カゼノトオリミチ
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2013年07月25日(木) あいまいな記憶




今日も一日は

穏やかな冷気をまとい

うすむらさきのもやをまとい

暮れてゆく



ツィーツィーピピピ

スズメ達はおしゃべりに忙しく

バラの葉は透かし模様に

食されて 空が透けている

老犬は 小さな寝息をたてて

隅っこで目を閉じている



何も変わらないようで

少しずつ変わってゆく

季節も あなたがここに

いないことも そう



でも

夕焼けがこんなにきれいだったとか

冷たいビールが美味しいとか

のらネコの声が

甘い蜂蜜のように伸びているとか

日々のベールにくるまれて



なんとなく そう

なんとなく 記憶は

だんだんとあいまいに

良いところだけ残ってゆく



それは

身が朽ちて流されて

骨だけがそこに 残るかのよう

その姿は 

やっぱり あなたなのだけど






2013年07月19日(金) ここにいること。




山並みから

吹く風は 緑のじゅうたんを

優しく揺らし

また 空へと帰る


みあげる頬に

髪が舞って

高く黙って 雲たちは行く



いまここにいる

この時は

自分の中にどんな形で

記憶されて ゆくのかな

いまここにいる

この時をいつか

ふり返れる日が くるのかな



あの時 あの場所が

あったから

今の自分が居るんだと

そう思える日が

くるのかな



きっと来る きっと

だってそうやって

今までも

生きてきたのだもの


知らぬ間に 過ぎた時に

寄り添われて

励まされて




2013年07月10日(水) ぽーん





ぽーん と投げて

ぽーん とかえる

そんなことは まれで

たいていは

ぽーん と投げたら

そのまま

空へのぼってく

すぴーちばるーん

誰色に 染めたいの

ワタシの色に 染めたいの

それはただの

ジコチューでしょう

空へ上った

すぴーちばるーん

もうけっこうな数

空を

埋めつくしている

風にゆられて

波のようにも 見えるね





2013年07月04日(木) 糸と針で





静寂がアジサイの

ムラサキに降る 午後

細い糸に細い針

それは 梅雨の雨糸のよう

キーイ キーイ

鳴き交わす オナガの色は

そういえば

選んだ糸と 同じだね

青と くすんだ水いろ

縦と横に 針は動く

こうしてだまって

時が布に 記されてゆく

だからといって

大した意味などないの

ただ チクタクと

こぼれる時が

風に散ってゆかぬようにと

縫い付けて

ゆくだけのこと





natu