カゼノトオリミチ
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窓を開ければ
湿った夜が 忍び込む
建設中のビルの灯り
尾を引くように走る車
夜の音は 集まって
街の上で低くとどろき
ひとつの黒い固まりになる
目を閉じていると やって来る
私を寝かすまいとする
頭の中の小人達を
窓からそっと 逃がしてやる
本当に ここには
誰も住んではいないのだから
今としっかり 繋がって
生きなければ
今と繋がって
時間がかかる
時間はかかる
けどでもきっと
茶色い老犬の
抜け毛のように
小さく密かにまとまるだろう
どこかのポッケや棚の隙間に
納まるほどに
春の黄色や桃色の中で
気が付けば
そのことを忘れていたと
思える時も来るだろう
いまはまだ
時間はかかる
けどでもきっと
思いは昇華を繰り返し
手のひらから
西の方へと
風にのる
きっと静かに息をする
何かにつけて
思い出す
あたたかな記憶の土に
そおっと 綿毛が
着地をするように
ちいさな音符の
ひとつだけ
耳の奥で鳴るように
立ち尽くす
何か足りないと
そりゃそうよ 大切な
身体の一部のようなもの
ひとつ ふたつ 失くして
時計の針が狂ってしまったのだから
いつ迄ここに居たらいいの
立ち尽くし 日は暮れかけて
背中の影も
ずいぶん長く 伸びている
薄ぼんやりと
灯りをともそう
小さくていい
いま 出来るだけの 光
心のままに
無理をせずに
音楽家にあこがれて
絵筆で色を奏でたり
鍵盤を 絵筆に見立てて
音で色を描いたり するのだろうか
わたしは 何も出来ないけれど
鳥になり 空を飛びたい
風を切り眼下に青い
海を見たいと
台所の水おけに 手を浸し
じゃあじゃあと 水を流して
鳥のきもちを 探しています
或る 雨の日に
結界は くずれ
いくつかの道が 突然に現れ
球は
四方に 散ってゆくよう
そんな 不安を抱え
ふるふる 雨ふり
自業自得か
自分が蒔いた 種でしょう
うすぼんやりと
哀しくもあり
でも行く道は 人の数だけあるのだから
ギターの音が
なぐさめてくれた
ぽろぽろ ぽろぽろ
灰色の空にも
光明のようなものは あるのだろうか
ゆるい坂道をゆこう
知らぬ間に
漂着したら その時
ふり返ろう
いまはまだ いまはただ
ふるふる 雨
natu
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