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  カカシとテン子のど〜でもいいヒトコマ


  a sirial -暗部なテンカカ話-

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  二人の出会い

  びとぅぃーん・ざ・しーつ-12話
  二人の“初めて”または物語の始まり
  ぱすてぃす〜前章
-18禁-
  ぱすてぃす
  びとぅーん・ざ・しーつのその後
  ぱすてぃす〜後朝 -18禁-

  猩々   おまけ -18禁-
  モジモジしている二人の一歩
  マラスキーノ 後日談
 ホワイトデー話

  らすてぃ・ねーる-12話
 ※4 に、テンカカ以外の絡みあり
  任務に出た二人
  カカシの過去を垣間見る

  恋女   後顧   おまけ
  ストーカー被害に合うテンゾウと
  嫉妬な先輩


  九夜十日
  イタチ里抜けのとき

  百年の恵み
  長期任務の小隊長を命じられるテン
  百年の孤独-6話
  初めての遠距離恋愛なテンカカ
  たーにんぐ・ぽいんと-8話
    テンゾウの帰還

   香る珈琲、そして恋 -キリリク話-
 四代目とカカシの絆を知って、
 テンゾウは……

 【1部】 だーてぃ・まざー-4話
 【2部】 ぶらっく・るしあん-4話
 【3部】 ぶれいぶ・ぶる7話
 【Epilogue】 そして、恋

  あふろでぃーて-5話 -キリリク話-
 くるみ


  a`la carte
  -暗部なテンカカとヤマカカの間話-

  春霞-4話
  暗部を離れたカカシとテンゾウ
  ちぇい・べっく
 -可愛いお嬢さん-
4話
  ※2,3に、ごく軽くテンゾウ女体変化あり
  久しぶりのカカシとの任務
  聖牛の酒-3話
  波の国任務の少しあと
  てぃままん-3話
  波の国と中忍試験の間

  月読-5話 -キリリク話-
 月読の術に倒れたカカシを心配しつつ、
 イルカ先生の存在が気になるテンゾウ

  月読 後日談


  テキーラサンライズ−19話
 ぎむれっと前日譚


   ぎむれっと-40話 -キリリク話
  かっこいいカカシと、
  惚れ直すテンゾウ
 ※途中、18禁あり
  プロローグ  本編  エピローグ



  La recommandation
 du chef
-ヤマカカな話-

  再会-Reunion-  第二部





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2009年03月31日(火)
おまけ 1) -18禁-


色とりどりの照明を映して、水しぶきが散る。
キラキラキラキラ……キラキラキラ……。
そう遅い時間でもないのに、ホテルのパティオにはオレたちだけ。

今年のバレンタインデイは任務に明け暮れたけれど、こんなロマンティックな場所でテン子と一緒に過ごせたのは役得だったかもしれない。
テン子が動くたびワンピースの裾の細かいプリーツが、パッと開く。
青みがかった上品なグリーンは、濃い茶のテン子の髪と目に映える。
可愛いショートブーツを履いても子どもっぽくならないのは、スラリと長い足のせいだ。
これはテンゾウの変化だとわかっていて、いや、中身がテンゾウだとわかってこそ、なのだろう。
恋人であり、最も信頼する後輩でもあるテンゾウの変化だから、オレは、もし自分に血縁がいたらこんなだろうか、という空想の物語に安心して浸ることができる。
決してオレを裏切ることのないテンゾウだから。
だから、テン子が可愛い。きっと妹がいたら、こんなだろうと思うほど、甘やかして可愛がって、見せびらかせたい。

なんてことをあれこれ思っていたときだ。

「楽しかったよ、お兄ちゃん」

そのひと言に、理性が切れた。
我を忘れて、叫んだとも。恥ずかしながら。
こんなタイミングでなかったら、もうちょっと違っていたのにと思っても、時既に遅し。
羽交い絞めにしていたテン子になみだ目で、「く、くるし」と、訴えられる羽目に陥っていた。

そうでした、うかつでした――中身はテンゾウでも変化しているときは、筋力も落ちるのだ。
上忍の筋力で締め付けられれば、まず普通の人間なら一瞬で「落ちる」。
中身テンゾウのテン子だからこそ、意識を保っていられたのだ。

「す、すまん」
ケホケホとむせているテン子の背を撫でる。
ふぅ、とひと息つくとテン子は「部屋、戻りましょう」とテンゾウの口調で言った。
「あ、ああ……」
「部屋に戻ったら、変化解いてもいいですか?」
釘を刺される。でも、オレは頷いた。
テン子は可愛いし一緒にいるのも楽しいけれど、オレの恋人はやはりテンゾウだ。
今日は任務がらみもあって、正装したテン子私服のテン子とテン子をたくさん堪能したせいか、現金なことにテンゾウが恋しくなり始めていた。

そういえば、とオレは隣に立つテン子を見る。
この姿を目の前にすれば、あれこれ楽しいたくらみが後から後から浮かんでくるが、テン子に恋焦がれるかというと、そんなことはない。
オレがテンゾウに変化をねだるのは、たいていのんびり過ごす休暇が続いて、そろそろ退屈し始めるころだ。
そしてテンゾウがまた、テン子に変化するのを嫌がるものだから、どうやって「うん」と言わせようかと考えるのも楽しい、という言ってみればゲーム感覚めいた駆け引きを楽しんでいたりもする。
だが離れているとき、テンゾウに会いたいと思いはしてもテン子に会いたいとは思わない、当然のことながら。
――はあ、オレってテン子をおもちゃにして遊んでいるだけか。
その事実に気づき、軽く落ち込んだ。

部屋に戻ると、テン子はオレを見てニッコリ笑った。
「じゃ、またね」
そう言うと、リビングルーム続きのドレッシングルームに消える。
――じゃ、またね、か。
あっさりしたものだが、きっと兄妹なんてそんなものなのだろう。
オレはベッドルームに移動して、スーツを脱ぐとベッドルーム続きのバスルームに設置されているシャワーブースに入った。
湯を溜めるタイプの浴槽もあるが、面倒なのでシャワーで済まそうと思ったのだ。
ブースのトレイに置いてあった小さな容器のシャンプー液で洗髪していると、模様ガラスの扉越しにテンゾウの姿を認めた。扉を開いて顔を出す。テンゾウはバスタブに湯を溜めている最中だ。
「風呂、はいるのか?」
「ええ。さすがに疲れたので、ゆっくり手足を伸ばしたい気分で」
ふうん、と答えながら、湯がたまるにつれてモコモコと膨れ上がる泡を眺める。
「それ、ナニ?」
「バス・バブル……だそうです。シャンプーや固形石鹸と一緒にセットされてました。けっこういい匂いですね、これ。たぶん、麝香と……」
忍らしく香料の分析をするテンゾウの言葉を聞き流し、オレはシャワーブースの扉を閉め、シャンプーを洗い流した。
テンゾウが湯を溜めてくれるなら、湯船につかりたいというのがホンネでもあった。
扉をあけてシャワーブースから出ると、バスタブに腰掛けているテンゾウの隣に腰を下ろした。
「カカシさんも一緒に入りますか」
「ああ。広いから、入れるだろ?」
そうですね、と言いながら、テンゾウはカランをひねって湯を止めた。
あわあわが、バスタブ一面を覆っている。
「ビールみたいだな」
と言うと、テンゾウが笑った。
「ビール、飲みますか? 冷蔵庫にありましたよ」
そう言いながら、オレの返事も聞かず、テンゾウはバスルームを出て行く。
引き締まった背中から腰にかけての筋肉に、ふと目がいった。

まさしく、テンゾウだ。
しっかり筋肉のついた、頼もしい背中だ。
なんだか、とびっきりのご馳走を目の間にした気分だ。

「はい、どうぞ」
2つのグラスの1つをオレに渡し、缶からビールを注いでくれる。
オレもお返しにテンゾウのグラスに注いだ。
「お疲れ様でした」
冷えたビールを一気に飲み干す。
大降りの缶からまたビールを2つのグラスに注ぎ、オレたちはバスタブに入った。

テンゾウの脚の間にすっぽり治まり、半分ほどを飲み、グラスをバスタブのふちに置く。
泡が、ふわふわと皮膚にまといついてきた。
背後から抱きかかえるようにテンゾウの腕がまわされる。その腕にも泡がついていた。
首筋にテンゾウの吐息がかかる。尾骨のあたりに熱を感じる。

泡をすくいあげたテンゾウの手で胸板をなでられ、身体に電流が走った。
「尖ってきた」
嬉しそうに言って、指先でオレの乳首を摘む。
じれったいような、痛いような感覚にオレは身を委ねる。
「気持ちいいですか?」
「ああ」と答えた自分の声が掠れているのに気づいて、オレは笑う。

何の断りも前置きもなく、オレたちは抱き合う。
唐突に始まるように見えても、オレたちにとってはごく自然な流れだ。
互いに相手を欲するとき、それは純粋な欲望だったり、昂ぶった気を鎮めるためだったり、ただ相手の命を感じるためだったり、そのときどきで理由はいろいろだ。
だがどんな理由であれ、根底にあるのは信頼であり、オレがテンゾウを思いテンゾウもオレを思っているという、その安心感だ。

オレは胸への愛撫だけに焦れて、手を伸ばし熱を持ち始めた己を握る。

「我慢できませんか?」
笑う声音でテンゾウが問う。
「ああ」
正直にオレは答える。
「だめですよ。まだ」
やんわりとテンゾウの右手がオレの手首を掴む。
多少抵抗はしたが、オレはあっさり力を抜いた。

「挿れます」
まるで、任務の経過報告のようなテンゾウの声と色気のない言葉に、なぜかオレの身体はいっそう熱くなった。

浮力があるからテンゾウの両手は軽々とオレを浮かせ、そして手を離す。
ずんと身体の奥に衝撃が走り、それは快感と言う波となって指先にまで伝わった。
こんなところで声などあげようものなら、響いて仕方がない。
だからオレは下唇を噛み、声を殺す。

苦痛を耐えるための声を殺すのはたやすいが、快感がもたらす発声を留めるのは難しい。
結果、かえって不自然なうなり声が喉からこぼれる。

「いつもながら、色っぽい声」
くすくすと笑いながら、テンゾウが軽く肩口を噛む。
その刺激にオレのつま先が浴槽を蹴った。



2009年03月14日(土)
カカシとテン子のバレンタインデイ 5)


「いらっしゃいませ」
「予約はしてないのですが、いいですか?」
「はい。どうぞ、こちらへ」
旧館の奥に位置するレストランは、夕方、お茶を飲んだティーラウンジとパティオを挟んで向かい合う位置にあった。そのパティオを臨む窓際の一番いい席に、ボクらは通された。
「へへ。テン子効果だね」
とカカシさんが笑う。
絶対、正装したカカシさん効果だと思うが、言わない。ご機嫌なカカシさんに下手に逆らって水を差すようなことはしないほうがいい。はたけカカシとの交際術、基本中の基本だ。

「とりあえず、軽く乾杯、ですかね」
席数およそ15ぐらいのこじんまりしたレストランだが、カジュアルでありながら落ち着いたつくりは居心地がいい。
部屋の何箇所かに太い柱が通っていて、それが目隠しの役目を果たしていて、どこに座っても3席ほどのこじんまりした空間になるようにデザインされている。
遅い時間の入店だったからか、客はほかに4組ほど。それももう、食事を終えてデザートを楽しんでいた。
だが、ラストオーダの時間にはまだ間がある。
ボクらは窓の外に見えるパティオの灯りを楽しみながら、シェリーで乾杯し、おまかせアンティ・パストの盛り合わせに、春キャベツとアンチョビのパスタ、そして金目鯛のソテーを平らげた。
「本日、ご来店のお客さまへのサービスです」
食後のエスプレッソコーヒーとともに供されたのは、チョコレートのムース。
こぶりなスプーンでひとさじすくって、味見がてら口に運ぶ。ほんのりとした甘さよりも、よほど濃く香るカカオ。
「甘くなくて、おいしいですよ」
ボクの言葉に、カカシさんがようやくスプーンを手にした。
「そっか。バレンタインデイだったんだっけ」
そう呟きながらムースをひとすくい。
「あ、ほんとだ、おいしい」
ふふ、と笑ってカカシさんは、ムースをすくったスプーンをボクの口元へ。
「はい、どーぞ」
あのね……と開きかけた口を閉ざして、ボクはため息ひとつ。
素早く周囲を見回し、だれもこちらを見ていないことを確かめる。
「あ〜ん」
と言うカカシさんにあわせ口を開く。差し入れられるスプーンに載せられたムースを味わう。
くやしいが、おいしいのだ、思わず、頬が緩んでしまうほど。
「では、お返しに」
ボクもすくいあげたムースをカカシさんの口元に。
けれど、カカシさんはニコニコしながら口をあけてパクとスプーンを咥える。

「お〜いし〜。テン子が食べさせてくれると、いっそうおいしいね」
そうだった。ボクは今、テン子姿だ。

普段だったら、グーで殴られているかもしれない行動を、テン子だというだけで許される。
理不尽だ、理不尽極まりない……と思いながらも、ボクは滅多に拝めないニッコニコのカカシさんの笑顔に、妥協するほかない。

どうせ自分の姿は自分で見えないのだ。
傍目にはバカップルよろしく、ムースを食べさせあうカカシさんとボクだった。

「会計は部屋につけといて」
伝票にサインをして、ボクらは席を立つ。
「あのパティオには出られるんですか?」
つい好奇心で聞いてみると
「はい。このレストランからも出ることができます。パティオを通ってお帰りになりますか?」
という答えが返って来た。
「いいね〜」
カカシさんもすっかりその気だ。
「こちらでございます」
柱の影のドアを開けてくれた。
「ありがとうございました。おやすみなさいませ」
「ごちそうさま」

ボクらは手をつないでパティオに出る。
中央に丸い池があり噴水が上がっていた。
ライトアップされた水が虹色のしぶきとなって飛び散る。
「こんなホテル、任務でもなければ泊まる機会もなかったね」
確かに木の葉の里の近辺には温泉を抱えた旅館はたくさんあり、なかには全室離れの高級旅館などもあるが、こういうホテルはない。
「テン子とデートもできたし」
ふふ、とカカシさんは含み笑いをした。
「付き合ってくれてありがとね」
そっぽを向きつぶやかれた小さな声は、あさっての夜の闇に吸い込まれていく。

あ〜、もうこのひとは!

相手をだまくらかすためのお世辞なら立て板に水のごとく出てくるし、それらしい演技もできる。
ボクも何度その手に乗せられて、危険な任務に駆り出されたことか。
なのに、どうしてこう……。

手を離してスタスタと歩いていくカカシさんの背を追いかけ、ボクは飛びついた。
テン子姿だからこそできる、大胆な行動だ。
でもこのときボクは心のそこからこのひとを愛しく思ってしまったのだ。

「わ、ちょっと何よ」
よろけるカカシさんが、肩越しに振り返り、それから困ったように笑った。
「楽しかったですよ」
「はは。顔と声はテン子でも口調はテンゾウだ」
「んー、じゃあ」
コホンと咳払いひとつ。ボクだってやればできる、できるんだ。

「楽しかったよ! おにいちゃん」

途端固まったカカシさんは急に目元をうるうるさせると抱きついたボクの腕からすり抜け、こちらを向いた。
やば、と思ったときは遅かった。
「テン子〜〜〜〜」
一声叫んだカカシさんにぎゅうぎゅうと羽交い絞めされ、窒息しかけたボクだった。

その夜?
は。ご想像におまかせします。もちろん、窒息しかけたお返しはたっぷりと、ね。

翌朝、カカシさんはいつもの逆立った髪に、それでも気を使ったのかアンダーの上にトレンチコートを着、ブーツを履いた。目は色つきのグラスで隠している。
余計あやしく見えるが、そこは指摘しないでおく。どことなくヨレっているのは、見ないふり。
ボクはもちろんテンゾウだ。
カカシさんとは異なりシャツにスラックスという私服姿で、上にステンカラーのコートを着た。
このボクを見て、昨日のミスターフィールドの奥方だとわかるひとはいまい。

チェックアウトのとき、カカシさんから離れたまたまロビーを通りかかった旅行者を装いつつ、ロビーを見回していると。
エレベーターの扉が開き、中から昨日の秘書軍団の一部、名前を知らない4人とツェット君が降りてきた。
バッチリ目が合うが、別にかまわない。長身金髪のスーツ姿が5人もそろっていれば、自然とそちらに目が行くというもの……と、ツカツカとツェット君が歩いてくる。

な、なんだ?
内心では動揺しつつ、そこは忍。表には出さず、ボクは「なんだこいつ」という顔でツェット君を見ていた。
「失礼。あの、どこかでお会いしませんでしたか?」
「さあ」
それでもマジマジとボクを見る。
と、もう一台のエレベータが開いて、アー君とほか4名の秘書君が降りてきた。ハー君はいない。
「何やってるんだ」
アー君がツェット君に声をかけ、ボクを見る。アー君の顔に浮かぶ、なんだこいつ、という表情。
「どなたかお知り合いに似ていたのではないかと」
と、ツェットくんがはっという顔をした。
「ミセス・フィールド!」
「あ? おまえ、この方のどこがミセスだ?」
アー君の突込みにもめげず、ツェットくんはボクに視線を合わせた。
「ミセス・フィールドのご縁戚の方ですか?」
内心、うっひゃ〜、と思いながら、ボクは首を傾げた。
「なんですか? それ」
「まったく、何を言ってるんだ。ほら、いくぞ。葬儀の準備で忙しいんだ。すみませんでしたね、旅のお方」
ツェット君より余程小柄なアー君にスーツの襟首を捕まれ、のけぞりながらツェット君は去っていった。

「や〜。勘のいいボウヤだったねえ」
ボソと背後からカカシさんの声。
「こういうこともありますから、カカシさん」
「ん〜」
「テン子を任務に引っ張り出すのは、考え物です」
「そうだね〜」
のんびりした声にほっとする間もなく。
「やっぱりテン子は、オレだけのものにしておいたほうがいいね〜」

……だめだ。てんでわかっちゃいない……。
きらびやかなホテルのロビーで、がっくりとうなだれるボクだった。


<了>

*二人の「めくるめく?夜」については、後日、おまけをアップしますので、しばしお待ちを!



2009年03月09日(月)
カカシとテン子のバレンタインデイ 4)


廊下を進みエレベーターでロビーのある1階に降りる。
ボクらの宿泊階を悟られないための用心、というよりは、なんとなく口直しをしたい気分だったのだろう。
カカシさんの腹立ちは、よくわかる。
そう、ボクらはまんまと利用されたのだ。
「大切な客人の接待中、静止も聞かず乱入し、商談に水を差した」という口実をつくるためのコマに。
専務の側近やそれに連なる勢力に汚点をつけるための策だったのは間違いない。
そんな依頼は受けていないから、事前の打ち合わせもない。
もしかしたら、カカシさんは秘書アー君が登場した時点で何か感づいていたのかもしれないが。
それでも、載せられたのは間違いない。

「追加料金でも請求しましょうか?」
珍しくむっつりと黙ったままのカカシさんに声をかける。
「ん〜。ま、その必要はないんじゃない。これで、架空のミスター・フィールドが舞台から自然に退場するためのお膳立てが整ったんだから」
「あ、なるほど」
そっちの後始末の必要がなくなった、ということでもあるか。
「策士だよね。それぐらいじゃないと、あの規模の企業の手綱をとることはできないんだろうけど」
話しながらボクらはパティオを囲む廊下でつながっている、このホテルの旧館に来ていた。
高層の豪華絢爛な新館と異なり、こちらは低層ながらどっしりと重厚、それでいて華やかな雰囲気を備えていた。
「へえ、いいですね、あの天井」
きらびやかなシャンデリアの代わりに、鳥や花が描かれた天井に控えめなダウンライトが設置されている。
「あ、失敗した、こっちに部屋取ればよかったかも」
しばし、歴史の重みを感じさせる内装に目をこらしていると……。

「ミスター・フィールド!」
また背後から声が聞こえた。

見交わしたカカシさんの目には、はっきりと「うんざり」という表情。きっとボクも同じだっただろう。
しかし、先ほどのアー君でもハー君でもない、若々しくはあるが落ち着いた声だ。
振り向くとカカシさんと同じぐらい、もしかしたらもう少し高いかもしれない。とにかく長身の青年だ。やはり見事な金髪だが、先ほどのアーくんとは異なり硬質な感じのブロンド。
「失礼いたしました。秘書のツェットと申します」
「まだ、何か?」
明らかに不機嫌なカカシさんの声にもめげず、ツェット君は表情を変えない。ボクはちょっと好感をもった。
「先ほどは大変失礼いたしました。お詫びの印に、お部屋をおとりしましたので、今晩はゆっくりおくつろぎください、との社長からの伝言を預かって参りました」
振り返るツェット君の影に隠れるようにホテルのベルボーイがいた。
「本館の特別室をご用意させていただきました。かつて火の国と隠れ里が協定を結んだおり、その調印のために火の国を訪れた火影さまがご宿泊されたお部屋にございます。内装は新しくしておりますが、ベッド以外の調度品は当時のまま……」
「いえ、そんなご心配はご無用です」
火の国との調印と言うぐらいだから、木の葉隠れ里の草創期、つまり泊まったのは初代さまだろう。
そんな部屋など恐れ多い。という以前に、落ち着かないだろう、きっと。
とはいえ、ホテルのベルボーイもツェット君もボクらの正体を知らない。
「しかし……失礼したままでは」
あの社長はボクらの正体を知っている。ボクらが泊まるはずはないと読んでいる、ということか。
つまり、ここまでの気遣いをボクらが断る、イコール今回の話は破談。
最良とはいえないまでも、悪くないシナリオだ。だが……。
載せられたまま、というのは、やはり腹立たしい。

「でしたら」
ボクは少し見上げるようにしてツェット君を見る。テン子姿のとき、まっすぐ視線を合わせると、なぜかたいてい相手は困ったように目をそらせるのを学んでいたからだ。果たして、ツェット君もさりげなく視線を外した。
「お部屋を拝見するだけ、というのは、いかがでしょう?」
「は?」
「お気遣いはご無用と、主人も申しております。ですが、せっかくのお申し出。その由緒あるお部屋を拝見させていただいて、このたびの記念にしたいと思うのですが」
木の葉の里の歴史に触れる機会でもあるのだ。悪くないアイデアだと思う。
「ね? いかが? あなたのお仕事の参考にもなるでしょうし」
精一杯、機嫌よくカカシさんを見ると、なぜかカカシさんまで目を逸らせた。
「そうですね。妻の言うとおりかもしれません。お部屋を拝見して、それで手打ちといきましょう」

そしてボクらは、旧館の2階に上がった。
どっしりした一枚板を使った木のテーブル、それを囲むソファ、丁寧に細工をほどこされた木のライティングビューローや、コンシェルジュデスクが配置された部屋は、しかし思ったほどきらびやかではなかった。
落ち着いた雰囲気は、むしろ火影の執務室を連想させ、思わずボクは姿勢を正す。
「右手のドアの向こうがベッドルーム、左手のドアを開けると控えの間、となっております」
ボーイが説明しながらベッドルームに続くドアをあけた、と目に飛び込んできたのは、キングサイズのダブルベッド。
ちょっと、クラッときた。あんなベッドでカカシさんとあんなことやこんなこと……。
「その奥がバスルームでございます」
好奇心に駆られて覗いてみると、猫足のついた、スタイルは旧式だがピカピカなバスタブ。
うわ、と内心で声を上げる。
いつか映画で見たような気もするシーンが脳裏を過ぎる。こんなロマンティックなバスタブでバスバブルであわあわになった湯の中でカカシさんと……。
「行くよ」
憮然とした声に我に返る。
「あ、はい」
しかし、カカシさんもほんの少し頬を染めていたのを、ボクは見逃さなかった。

「では、せめてこれだけでも」
と差し出されたは、このホテルのバーの無料チケットらしい。会計が自動的に依頼主の部屋につけられることになっているようだ。そちらはカカシさんが受け取った。
「では、私はこれで失礼します」
結局、再び、豪華絢爛なロビーに戻り、秘書君と別れた。
彼の姿がエレベータに消えるや否や、もらったチケットがカカシさんの手の中で2つに裂ける。
「これにて、任務完了! っと」
くしゃと握りつぶした手を、スーツのズボンのポケットに突っ込んで、カカシさんはやれやれといった風にボクを振り返った。
いつもの逆立った毛ではなく、流れるようにセットされた髪が片方の目を隠している。覗いているほうの濃いグレーが、ボクを捉える。
「さて、と。どうする?」
さっさと着替えたいのが本音だったが、ボクが変化を解けば、きっとカカシさんもキレイにセットした髪をくしゃくしゃとかき混ぜて、いつものアンダーに着替えてしまうだろう。
天井のシャンデリアのきらめきを映して、青やら銀やらに光るスーツを見る。
もうちょっと、この姿のままでいてほしいような……。
いや、どんな姿形であってもカカシさんはカカシさんで、だから、外見がどうのこうのとこだわっているわけではない。
それでも、正装したカカシさんには思わず見惚れてしまう。そしてほんの少し、優越感にひたる。
こんなにかっこいいカカシさんを、いまのボクは独占しているのだ、という事実。
たとえ任務上の都合であっても、たとえボクがテン子姿であっても、嬉しい。不謹慎となじられようが、嬉しいものは嬉しいのだから、仕方がない。
などとぐるぐるするボクをよそに、カカシさんは
「腹減ってない?」
と、あっさり色気のない発言をしてくれた。

だが、言われてみれば……。
こういう神経を使う任務前にはあまり重たい食事をとらない、というわけで、カカシさんもボクも、朝食は兵糧丸をかじっただけ。パーティの席では皿にとっただけで何も食べていない。影分身だ、木分身だとチャクラを使う術を駆使し任務を終え、ティーラウンジで軽食をとったのが夕方。
その後、依頼主の部屋でご馳走になったディナーはフレンチのフルコースだったが、最近の流行なのか量は抑え目で味付けも軽かった。
中性脂肪だコレステロールだ血糖値だのを気にする企業のお偉い方たちに合わせているのだろう。正直、空腹に近い状態だったボクらには、少々上品すぎた感は否めない。
「そういえば、さっき行った旧館のほうにレストランがありましたよ」
「メインダイニングは新館の、あのフレンチだよね」
「別のレストランじゃないですか?」
ボクらは再び、旧館へと移動する。
「なんだか、いったりきたり」
「ですね」
言いながら笑みを交わす。

カカシさんはボクがテン子のままでいるからか、すっかり機嫌を直した様子だ。
ボクは、なるべく自分の姿――ワンピースのすそだとか袖だとかが視界に入らないようにしながら、安堵していた。
このひとの魂胆なんてわかっている。任務は任務だが、それを終えたあとテン子姿のボクと満足するまでデートするつもりでいたはずだ、そのために偽名で部屋までとったのだから。
途中、邪魔が入り、まさかの予定外任務となったが、終わりよければすべてよしとも言う。
切り替えの早いカカシさんは、ふんふんと鼻歌まで歌っている。

何はともあれ、カカシさんの機嫌のいいことが、ボクにとっての安息でもある。
ささやかな、しかし切実な……安息。
どうか、このひとときをだれも邪魔しないでくださいという気持ちでいっぱいだ。
アー君であれツェット君であれ、その間にいる20数名の秘書君であれ、もう、さようなら。
ボクらは、あなたたちとは縁のない人間に戻ります。