本のページをめくる、指。 コーヒーを飲むマグカップの把手にかけた、指。 視線を感じて顔を上げるといつになく真剣な服部の顔がある。 本人は最大限のさりげなさを装っているつもりに違いないが、気付かない振りをするにも限界がある。 「……あのな」 声をかけるとあからさまに視線を反らして「何や?」なんてトボケる演技なんかしやがるものだから、ついこっちも受けて立つ気になってしまう。 「推理してやろうか、今考えてること」 「!!」 超能力者でも見るような驚愕の視線が痛い。推理っつーか、丸わかりだっつーのに。 「……いや、やめとき工藤、その……サプライズ感がなくなるっちゅーか」 今度はあきらかにしょげた表情と声。くるくる変わる。どれもわかり易いのがコイツの弱点というか、いい所というか。浮気とか絶対、できそうにねえよな、と思う。からかってやりたくもなるというものだ。 「そうか、じゃあ結論だけ。いらねえぞ」 「そんな……」 「ばーか、そんな風にこそこそサイズ調べたりする必要ねえって言ってんだよ」 「?」 「つまり、その……指輪とか用意するつもりなら、堂々とサイズ訊いて来いよ、それくらいの覚悟はあんだろ?」 「くどう!!」 ぱたぱたと盛大に尻尾を振る茶色い大型犬の攻撃を逃れるべく、オレはコーヒーのお代わりを注ぎにキッチンに立ったのだった。
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