05月07日(土)...ナマモノ

 ぼんやりと眺める其の先に生き物臭さを感じて急に煩わしくなった。自信と躊躇いを持ち合わせた表情に、苛立ちを憶え幻滅する。動いている、血が通っている、其の不思議さが堪らなく卑猥で、気持ちの悪いことの様に思えてきて吐き気がした。
 誰かの世界で飼い殺されたいと思った。迷いが垣間見えるような薄い膜ではなく、足掻いても足掻いても突き破れない絶対的強さで社会から遮断して、夢の中に捻じ込めて欲しい。

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