親友







濃紺のスカートを踊らせて
競うようにペダルを踏む


騒々しい若葉たちが
次々に流れていく


無性におかしくて笑い転げた
食堂のコロッケと男の子と
生活指導のことばかり考えていた
悲しい出来事なんて
ずっとずっと先のことだった


線路沿いのまっすぐな道
はてしなく続く


瞬く間に通り過ぎる


空は無条件に
両手を広げている
2007年09月24日(月)

カラフル




浅葱色、絵葉書にそよぐ風
またねと言って戻らなかった、
オレンジ色の太陽
はるか遠くに置いてきたもの
薔薇色の孤独、緋色の夢、桜色の涙
今ここにあるもの
色の欠けた鉛筆と
静かに光る、オリーブ色の人生
2007年09月22日(土)

ネガワクバ

望んではいけない
叶ってはいけない


向かいの席のひとは
いつものように黙っている


カラリと崩れる
グラスの中の夢


生まれ変わることができるのなら
こんどは猫になって


君に抱かれよう
2007年09月19日(水)

連れて行く

雨が
土砂降りの雨が
とまらない雨が
君のためではない雨が
耐えがたい夜を
崩れそうな明日とともに
2007年09月16日(日)

10秒前

あなたは髪を短く整えて
きらきら光る席に座っていた


わたしは片足のとれたロボットをあげたの
あなたはいたずらな目をして笑った


いまあなたは、どこにいますか
何をしていますか


以前、こんなふうに
見知らぬあなたに問いかけた日があったことを


ふと、思い出したところです
2007年09月15日(土)

ベル

ちくん、と弾ける


忘れかけていた音階
真夜中の合図


堰をきって満ちてくる


当たり障りのない
挨拶という時間で
2007年09月14日(金)

おまもり

じゃまになるから捨てるよって
いちいち宣言するあたり
ミエコさんの考えることくらい


あの子はあの人の口まねをする
大好きだなんて
会ったこともないくせに


扉はいつも閉まったまま
オサムさんは悪態をつきながら
あの部屋に入りびたってる


燃やしてしまった嫁入り箪笥
鏡台の引き出しからは 
見覚えのある3枚の年賀状


嫌いだったのに
磨きながら思い出すのは


よかったねぇよかったねって
ほっぺたを包み込む
しわしわの両手だった
2007年09月12日(水)

ウィークディ

缶詰とレトルトの晩ご飯
玄関の鍵をきちんとかける
救急車のサイレンを靴箱に隠す
向かいの家の犬が騒いでいる


不機嫌な朝に洗濯機は歌う
「コンタクトは入れない
ブラインドは開けない
野菜ジュースは欠かさない」


ちかちか光る数字の列は
テレビなんかよりずっと楽しくて
午後は誰にも内緒で
不幸ばかりを願っている


おなかがすいたら
缶詰とレトルトの晩ご飯
玄関の鍵はきちんとかけた


1パーセントの満足と
こそばゆい重さに
瞼がゆるむころ


個性的な文字たちのおしゃべりは
いよいよ佳境を迎えている
2007年09月11日(火)

ウィークエンド

9時を過ぎて目覚める朝は
すこし蒸し暑く
何のためらいもなく
エアコンのスイッチを入れる
遠くにエンジンの音が響く
スクリーンセーバーは宇宙飛行
すかさずやってくる小さな手を
まぶたに乗せて
無限の銀河をただよおう
ささやかで罰当たりな日常に
しばしのあいだ
目を閉じたままで
2007年09月08日(土)

half

夜空に浮かぶ
半分だけの月は まるで
半分をどこかに置き忘れてきた
君みたいで
思わずごめんねと
つぶやいた


君のなくした半分になりたかった


それだけは
ほんとうのこと
2007年09月07日(金)

ゼリー

透き通るやわらかな世界に
ゆるく固めて
閉じこめてしまいたいきもち


変わらずにずっと
見るたびにきっと


思い出す 思い出せ
強烈な太陽を


空はだんだん遠くなる


冷蔵庫の中で
時は 止まる
2007年09月06日(木)
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