舌の色はピンク
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いつものように電車に乗っていて 目の前の座席の男性が気になった。 彼は肉付きのいい巨体に加え足を開くなどして たっぷり占有面積を広げており、 そのため7人掛け座席には6人しか座れていない状況だった。 僕はこうしたデリカシーのなさに対しては 執拗に陰湿に責め立てたいので 文庫本越しに彼を睨みつけたりしていた。 割とじっと睨みつけていた。 睨みつけていた、そして気がついた。 この男、綺麗なまつ毛をしている。
本当に綺麗なまつ毛をしている。 俯瞰からの観察につき肌に浮くまつ毛は立体感を帯びて 短髪巨躯の彼の顔面に少女漫画さながらの描線を引き (…いるか?)(……この男にまつ毛、いるか?) と僕の心中に感想を与えながら しかしそれでいて圧倒的に憎めない優雅さを放っていたのだった。
…悪役でいろと。 僕の生活の主人公は僕で、 男はこの物語の悪役として現れたはずなのに、ぶれるなと。 キャラクターデザインを練ってから登場しろと。 あんな綺麗なまつ毛されたら悪役はこっちになってしまうと。 落ち込んだよ。
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