2005年04月29日(金)...久々の真昼

 蒸し暑い部屋に時折、風が音と共に飛び込んでくる。カーテンを透かして薄っすら桃色に染まった光が、部屋を満たしていた。熱の所為なのか自棄に寝苦しくて、ベッドの上を行ったり来たり寝返りを打つ。何処かで震える携帯を探す勇気も出ずに、渇いた喉を潤すことさえ面倒でただ転がっていた。

2005年04月20日(水)...努力という名の足枷

 雨音でアラームより早く目が覚めた。のろのろと起き出して、何時もより熱めのシャワーを被る。頭の芯がふわん、として耳の後ろが少しきゅんとなった。適応を強いられた尖った神経が、べとべとした面倒臭さを合理的な時間配分へと変えてゆく。

2005年04月17日(日)...昨日と明日の狭間

 真夜中、1時過ぎ。ポテトチップの匂いの充満する部屋で顔を突き合わせて居た。自棄に上がるテンションと裏腹に、面倒臭さと眠気が溜まってゆく。
 手の触れる距離に居る異性、というのが物珍しくて。気付けばつい、まじまじと観察をしていた。喉仏、肩幅、胡坐、腕、短い髪を弄る指先。低い声の、其の見た目の幼さに、少し不思議な気分になる。
 男女の相違と外見の相違はイコールで結ばれていて。適当に離れたところからただ眺めているだけが倖せだと思っていたけれど、此の総てを自分のもの、だとして、所有する強さの様な、何か云い様もないエネルギィを発散したり受け取ったりすることも倖せなのかもしれないと思った。

2005年04月14日(木)...大教室

 机にうつ伏したまま、ただ黒板を眺めて居た。ひとのエネルギーで温くなった教室は既に眠気を湛えていて、教師のゆらゆらとした言葉が其れを助長していた。少しの騒がしさが安らぎを呼び、脳がさらさらと解けてゆく。
 窓から差し込む光、単調なテンポ。今、突如立ち上がって腕を切り裂いたなら、この型から抜け出せるだろうか、変わらない幸福と怠惰な安穏の隣り合わせで、ふとそんなことを思ってみた。

2005年04月09日(土)...花見日和

 テラスから見下ろした景色に太陽が反射して、少しくらくらした。向かいのビルに自分を見付けて、光に飲まれて今にも消えそうな其の姿に羨ましさを重ねる。手摺と観用植物の間に映り込んだその表情までは解らないけれど、相変わらずに気だるい雰囲気を醸し出していて可笑しかった。
 とろん、とした午後の陽射しに温かい寛容と緩やかな拒絶を感じて、胸がちくりとする。手を伸ばして届く距離の他人に、触れる理由が欲しいと思うのはこんな日なのだろう、と思った。

2005年04月08日(金)...窓越しの

 風が冷たい。ひんやりとした空気が肺に流れ込んで、朝を思った。少し早めに着いた教室には未だひとが疎らで、開け放った窓から桜が舞い落ちるのをぼんやりと見て居た。
 歳を追う毎に失われ薄れゆくと思っていた感情は少しも変化なく此処に在って、揺ぎ無い意思を持ちつつある。半袖を着ることに思考を挟まないひとの強さが、今になって少し羨ましく映った。

2005年04月04日(月)...新快速

 傘先が地面を掠めた。規則正しい靴音、敬語交じりの挨拶、縦横無尽に入り乱れる足並み。駅は雲霞を吐き出し続けていて、朝の億劫な気持ちに一層拍車を掛けてゆく。
 ホームには既に電車が到着していて、数歩足早に進めば間に合うと解っている距離に結局、躊躇ったまま止めて仕舞った。

2005年04月02日(土)...大字路

 華やいだ空気に背を向けると、過ぎ行く車を眺めて居た。静けさに染み込む雨音が世界から少しずつ輪郭を切り取ってゆく。先程の賑やかしいセイの匂いよりも、街灯やクラクション、水飛沫に懐かしさを覚えるのはひとりという名の弊害だろうかと、そっと呟いてみた。
 道端に佇む自販機の温もりに、機械音に、友情にも似た優しさを見出して凭れ掛かったまま動き出せない。

2005年04月01日(金)...プラットホーム

 何時もより2、3度低い夜に頭を掠われている。覗き込んだ先に、銀色の筋の云い様の無いときめきと安らぎを見つけて、足下の境界線がぼやけてゆく。到着を知らせるベルの、後押しなのか警告なのか解らない響きに人恋しさが募った。


[ 21:05 ]
 窓に映る蛍光灯と、外の明かりが競うように流れてゆく。ぼんやりと思い付いた言葉が少しの虚勢を吸い尽くして増幅するのを、ただ見ていた。

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