ヒルカニヤの虎



 作り物で悪いか

やばいもう月末だ。このまえどっかで金木犀の匂いを嗅いだなあ、と記憶を辿っていてそうだ高見島だった、と思い出す。10月中旬に瀬戸内国際芸術祭に行ってたんです。3年前は豊島と犬島、あと大島に行ったので、今回は男木島と女木島、高見島、本島に。とにかく高見島の「蛸の家」が見たくてな。あとは島の猫と戯れたり廃墟を撮ったりしていました。廃墟マニアは島にいくといいよ。廃墟〜空家がてんこもりです。あとは男木島の幻のうどんなるもののために無駄に30分待ったりしていた。今年の芸術祭も楽しかったです(芸術ほとんど関係ない)
3年後への教訓:小さい島は道の傾斜がえげつない。

で、ええと今月は取材はほとんどなくてひたすら家でカタカタしていたので、息抜きに映画などを見ていました。あと歌舞伎な。はじめて歌舞伎見たんですが、たぶん演目自体よかったんですが(女殺油地獄の翻案)、とにかく面白くてびっくりした。台詞回しとかもっと難しいのかと思ってた。原作知らなくてもふつうにわかる。与兵衛がだいぶ「ええ人」にはなってたけど。そう考えると古典の物語ってすごいな。作者がかっこつけてなくて、近代的自我がなくて。でも作り手の自意識なぞ受け手にとってはくそくらえだよね。

という流れでうっかりレディースデーで見た「R100」がファッキンシットなチキン野郎で、不愉快を吹き飛ばしたく「地獄でなぜ悪い」も見ました。こっちはすばらしく面白かった。タランティーノ好き三池好きには最高であった。園子温監督はこれまで好きでも嫌いでもないけど引っかかる、という感じだったのが「みんな!エスパーだよ!」によって大いにプラスに傾き、「地獄でなぜ悪い」に至って諸手をあげて降参した次第です。私はこの監督の笑いの感覚が大好きなのだと思う。あと映画に対する畏敬と愛。悪魔のような映画の神様に魅入られて、命を差し出したことにも気づかない最高にしあわせな馬鹿どものお話。ほんと「R100」に対するこんなに的確なアンサームービーはないわ。メタ構造ひとつとってもかくも違うものかと。そもそも「誠心誠意卑怯」とか「ムチャクチャ」などという称号は「地獄でなぜ悪い」にこそふさわしいのであって(以下略)

2013年10月30日(水)
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