2009年06月30日(火) |
女子高生制服スカートに滴り落ちる汗 |
先週、近くの高校へ歯科検診に行ってきました。皆さんご記憶のことと思いますが、毎年この時期、全国各地の幼稚園から小学校、中学校、高校では定期健康診査が行われています。身長、体重といった体の測定から内科、眼科、視力検査、聴力検査などの中に必ず歯科検診が行われます。授業の合間にこれら検診が入り、体育館や保健室といった測定室に受けたことがあることでしょう。これら定期健康診査は基本的には6月30日までに行うことになっています。学校保健法施行規則により定められているのです。
今回の高校もそうした定期健康診査の一環として僕は検診医の一人として参加してきました。各学校には学校歯科医がいるのですが、1000人近くいる生徒を一人の学校歯科医が検診するのは何日もかかります。学校側としては、授業の合間に検診をするわけですから少しでも授業を無駄にしたくありません。一日で検診が済ませられるならそうして欲しい。このような状況から検診には学校歯科医だけでなく何人かの応援検診医が検診に参加します。地元歯科医師会では地元教育委員会と相談をしながら、会員の歯科医に対し、地元幼稚園、小学校、中学校、高校の歯科検診に参加する応援検診医を割り振っています。今回、僕は近くの高校への応援検診医として参加するのも地元歯科医師会からの割り振りのためでした。
さて、検診ですが梅雨の時期とはいうものの非常に天候に恵まれました。快晴だったのです。これは歯科検診にとっては非常に好都合です。なぜなら、暗い口の中を覗くのに外が少しでも明るいと検診しやすいからです。いつも診療する診療室では室内のライトのみならず、専用ライトで口の中を照らしています。非常に明るい環境で口の中を見ているわけですが、検診となるとそうはいきません。限られた明るさで口の中を見るのです。よく検診は体育館の中で行うことがありますが、これは検診医にとっては大変です。体育館の中は暗く、更に暗い口の中を見るのに四苦八苦します。 今回の検診では快晴で、しかも検診を行った部屋が白く明るい部屋でした。そのため、口の中が見やすく、普段見落としがちな所までも見ることができたくらいでした。 ただし、昼からの検診ということで気温が上がったこと。しかも、使い捨てグローブをしながら体温の高い高校生の口の中の検診ということで手の中が蒸せてしまい、時間が経過するとともに手は汗まみれ。汗まみれだけならまだしも、次第にグローブの袖の所から汗が滴り落ちてしまうのです。短時間で多くの生徒の検診を行う必要があるため、グローブを交換する暇がありません。汗を拭う余裕も無く、生徒の中には男子生徒のズボンや女子生徒のスカートの上に僕のグローブからの汗が滴り落ちてしまいました。僕としては非常に気になりました。いくら検診とはいえ、生徒たちの制服を汚してしまったわけですから。 申し訳ない!と思いながらも冷や汗ならぬ本当の汗をかき続け、ひたすら検診を行っていた歯医者そうさん。
そのうち、汗の量が多かったせいか汗が出なくなり、何とか検診を終えたのですが、それでも検診を終えた後、グローブの中には大量の汗が残り、僕の指先は風呂に入った後のようにふやけておりました。 初夏の検診は汗との戦いでもあります。
2009年06月29日(月) |
顔が知られている怖さ |
昨日、愚弟夫婦が我が家に遊びに来ました。仕事の都合でなかなか会えない愚弟ですが、昨日は久しぶりに休みだということで我が家を訪れたのですが、その際、義理の妹が僕にこんなことを言ったのです。
「私の知人でお兄さんの姿を見たという人が何人もいますよ。」 「どういうことなの?」 「○○書店で本を読んでいたりとか△△センター(某ショッピングモールのこと)で子供さんを連れて買物をしていたとかいうことを聞いたのですよ。」 「確かにその本屋さんやショッピングモールを訪れることはあるんだけど、どうして僕の顔を知っていたんだろう?」 「兄さん、3年前に○△幼稚園のPTA会長をしていたでしょ。それで顔が知られているんですよ。」
義理の妹の話によれば、知人の中には子弟に○△幼稚園の園児だった人が何人もいて、3年前でも僕がPTA会長だった時のことを覚えているとのこと。僕が全く見ず知らずの人でも、相手からすれば僕は顔が知られている有名人なのだとか。
この話を聞いて僕は怖くなりました。僕自身、何も後ろめたいことをしていることは無いのですが、自分の何気ない行動を自分が知らない人から見られていることがある。それも、かなりの確率で見られている。こんなことになるのだったらPTA会長なんて引き受けなければよかったと思うのは後の祭りかもしれません。
僕などは一地区のローカルな場所で顔が知られているだけの話ですが、もっとテレビや映画、ビデオといった映像などで顔が知られている人の場合、さぞかし毎日の生活に気苦労が絶えないだろうなあと感じます。仕事で顔が知られているだけに、プライベートでちょっとぶらぶらして息抜きしようとしても常に衆人環視されているのは、精神的に大変であることが容易に想像つきます。
とは言うものの、全く何処にも立ち寄らず家や仕事場で閉じこもるわけにもいきません。常に周囲から見られていることをある程度割り切って外に出かけるしかないでしょうが、それにしても顔が知られているのはつらい。油断も隙も無いものです。
2009年06月26日(金) |
ファラ・フォーセットとマイケル・ジャクソンの死 |
今朝何気なく見たニュース。びっくりしました。ファラ・フォーセットの死とマイケル・ジャクソンの死。
先日の三沢光晴の時もそうでしたが、ファラ・フォーセットとマイケル・ジャクソンとも僕の青春時代憧れのスターたちでした。抜群のスタイルと金髪の美貌に憧れたファラ・フォーセット。優れた歌唱力とダンスで一世風靡したマイケル・ジャクソン。そんな二人も気が付けば62歳、50歳で今では過去の人となりつつあったのですが、いざ死去が伝えられるとやはり寂しい。自分がそれだけ年を取ったということにもなるのですが、人間って寿命があるのだなあということを改めて強く感じさせられます。
二人の死に哀悼の意をささげます。合掌
2009年06月25日(木) |
妙齢女性の強烈なオナラ |
昨日、某所へ出かけるため電車に乗っていた時のことです。当初、電車の中は込んでおり僕は立っていました。某駅に電車が停車した際、たまたま僕が立っていた目の前の座席の方が席を立ちました。僕は直ぐに空いた席に座りました。最近、何かと雑用が多く、わずかな時間でも仮眠できればと思い座ったのです。
電車の揺れというのは時に心地よいものです。特に疲れて眠気がある場合、眠りを誘発するような程度の間隔と大きさの揺れです。僕も直ぐに眠ろうとしたその時のことでした。何やら異臭を感じました。一体何だろう?と思っていたのですが、その異臭、非常に臭い!明らかに周囲の人からのオナラでした。目をつぶりながらオナラの方向を探ってみると、どうも僕の座っている座席の右方向からでした。何気なく目を開け、右方向を見るとそこには妙齢の女性が座っていました。その他に数人会社員の男性が立っていたのです。このオナラはこの中の誰かだろうなあ?と思っていたのですが、誰一人として平然としておりました。こちらも“誰が臭いオナラをしたんだ!”とも叫ぶこともできず、ただひたすらニオイが消えるのを待つのみ。
そのようなことを考えているうちに電車は別の駅に停車。僕の隣に座っていた妙齢の女性は立ち上がり降りていったのですが、立ち上がった瞬間、わかりました。オナラはこの女性が座っていた辺りが原因でした。オナラの一部が残っており、消えかけていたオナラがまた少し臭ったのでした。
きっとこの妙齢の女性、お腹の調子が悪かったのでしょう。いつもは衆人環境の中で我慢しているオナラが思わず出てしまったのか、出さざるをえない状況にあったことでしょう。もしそうであれば同情します。僕も何度もそんな経験があるものですから。下車したのも何かこのオナラがらみのことがあったのかもしれませんが、それにしてもなかなかに強烈な異臭のオナラ。思わず眠気が吹き飛んでしまった歯医者そうさんでした。
2009年06月24日(水) |
健康であることは考えもの? |
先日、地元歯科医師会が行っている休日診療所で出務した時のことでした。ある患者さんが歯が痛いということで来院しました。年齢は40過ぎぐらい。その患者さん、見るからにそわそわと落ち着きの無い状態で明らかに緊張していました。誰しも歯医者に来るのは緊張するものですが、それにしても過度に緊張しているのではないか?と思わせるような素振りを見せていたのです。大きな大人にしては変だなあと感じたくらいでした。
実際にその患者さんの口の中を見ていると、一本の歯に穴が空いていました。むし歯だったわけです。このむし歯が原因の歯痛だったのですが、問題があったのはこの一本の歯だけで他の歯は問題がありませんでした。問題がないだけではなく、全く治療の痕が無かったのです。問診の際、僕は尋ねてみました。
「今まで歯医者にかかったことはありますか?」 「実は、今回生まれて初めて歯医者にかかっているもので・・・・。」
過度の緊張の理由はここにありました。この方、歯が健康で生まれてから40年以上歯医者にかかったことがなかったのです。ところが、ある時、歯に穴が空いていたことに気がついたそうですが、これがむし歯であるとは思わず放置していたところ、歯痛を感じたそうです。最初は自然に治るかと思っていたそうですが、痛みは酷くなるばかり。一念発起して生まれて初めて歯医者を訪れたとのこと。
僕は歯の状態を説明し、麻酔をして神経を処置しないと痛みが治まらない。それくらいむし歯が深く進行していることを説明しました。その患者さん、痛みを取り除いて欲しいということで問題の歯の治療をすることを同意してくれたのですが、問題は治療をする時でした。 いざ口を開けてもらったのですが、顔はこわばり、頬は緊張して強張っていました。力を抜くように言いましたが、本人はわかっているつもりでも全く変わらず。そのピークは麻酔注射をした時でした。麻酔注射液を入れた際、本人は思わず大きな声で
「オ〜!」
生まれて初めての麻酔だったようで、その痛さに思わず叫んでしまわれたようです。目から涙が溢れ出て、麻酔が終わった頃には放心状態になられていました。 歯を削る際、“キーン”という高音を発するタービンの音にもビクビクされていたのですが、麻酔が効き痛みを感じなかったせいか、徐々に落ち着かれ、治療が終了する頃には少しは緊張が取れていたみたいでした。
治療終了後、この患者さんには治療後の注意事項とその後の治療を他の歯科医院で診てもらうことを指導しました。何せ休日診療所は応急診療しか行っていませんので、応急処置後の処置は他の歯科医院で行ってもらうことを前提としているものですから。
以前、歯医者仲間とむし歯が無くなったらどうなるのだろうか?という話をしたことがあります。歯医者としてはむし歯が無くなることは理想である反面、飯を食っていけなくなるんじゃないかという話をしていました。この話の中である先生がこんなことを言っていました。
「むし歯がほとんどなくなった北欧の某国では新たな問題が出てきたんだよ。それはむし歯を知らない若者が増えてきたんだね。以前であればむし歯といえば誰でも歯に穴が空いた状態であり、放置しておくと痛みが出てくることは容易に想像できたのだけど、むし歯という病気が少なくなると、歯に穴が空いてもむし歯という自覚がなく、そのまま放置してしまう若者が増えてきているらしい。これが新たな社会問題になりつつあるのが現状らしいよ。」
「病気に罹らず健康であることは誰しも願うことだけども、いざ健康になってしまうと病気のことを考えなくなってしまうかもしれないね。病気というリスクというのは健康を維持するための適度な緊張として無くてはならないものかもしれないと思うようになってきたよ。病気の無い健康な体を持つことは理想だけども、いざ健康になったとしても病気に対する備えや知識は常に持ち意識することは大切だと思うよ。そういった意味で、歯医者はいつまでも必要とされる職業になるのではないかと思うのだけど。ただ、今の日本では歯医者の数は過剰だけどもね。」
2009年06月23日(火) |
取り急ぎ更新報告まで |
忙しいという言葉を使うことが好きではない歯医者そうさんですが、最近、非常に雑用が多く、暇ではありません。まともに休日を取っていないくらいです。
今日もこれからある所用のため出かけなければならないのですが、自分の日記のことは気になったので合間をみての更新です。内容の無い日記で申し訳ありませんが、取り急ぎの更新報告といったところです。
2009年06月22日(月) |
先生という言葉は便利 |
今月から僕は某所で新しい仕事をし始めています。数ヶ月前に地元歯科医師会の上司から頼まれた仕事ではあるのですが、先々週から先週末にかけて数日間仕事をしてきました。仕事の詳細を書くことはできないのですが、そこでは他地区の歯科医師会の代表の方と一緒に仕事をするのです。
その組織では、僕は全くの新米です。右も左もわからない新人ですから末席で大人しくしながらの仕事です。仕事の内容を把握しながら少しでも早く新しい仕事を覚えようと必死でしたが、それ以上に気を遣うことがありました。それは、周囲の人たちが僕よりも年上だったのです。僕は今年43歳になったのですが、そんな僕が最も年齢が若いのです。大半の出席者は40歳代後半から60歳にかけて。如何にこの仕事が歯医者のベテランが多いかということがおわかり頂けるのではないでしょうか。新しい仕事に対するプレッシャーと周囲の先輩歯医者に対する気疲れからか、今朝は全く疲れが抜けないままの週明けとなっております。
そんな新しい仕事ではありましたが、改めて感じたことがありました。それは“先生”という言葉です。何せ僕は全くの新人です。周囲の人たちの顔と名前が全く一致しません。それぞれの出席者は名札がついてはいたのですが、やはり組織になじもうとすれば出席者の顔と名前を覚えながら、その人の性格や育ちなども見ていかないといけません。 僕が記憶力が良ければいいのですが、記憶力が悪い僕は一度や二度で人の顔と名前を覚えることが苦手。そんな時役に立つのが“先生”という言葉です。出席者は全員が歯医者の先生です。僕を含め歯医者は常日頃、周囲から“先生”と呼ばれています。ずっと“先生”と呼ばれていますから、“先生”という言葉に対して違和感がありません。 しかも、“先生”にはある程度の気遣いが含まれています。相手を立てるというニュアンスも含まれています。それ故、“先生”と呼ばれているといつのまにか自分が偉いと勘違いしてしまい、周囲に対して上から目線になってしますリスクはありますが、今回のような会議では非常に重宝します。全く顔を知らない出席者に話しかける時に、“先生”と話しかければ、どんな方でも嫌な顔をせずに相手をしてくれるわけですから。
冷静に考えれば異様なことかもしれません。けれども、歯医者の世界、いや医療や教育、法曹界、政治の世界でも言えることでしょうが、これら全く見ず知らずの業界人に対する“先生”という呼称は非常に便利なものであると、改めて感じた次第です。
2009年06月19日(金) |
口元専門モデルがあってもいいのでは? |
先日、よく立ち寄る書店を何気なく見ていると、非常に多くの女性誌が置いてあるのに気が付きました。これら表紙には有名女優やモデルがにこやかに笑みを浮かべながらポーズを取った写真ばかりなのですが、どの被写体も細身のスタイルであることに気が付かされます。僕はモデルのことはよくわからないのですが、これら有名女優やモデルを実際に見てみれば非常に細身の方たちばかりではないかと思います。細身でスタイルのバランスが取れていれば、写真うつりが良く、様々な服やアクセサリーが着こなしているように見えるのでしょう。このような写真を見ながらふと思いついたことがありました。
こうした有名女優やモデルさんですが、体の全てが美しいかと問われれば意外と違ったりするものです。世の中に指先や手、足だけのモデルという人たちが存在するのはそのためで、同じモデルを写しているように見えている写真でも、実際は指先だけは別人なんてことがしょっちゅうあるようです。
ところで、以前から何度も書いていますが、日本人の8割以上は歯周病に罹っています。また、むし歯になったり治療を受け、詰め物や被せ歯をしている人の数も同等かそれ以上いるとされています。別の見方をすれば、全く歯が治療をされず、健康な歯や歯肉を維持している人は非常に限られているということになります。 書店の女性雑誌を見ながら歯医者そうさんがふと感じたことは、健康な歯や口を持った専門モデルという人たちがいてもいいのではないかということでした。
以前から有名人口元チェックなるネタを何度も取り上げてきましたが、有名人と呼ばれる人はほとんどが何らかの歯の治療を受けているといっても過言ではないくらいです。最近の審美歯科の進歩により一般の方には本物の歯かわからないように見える歯でも実際は被せ歯であることがあるもの。人気女優やモデルでも口元を見てみると、歯に全く治療痕が見られない、健康な歯茎を持ち、歯並び、かみ合わせが良い人はほとんどいません。 それならば、口元だけを専門とするモデルがいてもいいのではないか?芸能人は歯が命というキャッチコピーが流行りましたが、口元がおしゃれに、化粧に与える影響は意外と大きなもの。笑顔がすてきなのに口元が健康でなければ、笑顔の魅力も半減してしまうかもしれません。
指先だけや足専門モデルがあるくらいですから、口元専門モデルも既に存在しているかもしれませんが、もしまだそのようなモデルがいないのであれば、非常に希少価値であり、重宝がられるのではないかなあと感じた、歯医者そうさんでした。
「先生、こんなことを言うと情けないのですが・・・」
唐突に言い出したのはうちの歯科医院に出入りしている某歯科材料店の担当者B君。
開業歯科医院には必ずといっていいほど取引をしている歯科材料店があります。歯科治療に関わる器具、材料、消耗品などを扱うのが歯科材料店なのですが、各歯科材料店には歯科医院ごとに担当者がおり、定期的に契約している歯科医院をまわっては歯科医院で必要な器具、材料、消耗品などを尋ね、商品の手配をし、持参してくれるのです。 歯科材料店の役割はそれだけではありません。様々な歯科関係の情報を集め、契約歯科医院に伝えたり、商品の案内や講演会などの紹介などもしてくれます。 うちの歯科医院にも2社の歯科材料店と契約しているのですが、そのうちの一社の担当者がB君です。日頃から何かとお世話になっているB君。こちらの無理な注文や器具の調整、修理などにも嫌な顔一つせず取り扱ってくれています。 そんなB君の突然の申し出に僕は戸惑いました。
「この不景気でうちの歯科材料店も売り上げが落ちまして、正直言って大変苦しい状況になっています。いろいろと会社の中でも努力はしているのですが、その努力もかなり限界まで来ております。」 「それはよくわかるよ。どこの歯科医院でも経営に四苦八苦しているのが現状だから、歯科材料店もその影響を受けるのは必至だよね。」 「先生にはいつも大変お世話になっております。そんな先生にこんなことを言うのは申し訳なく思うのですが、どうか何か入用のものがありましたら、これまで以上に弊社の方へ注文をお願いしたいのです。厚かましいお願いであることは重々承知ですし、各歯科医院の先生方の経営状況も決して楽ではないこともわかっております。ただ、我々も生活がかかっているもので、何とかこれまで以上に今までのお取り先の先生方に何とかお力を貸して頂けないか、お願いにまわっている次第です。先生、何卒宜しくお願い申し上げます。」
深々と頭を下げ、よく見ると涙目になっているような表情のB君。
正直言って、うちの歯科医院も経営状態は決して芳しくありません。少しでも経費を見直そうと、いろいろな物品、器具、薬品等の見直しをしてきました。少しでも経費を安くしながらも、金をかけなければいけない部分もあります。そのバランスが難しいのですが、以前と比べれば契約をしている歯科材料店への注文は控えめになってきたのも事実です。 B君の会社の経営状態の詳細は知りませんが、彼が全面的に嘘をついているようには思えませんでした。現在の歯科業界の状況を考えれば、歯科材料店の経営も順風満帆という会社は多くはなく、むしろ少数派でしょう。 うちの歯科医院にも歯科医院の実情がある一方、泣きの戦術は人の情に訴えるもの。正面から泣きを入れられてもクールに対応すればいいのですが、これまでのB君との付き合いを考えるとそういうわけにもいかず。
経営のことを考えながら、少しはB君に注文を回せるようにしないといけないなあと感じた、歯医者そうさんでした。
2009年06月17日(水) |
男性専用車両導入への違和感 |
昨日、何気なくいつも見ているニュースサイトを見ていると、下のような記事が出ていました。以下、この記事からの引用です。
西武鉄道を傘下に持つ西武ホールディングス(HD)が24日開催する2009年度の株主総会に、「男性専用車両」の設置を求める異例の株主提案が提出される。痴漢の冤罪(えんざい)を防ぐためというのが提案の理由で、今回が3度目。賛同者も広がっているという。 同社の招集通知によると、剰余金の配当や取締役の選任といった議案に続いて「女性専用車両および男性専用車両の設置」という項目が株主10人からの提案という形で記載されている。 提案理由として「痴漢対策は女性専用車両の設置などにより、一定の成果をあげているが、痴漢冤罪対策は全くなされていない」と指摘。さらに、男性専用車両の設置は費用も安価などと定款への記載を求めている。 これに対し、同社取締役会は「個別課題を定款に記載することは不適当」と反対の姿勢だ。マナー向上のためのポスターなど犯罪防止活動が一定の効果を上げている上、「利用者からの要望も少ない」とそっけない。 ただ、株主側によると、08年度の株主総会では、同株主提案に対し、書面投票した株主の47.5%にあたる1703人が賛成している。株主総会で定款変更のためには、議決権の3分の2の賛同が必要。西武HDの株式は約32%を米投資ファンド、サーベラスが保有しており、実現のためにはまずこの厚い壁を崩す必要もある。
最近、大手の鉄道会社では当たり前のように設置されている女性専用車両。当初、女性専用車両の導入に関しては賛否両論があったようですが、上の記事に書いてあるように、女性専用車両は鉄道を利用する女性にとっては概ね好評のようです。以前、知人女性の何人かに女性専用車両について尋ねたことがありますが、朝夕のラッシュアワーで女性専用車両があることは有難いことだと言っておりました。
女性専用車両があるなら男性専用車両も設置すればいいじゃないか?この発想に関しては僕は反対はしません。一つの興味深い試みとして導入しても問題はないのではないかと考えます。
ただ、気になるのは男性専用車両を導入する理由です。女性専用車両が痴漢被害防止のために導入されたのは周知のことですが、男性専用車両に関しては痴漢冤罪対策のためだというのです。僕は痴漢冤罪がどれくらいあるのか詳細を知りません。昨今、痴漢事件で冤罪だったと無罪判決があったニュースは知っています。被害者と言われていた女性の供述に信憑性が無いことを判決では述べていましたが、このようなでっち上げの痴漢冤罪事件が頻発しているならば男性専用車両の導入も可能性としてはあるかなと感じます。
こうした背景には一向に無くならない痴漢行為があるのは言うまでもありません。世の中には一種の病気のような人がいて、痴漢が常習になっているような人もいるのは事実です。女性がこのような痴漢常習者に悩まされることは本当に心が痛い。自らの身を守る意味での女性専用車両というのは僕も理解ができるのです。 ただ、世の中にはいろいろと考える輩がいるようで、一向に減らない痴漢行為を逆手に取っ手何もしていないのに痴漢に仕立て上げられるケースがあるのも事実のようです。こうした痴漢冤罪防止のために男性専用車両を導入する必要があるという主張。
こうした男性専用車両を導入せざるをえない状況に、正直言って僕は違和感を覚えます。そこまでして、男女を隔離するような専用車両を作らないと、男女は信用できないのだろうか?そこまでするのは行き過ぎではないだろうか?ここまで世の中は殺伐としているのかと思わざるをえないのです。
世の中なるべく性差別を無くそうというジェンダーフリーの考えは、いろいろと議論が分かれるところではありますが、徐々に少しずつ世の中に浸透しつつあるように思います。その一方、公共輸送機関の一つである鉄道にはそれぞれの性専用車両を設ける。いくら痴漢防止や痴漢冤罪対策のためだとはいえ、男性専用車両が設けられれば、話はこれだけに留まらないような気がしてならないのです。別の意味での性差別問題が起こるきっかけになりはしないだろうか?そんな危惧を覚えるのです。
僕の危惧は杞憂なのかもしれません。杞憂であって欲しいとは思いますが、鉄道という公共機関でそれぞれの性専用車両が設けられれば、性差別が無くなる世の中の実現というのは、更に遠のくかもしれないと感じた、歯医者そうさんでした。
昨日、うちの歯科医院に予約が無いまま突然来院された女性患者さんがいました。後でこの時のことを受付に尋ねると、
「『見ただけで、先生に何とかしてあげて欲しい』と思いましたよ。」
予約患者さんの合間に急患として治療をしたのですが、診療室に入室するや否や僕も思わず尋ねました。
「大丈夫ですか?」
上唇が脹れ、上の前歯の1本が折れていました。下顎の皮膚も擦り傷があり、まともに顔面を強打したのは明らかでした。口の中は前歯からの出血で血まみれ。出血は止まっていたようですが、出血した血が歯肉を被う様な状態でした。 手短に問診したところ、どうも後から走ってきた子供の自転車に突然ぶつけられたとのこと。自転車の前輪に突然足がはさまり、前方の路上へ転倒してしまった。手に荷物を持っていたため手が間に合わず、顔面を強打したというのです。 しかも、加害者は自分の子供とのこと。加害者に責任はあると言っても強いことが言えるわけでもなく、子供を放置するわけにもいかず、うちの歯科医院に一緒に連れてきたとのこと。加害者の子供は待合室で大人しそうにゲームをしながら待っていたようです。
全く不運としかいいようが無いアクシデントでしょう。僕は直ぐに口の中と顔面の骨の状態を調べました。顔面に関しては、幸いなことに骨折は認めず、傷口も裂けていませんでした。内出血により唇は脹れていたものの、出血は既に止まっており、これは傷口を消毒し、抗生物質や痛み止めを飲んでもらうことで対処。 問題は口の中でした。口の中の血を清潔ガーゼで拭い取ると、粘膜の一部が裂けている部分がありました。この部分は麻酔をしながら縫合糸で縫合しているうちに止血を確認。歯に関しては、2本の上の前歯が欠けていましたが、そのうちの一本は先端の一部が欠けていただけだったため、欠けていた部分を充填するだけで済みました。さあ、残りの一本ですが、これが歯の半分以上が割れており、しかも、割れ目からは歯の中の神経が見えておりました。このような場合、神経を取らないと痛みが治まりません。患者さんには事情を説明し、麻酔を効かせた後、神経の処置を行いました。
治療終了後、血まみれだった口の中からはほとんど血の姿が消えていました。顔面の擦り傷や唇の脹れは治まっていませんでしたが、これは時間の経過とともに落ち着いてくることを患者さんには説明し、処方した薬を飲みながら、歯の治療には当分通ってもらうことをお願いしました。
お母さん、ただただ頭を下げておられましたが、それにしても女性にとって顔は非常に大切なものの一つ。いくら子供の自転車が原因だったとはいえ、思わぬアクシデントにはさぞかしショックだったことでしょう。顔面の脹れや傷は時間が経つとともに自然に治ってくることでしょう。歯に関しては、神経を処置した歯は被せ歯にする必要があるかもしれません。全てが元通りというわけにはいかないでしょうが、一日も早く怪我から回復されることを祈りつつ、歯の治療をしていきたいと思った、歯医者そうさんでした。
先日、自室の部屋を整理したのですが、その際、大量に処分したものがありました。それはプロレス関係の雑誌。週刊プロレス、週刊ファイト、週刊ゴング等々。学生時代、毎週のように買っていたプロレス雑誌でした。処分する前、パラパラとこれら雑誌をめくりながらふと学生時代のことを思い出しました。
学生時代、僕はプロレスにのめり込んでいた時期がありました。プロレスにのめり込むといっても自分でプロレスをするわけではありません。そもそも、僕はひ弱で痛い事をすることが嫌いですから。プロレスを見ることに熱中していたのです。僕の学生時代、テレビではプロレス中継がありました。今では信じられませんが、テレビのゴールデンタイムと呼ばれる時間帯にプロレスの試合の生中継があったくらいです。テレビの娯楽の一つとしてプロレスが存在していたのです。当時、プロレスの団体は主に、アントニオ猪木が社長を務めていた新日本プロレスとジャイアント馬場が代表をしていた全日本プロレスがあり、お互いがテレビ中継をしていました。この二つの会社、犬猿の中のようなところがありまして、お互いに交流することはなく、むしろお互いの人気選手を引き抜くようなところがあったぐらいです。お互いが非常に意識をしながら、単独でプロレス興行をしていたのです。 そのような中、新日本プロレスがジュニアヘビー級というジャンルを開拓し、ある人気レスラーを輩出しました。タイガーマスクです。以前から人気のあった漫画の主人公をそのままレスラーにしたてあげたのですが、ヘビー級とは違う身の軽さを利用していろいろな空中技を駆使し、人気を博しました。初代タイガーマスクの誕生です。初代タイガーマスクの正体は佐山サトルというレスラーで、今佐山サトルはプロレスから離れ、総合格闘技の道を歩んでおります。 これを見た、全日本プロレスは初代タイガーマスクが姿を消すやいなやタイガーマスクを登場させました。明らかに新日本プロレスを意識したジャイアント馬場の意向で、全日本プロレスの若手でジュニアヘビー級クラスの選手を二代目タイガーマスクに仕立てたのです。この二代目タイガーマスクが三沢光晴でした。
その後、二代目タイガーマスクとして活躍した三沢光晴はヘビー級に転向する直前にマスクを脱ぎ、本名でプロレス界で活躍することになります。ジャイアント馬場が亡くなってからは、諸事情により全日本プロレスから退団、新団体プロレスリング・ノアを結成、社長として団体を経営しながら選手としてもリングに上がり続けていました。
もともと三沢光晴は非常にタフなレスラーで数十分にわたる試合が連日続いても平然とした態度で試合に活躍していました。相手の技も受けながら、試合を作り、最後は観客を盛り上げ、勝利するという試合パターンは多くのプロレスファンを魅了していました。僕もそんなファンの一人だったのです。 そんな三沢光晴が突然鬼籍に入るとは思いも寄りませんでした。あるタッグマッチの試合中、相手選手から受けたバックドロップが後頭部を直撃。直後意識を失い、帰らぬ人となったのです。 三沢光晴は受身が非常に上手いレスラーでした。それ故、相手の技を受けながらも長時間の試合をこなすことができたのだと思いますが、そんな三沢光晴も47歳を迎えようとしていました。既にプロレスラーとしては体力の頂点は過ぎており、正直言ってタフな長時間にわたるプロレスの試合はしんどい年齢だったはずです。何でも今回の試合でも精彩を欠いていたそうですが、そんな中で相手選手が仕掛けたバックドロップでまともに後頭部がリング上に直撃してしまったようです。これはアクシデントとしかいいようがありません。
アクシデントとしかいいようがありませんが、それにしても早すぎる三沢光晴の死。実際に何度も三沢光晴の試合を見た僕にとっては、何だか青春の一ページが目の前から突然消えたような気がしてなりません。本当にショックです。
今はただただ三沢光晴の冥福を祈るのみです。合掌
2009年06月11日(木) |
嫁さんの瞬間声変わり |
先日の朝のことでした。仕事へ出かけようと身支度をしていると我が家の電話が鳴りました。側で化粧をしていた嫁さんは僕に言いました。
「そうさん、電話に出てよ。」
仕事の時間が迫っていた僕は電話に出ませんでした。“いい加減にしてほしい”という不機嫌そうな顔をしながら、しびれを切らした嫁さんはかかってきた電話の受話器を上げたのです。電話に出た瞬間
「○○さん、いつもお世話になっております・・・・。」
この日記がテキストなのでこの会話の状態が再現できないのが極めて残念なのですが、嫁さんの声のトーンは、一瞬にして明らかに、劇的に変わりました。電話の直前までの不機嫌そうな低い声から電話では如何にもさわやかな、余所行きの声に変わったのです。その声の変わりようといったら・・・。
少年の場合、中学生の頃に声変わりがあります。それまでの幼い声から低いトーンの声になり、一気に大人になる変化の一つとなるのですが、嫁さんの場合も見事なくらいの声変わり。少年の場合、徐々に声色は低いトーンになりますが、嫁さんの場合、声色は高いトーンへ。しかも、一瞬にして変わるという速さ。直前の僕と話をしていたあの声は一体何処に行ったの?と言いたいばかりの身の変わりの速さに今更ながら開いた口が開かなかった歯医者そうさん。
電話終了後、嫁さんのそのことを指摘すると
「これは条件反射ってやつよね。身内以外の方には地声は出せないわ、ハッハッハ・・・。」
皆さんのお宅でも、瞬間声変わりの方はいらっしゃるでしょうか?
2009年06月10日(水) |
大病する人は歯が悪い? |
最近、ひょんなことから近所の病院からの紹介患者を受け入れています。歯医者として本音を言えば、患者さんは体にリスクの無い方である方がいいのです。診療中、患者さんが急変することは歯医者にとって非常に怖いことですから。ただし、近所の病院は非常に配慮がなされていて、紹介患者さんの詳細な紹介状があり、病状が安定している方を紹介してくれます。しかも、何か問題が生ずれば責任を持って対処することを言ってくれています。僕の方も、それなりの態勢を取って診療をしていますが、非常に心強い限り。このような紹介患者さんは、返って安心して診療ができるものです。むしろ、自分が持っている病気のことを何も言わなかったり、無自覚である患者さんの方が怖いのです。
この近所の病院からの紹介患者さんですが、総じて歯の状態が芳しくありません。このことは患者さんも自覚していたようですが、他の病気の影響で歯医者に通うこともできず放置していた方がほとんどです。治療の冒頭に、患者さんには通院治療期間が長期にわたることを説明するのですが、説明しながら感じるのは、これら患者さんがどうして歯が悪くなったのか?という疑問です。 確かに他の病気の影響で歯がぼろぼろになったことは考えられなくはありません。口や歯も体の一部。全身の健康状態の影響を受けるのは自然のことだと言えるでしょう。大病をして体に劇的な変化が生ずれば、口の中にも何らかの変化があっても不思議ではありません。 その一方で疑問に感じるのは、果たして目の前にする悲惨な口の中の状態が果たして大病の影響なのかということです。実際は、長年にわたって徐々に歯の状態が悪化し、大病を境にして一気に悪化したのではないだろうか?と感じるのです。 何度も書いたことですが、今や日本人の8割以上が歯周病です。これは非常にショッキングなことではあるのですが、多くの人が無自覚であったり気にはしていても積極的に治療を受けなかったり放置しているのが現状です。その影響でしょう、40〜50歳ぐらいから歯を失う方が増えてくるのです。また、むし歯においても年齢の上昇とともに本数が多くなる傾向は今も変わっていません。歯を削れば削るほど歯の耐久性は悪くなるのです。そうなれば、年を重ねるとともに歯を失う確率が高くなる。
大病をする背景には、日頃の生活習慣が大きく影響をしていることは確かです。多くの方は生活のために体に異常を感じていても敢えて無視したり、放置しながらも日々の生活のために働いているのが現状です。そのため、異常が進行し、ある日突然爆発し、大病になる。 最近では生活習慣病といって、大病になる背景には大病に至る生活習慣を見直す必要があるとして、特定検診制度や特定保健指導などが制度化されています。まだまだ広く周知されているわけではありませんが、増え続ける医療費を抑制するために、死の病に至る前段階で食い止め、病気の予防につなげることを目的としています。
僕は一部の大病を経験した患者さんしか見ていませんが、歯の健康と全身の健康に何らかの関係があるのは確かでしょう。数年前から行われている調査でも歯の状態の良い人はそうでない人に比べて他の全身の病気の医療費が少なくなることが言われています。果たして歯が良いから全身が健康なのか、それとも全身が健康だから歯が良いのか?どちらが正しいかは今の時点ではわかっていません。現在、この関係を調べる調査が進行中でその結果がでるのはかなり先になりそうですが、最近頻繁に診る大病をした患者さんの口元を診ると、どうも歯が健康な人は大病になりにくいのではないかという思いを強く持ちます。
歯の健康は日頃の丁寧な歯磨きと歯医者への定期的なチェックにより容易に達成できるもの。少しでも健康長寿を達成するために日頃のお口の管理は決して無駄なことではないように感じる、歯医者そうさんです。
2009年06月09日(火) |
歯を白くすること(ホワイトニング)の意味 |
先日、ある患者さんが来院されました。特に症状は無かった患者さんでしたが、定期検診をして欲しいということで来院されたのです。実際にその患者さんを診てみると、むし歯はありませんでしたが、前歯に歯石と前歯の表面に色素系の着色がありました。僕は歯磨き指導をした後、これら汚れを専用の機材と材料を用い、取り除きました。一度付着した歯の色素系の汚れはこれら専用機材と材料できれい除去でき、もとの歯の色が復活しました。 この治療の後、僕は実際にその患者さんにきれいになった歯を見せたのですが、患者さんは満足そうな表情を浮かべながらも僕に質問してきました。
「これってホワイトニングなのですか?」
最近、審美歯科なる言葉が世の中に広まりつつあるようです。かつて“芸能人は歯が命”というキャッチコピーが流行したことがありましたが、審美を追求すれば、自ずと口の中の歯も白くしたいという欲求を持つ方が出てくるようです。実際に芸能人は自らの姿そのものが商売道具です。特に顔に関しては一種の広告塔のようなもの。顔のパーツの一つである歯も非常に重要なパーツの一つで、昔から芸能人は少しでも歯を白くしたい、歯並びをよくしたいとして歯を触ってきました。 僕ら歯医者から見れば、ほとんどの芸能人が何らかの形で審美歯科治療しています。中には審美歯科治療しなくてもいいのではないか?と思われるような芸能人でも行っているくらいです。これら芸能人の歯はほとんどが白くするものです。それも過剰に白い歯を好む傾向にあるようです。 このような過剰に白い歯が本当に良いのかはよくわかりません。芸能人であれば、過剰なくらいの方がファンやマスコミに対して与えるインパクトが強くなるのでいいのかもしれません。ただ、本来人間が持っている健康的な歯の白さを考えれば、果たして芸能人が追求する歯の白さが本来のホワイトニングで求める白さなのかと問われると、僕は疑問に感じます。
そもそも、ホワイトニングという言葉は、歯を白くするという意味がありますが、僕が思うホワイトニングというのは、先に書いたように人それぞれが持つ健康的な白い歯にする治療です。白いと書きましたが、白いという定義は非常に曖昧です。本来の歯の白さは真っ白というよりも黄白色に近い白さです。ただ、人によっては褐色が強かったり、真っ白に近い人もいます。 歯の色は歯並びによっても影響を受けます。歯並びが悪い人の場合、歯の重なりで影ができ、それが微妙に歯の色に影響を与えます。 前歯のむし歯やむし歯の治療痕も歯の色に影響を与えます。前歯のむし歯の治療の場合、レジンと呼ばれる充填材が使用されますが、これは時間が経過するとともに変色してきます。治療した当初は目立たなくても時間経過とともに色が変色し、目立ってくることもあるのです。 また、歯磨きが適切でなく、歯石や汚れが付着したままの人も歯の色が変わる原因となります。 ホワイトニングといっても歯を白くする前の歯の状況というのは様々です。歯の汚れを除去すれば充分な人もいれば、歯の矯正治療を勧める場合もあります。また、被せ歯や歯のマニキュアのようなものを勧める場合もあれば、歯の内部から漂白剤で漂白したり、家で歯の表面を漂白する方法もあります。
いずれにせよ、歯を白くすることを希望される患者さんには実情に合わせた治療が必要だと考えます。その白さは決して芸能人がしているような白さではありません。その人にとって健康的に見える白さを追求する。それが歯のホワイトニングなのです。
2009年06月08日(月) |
既に中国産野菜は安全なの? |
既に中国産野菜は安全なの?
先日、何気なく見ていたこのニュース。以下、このニュースの引用です。
中国産野菜の輸入が今年3月、06年8月以来2年7カ月ぶりに前年同月比で増加に転じたことが、農林水産省がまとめた輸入検査実績(速報値)でわかった。3月は10%増、4月は5%増と2カ月連続で増え、回復傾向が鮮明になっている。残留農薬の規制強化や中国製冷凍ギョーザによる農薬中毒事件の影響で減少傾向をたどってきたが、景気悪化などを背景に、安価な食材として需要が再び高まっているようだ。
3月の検査実績は2万7867トン、4月は3万910トンだった。厚生労働省は06年5月、食品への残留基準を設ける農薬を限定し、それ以外には一律0.01ppmという厳しい基準を課す「ポジティブリスト制」を導入。その影響で中国産野菜の輸入は同年9月から減り始め、08年1月30日に発覚したギョーザ事件も加わって、同年2〜5月は32〜50%の落ち込みを見せた。
しかし、昨年秋以降の世界的な景気悪化で消費が低迷し、外食産業や食品メーカーもコスト削減のため安価な食材の調達を重視する傾向を強めている。果実・野菜輸入大手のローヤル(京都市)は「ギョーザ事件を契機に中国もトレーサビリティー(生産流通履歴の追跡可能性)を強化している。消費者のマイナスイメージも薄まっており、中国産野菜の人気は当分、続くのではないか」と話している。
輸入検査実績は、国内にない病害虫の侵入などを防ぐため農水省が植物検疫を行った数量。野菜はすべて対象になるが、検疫の結果、輸入が認められない場合もあり、実際の輸入量とは必ずしも一致しない。
昨年秋のリーマンブラザーズ破綻をきっかけに始まった世界同時不況。日本でも一気に景気が落ち込み、多くの家庭の家計に悪影響を及ぼしているのは周知のことです。少しでも家計を楽にするために安価なものを購入したいという気持ちはよくわかります。
ただ、日頃口にする食べ物のこととなると、安かろう悪かろうでは済まされないところがあるように思います。 中国製の野菜は安価なことから日本の食材に大量に入り込んできたのですが、昨年の毒入り餃子事件をきっかけに輸入が落ちこんでいました。これは当然のことだと感じていましたが、日本人は熱しやすく冷めやすいのでしょうか?上記の記事によれば、中国産野菜に対する需要が再び高まってきているというのです。
中国産野菜に対する安全性は以前から取り上げられてきたのですが、毒入り餃子事件で中国での食品管理に対する疑念は更に高まったはずです。 しかも、この毒入り餃子事件、未だに解決されていません。公式的には、中国政府はこの毒入り餃子が日本が原因であることを主張していました。実際に、毒入り餃子の在庫が密かに中国国内でばら撒かれ、この製品を食べた中国の人が日本での被害者と同じ症状が出たことから、問題は中国国内であることが明白となりました。ところが、真相は未だに闇の中。犯人は見つかっていませんし、どのような食料管理、販売流通過程に問題があったのか全く未解決のままです。
そんな状態であるはずなのに、中国産野菜の輸入が増えてきているという事実。景気の悪化で人々が少しでも安い物を求めたい気持ちはわからないわけではありませんが、本当に中国産野菜は大丈夫なのでしょうか?安ければ良いという考えは、食料に関しては少し考え直した方がいいのではないかと考える、歯医者そうさんでした。
2009年06月05日(金) |
これ以上医療の首を絞めないで欲しい |
昨日、地元歯科医師会の会合があり出向いてきました。いつものように会合が始まる前に同僚の先生と話をしていたのですが、その際話題に挙がったのが政府の財政制度等審議会のことでした。 来年、医療の診療報酬に関して大きな改定があるのですが、その際、世の中の不景気を背景にした民間賃金や物価動向を踏まえれば、診療報酬は抑制しないといけないと提言したのだとか。
昨年秋の米国リーマンブラザーズ破綻をきっかけに広がった世界的不況。世界経済の中心であった米国の経済的不況はあっという間に世界中に広がり、日本でもかつて経験したことがない景気後退に襲われているのは周知の事実です。企業の経済活動は停滞し、赤字決算を出す企業が続出。多くの派遣社員切りから今ではリストラ、新規雇用抑制などを行い、何とか生き残ろうとしています。現在、この不景気は底を打ったということが言われていますが、この発言は全く信頼性がないことは経済ど素人の僕が見てもわかります。全く先に明かりが見えない経済状況であることは明白です。
そんな中高額な医療費は人々の懐を直撃します。経済状況を考えれば、医療費を左右する医師、歯科医師らの診療報酬引き下げも止むを得ないという議論は仕方のないように思えます。 その一方で、医療界にどっぷりつかっている僕としては、この議論に非常な違和感を覚えます。一見すれば診療報酬というのは高そうに見えますが、これら診療報酬は単に医師、歯科医師が全て懐に入れてしまう性質のものではありません。周囲のスタッフの人件費、器具、材料の購入費、光熱費、電話代等々の経費全てを賄わないといけないものです。現在の診療報酬は決して高くないどころか安すぎるのが現状です。 昨今、医療の崩壊が叫ばれていますが、これは政府の限られた社会保障費、しかも、毎年2200億円ずつ社会保障費を抑制するという財政の骨太の方針に基づいています。財政再建のためには医療費を含めた社会保障費も例外ではないという方針のもと、行われた社会保障費の抑制政策。その結果、何が起こったかというと、医療の崩壊です。中でも、地方の公立病院は軒並み赤字、経営破たんとなり閉院する病院が後を絶ちません。救急医療、産科医療、小児科医療は医師不足による影響を受けていますが、その背景には非常な重労働にもかかわらず限られた診療報酬しか認められず、いくら診療しても単価が安すぎるために黒字にならないというジレンマがあるのです。
歯科においても同様です。昨年の診療報酬改正後、歯科の収益は数パーセント上昇したのは如何なものか?という批判が大手マスコミを中心に挙がっていました。僕から言わせれば、これまでの診療報酬が異常に低すぎたのです。しかも、収益が上がったといってもわずか数パーセント。毎日診療をしていて収益が上がったという実感は全くありません。これは周囲の歯科医師が皆異口同音に言います。そのため、多くの歯医者は保険診療では経営が成り立たず、自由診療に走る歯医者が後を絶ちません。 そんな厳しい状況の中、更なる診療報酬の抑制が必要だという意見。現在の医療を更に崩壊させるつもりがあるなら、どうぞ抑制して欲しいと思います。その結果どうなるか?国民の最大のセイフティネットである医療が成り立たなくなるのは目に見えています。
診療報酬も特別視すべきでは無いという意見がありますが、誰もが健康であって初めて経済活動が成り立つのは自明の理。健康の守り手に対してはある程度の配慮があってしかるべきだと思うのです。それが無視されれば、結果は全て国民に返ってきます。現に、全国各地の公立病院の閉院により困っているのは地元住民。これも経済の原理原則を貫いた結果です。果たしてこれ以上医療の首を絞めるようなことをして良いものでしょうか?
医療をケチれば国の根幹を破壊することになることをもっと多くの人たち、特に経済界の人たちは認識すべきだと考えます。
2009年06月04日(木) |
今日はむし歯の日でした・・・ |
今日は6月4日。かつて日本歯科医師会は、6月4日を語呂合わせからむし歯の日、むし歯予防デーとしていました。現在では、むし歯だけでなく、歯周病も含めた口の健康に感心を持ってもらうために今日から1週間を歯の衛生週間とし、様々なPR活動、啓発イベントを行うようにしています。
既に何度も書いていることではありますが、口の中には300種類以上とも言われているばい菌が1ミリグラムあたり1億個以上繁殖していると言われています。あまりにも多くてイメージしにくいぐらいですが、これらばい菌の中にむし歯の原因となるばい菌や歯周病の原因となるばい菌が存在するのです。 未だにどのばい菌がむし歯や歯周病の原因になっているのか?ばい菌同士がどのように影響しあってむし歯や歯周病に関係しているのか謎のままです。ただ言えることは、ばい菌の数を減らせば、むし歯や歯周病のリスクが劇的に下がることです。 口の中のばい菌は繁殖力が旺盛で、一回きちんと歯磨きをしても一日経過すれば元通りぐらいのばい菌の数となります。毎日の生活の中で必ず一定時間を確保して歯磨きを継続しなければ口の中のばい菌は増殖をし続け、結果としてむし歯や歯周病に罹るリスクが高くなるのです。
平成17年に厚生労働省が行った歯科疾患実態調査によれば、毎日歯を磨く人は全体の96%。日本においてはほぼ全ての人が毎日歯を磨いていると言っても過言ではなくなってきました。その一方で、むし歯の本数は年齢とともに増加傾向にあります。50歳代ではむし歯経験歯数(むし歯未治療歯数+むし歯治療歯数+むし歯による喪失歯数)が16本。親知らずを含め永久歯は32本ありますから50歳までに半数の歯がむし歯になっているのが現状です。 歯周病においてはもっと酷く、国民の8割以上が歯周病です。50歳代では9割以上の方が歯周病にかかっているという現実。 歯磨きの習慣はほぼ定着したのにむし歯や歯周病に罹っている人は多いのはなぜか?歯磨きの仕方に問題があるとみていいのではないでしょうか?自分では磨いているつもりでも、実際は磨けていない。そのギャップに気がついていない人が大半であるのが現状なのです。
今日から歯の衛生週間が始まりますが、皆さんにおかれましては今一度口の中の健康に感心を持って欲しいです。関心をもてば定期的な歯医者による検診を受け、歯磨き指導や食事指導、生活習慣の見直しをして欲しいと思います。自分の一人よがりの健康管理だけではなく、専門家による定期的なチェックが口の中の健康維持に非常に大切であることをわかって欲しいですね。
社会で働いている人は必ずどこかの学校で教育を受け、卒業しています。これら学校は卒業しても経歴として一生付いてくるものです。 学校を卒業するのは一人ではありません。毎年、何人もの人が同じ時期に卒業するわけですが、歴史があったり、毎年の卒業生が多ければ多いほど同窓生の数も増えてきます。
社会の中にはいくつもの業種、業界があるものですが、不思議なもので同じ学校の同窓生が多く集まる場合があります。これら同窓生はお互いが同じ学校出身ということで仲間意識を持ち、一種の集団を形成します。学閥です。
ところで、日本全国には歯科医師を養成する大学歯学部、歯科大学が全部で29校あります。これら29校の中には第二次世界大戦以前から設立されている歴史のある大学があれば、第二次世界大戦後、歯科医師不足を補うために新設された大学歯学部、歯科大学があります。これら29校にはそれぞれ同窓会があり、卒業生、同窓生の親睦と情報伝達を図っています。 この中でも第二次世界大戦前から存在する歯科大学の同窓会は会員数が多いのが特徴です。会員数が多いということは、歯科界においてそれなりに発言力が大きいことを意味します。特に、歯科医師会関係では昔からある大学の出身者ならびに学閥が重要なポストに付くことが多いのが現状です。 先日もある歯科医師会組織の幹部の出身大学を調べましたが、見事に歴史のある大学の出身者で固められていました。
学閥に関してはいい面、悪い面があることと思います。正直言って、僕はこの学閥が好きではありませんが、同じ同窓生の先輩によれば、同じ同窓ということで恩恵を受けることが多いとのこと。 僕は歯医者であれば学閥関係なく、同じ歯科医師として歯科の発展に貢献していきたいと願っていますが、詳細は書きませんが、どうも歯医者の世界もこの学閥によって左右されることが多いようです。
この手の話を他の業界の友人と話をすると、同じような学閥主義がはびこり、苦労をしているとのこと。学閥よりも一人一人の人となりで判断し、付き合ったり、仕事をしていかないといけないと思うのですが、このようなことを言うと、歯医者の仲間うちからはきれいごとを言っていると反論を受けるのは非常に悲しいことです。
2009年06月02日(火) |
むし歯用ワクチン未だ開発されず |
数週間前、メキシコに端を発した新型インフルエンザが日本にも入り、あっという間に神戸、大阪を中心とした関西地域から周辺地域、そして、関東方面にも移っていったのは皆さんご存知のことでしょう。患者数がカウントされていますが、実際に症状が出ていない保菌者、すなわち不顕性感染者数はかなりの数になると見られています。
この新型インフルエンザが恐れられている理由は、人類がこれまで遭遇したことがない遺伝子を持つインフルエンザウィルスが原因となっているからです。 インフルエンザウィルスをはじめとしたウィルスは抗生物質が効きません。その理由はウィルスが寄生虫の如く細胞の中に入り込み、増殖するからです。抗生物質は細胞の中まで浸透しないため、増殖しているウィルスに対して抗生物質は作用しにくいのです。
それでも、人間の体はうまくできていえ外部からの目に見えない微生物の侵入に対し、防御機構を持っています。免疫です。ウィルスに対しても抗体というものを作り出し、ウィルスに攻撃を加えるような仕組みになっています。 免疫は外部からの微生物の侵入があって初めて機能しだしますが、抗体ができるのに時間がかかります。今回のような新型インフルエンザの場合、人類が一度も遭遇していなかったタイプのインフルエンザウィルスであるわけですから、基本的に人類はこのインフルエンザウィルスに対し免疫を持っていません。そのため、感染が広がっているわけですが、感染した人によってはぼちぼち免疫機構が対処しはじめ、抗体を作りだしていることでしょう。
新型インフルエンザウィルスに関しては、ワクチンの開発が急がれています。ワクチンはいくつかのタイプがありますが、大半が特定の微生物の活性を抑えたものであったり、死菌であったりします。これらワクチンを注射するということは、人工的に新型インフルエンザを起すということです。ワクチンの中に含まれる新型インフルエンザウィルスに対する抗体を作り出すことにより、外部からの新型インフルエンザウィルスの感染に対処することを目的としているのです。おそらく、秋口にかけて新型インフルエンザウィルスに対するワクチンが急ピッチで開発され、世に出てくることでしょう。
ところで、以前から口の中のむし歯に対してもワクチンの開発が行われてきました。むし歯の原因は口の中に存在するむし歯菌によって引き起こされます。これらむし歯菌に対する免疫があれば、むし歯は発生しません。それなら、むし歯菌に対するワクチンと作り、投与すればむし歯が出来ないのではないか?という発想のもと、むし歯ワクチンの開発が進められてきましたが、残念ながら未だに世の中にその姿を見せていません。僕の手元には今から20年以上前に間も無くむし歯ワクチンが開発されると大々的に報じた新聞記事の切抜きがありますが、現在、このワクチンが正式に開発されたという話は全く耳に入っていません。
どうしてむし歯ワクチンが開発されていないのか?愚考するに、むし歯菌と呼ばれるむし歯の原因菌がはっきりとつかめていないからではないかと思われます。むし歯の原因菌はミュータンス菌であるとの話が世に広まっています。確かにこれは間違いではなく、むし歯の原因菌の候補の一つとして非常に有力ではあります。ところが、ミュータンス菌が無い状態でも口の中にむし歯ができるのです。ということは、ミュータンス菌のみに対するワクチンを作ってもむし歯の発生を抑えることはできません。 現在、歯科の研究者の間では、むし歯の原因菌は複数あってお互いが作用しながらむし歯ができるのではないかと言われていますが、その詳しいメカニズムは未だにわかっていません。これは歯周病も同じで、歯周病の原因菌はいくつか有力な候補は挙げられているものの、どれかと特定することが未だに出来ていないのです。
現在のところ、むし歯ワクチンの開発は未だ道半ばです。今後、研究が進めばむし歯ワクチンは開発されるかもしれませんが、それよりも毎日適切な歯磨きをし、バランスの良い食事をして、規則正しい生活をしていればむし歯はできません。むし歯ワクチンが開発されなくてもむし歯は予防できることがわかっています。
2009年06月01日(月) |
虐待を知る学校歯科検診 |
昨日、インターネットのニュースを見ていると、このようなニュースが流れていました。
河北新報 虐待を受けた子どもの多くが歯や口のトラブルを抱えていることが、宮城県歯科医師会の調査で分かった。各年代で県平均より虫歯の本数が多く、養育放棄や暴行などの影響が大きいとみられる。これを受け、同会は学校健診などでの対応策をまとめた冊子を製作。会員らに配布し、虐待の早期発見を呼び掛ける。 調査は仙台歯科医師会と実施。昨年3月から同10月にかけ県内2カ所の児童相談所を訪問し、虐待などを受けて一時保護中の56人(3―17歳)の虫歯の有無などを年代別で調べた。 その結果、12―14歳の平均虫歯本数は5.7本と県内平均(2.8本)の2倍に上った。いずれの年代も平均を上回り、6―8歳は1.1倍、9―11歳は1.4倍、15―17歳は1.5倍だった。 永久歯の初期虫歯の保有率も高く、県内平均の1.2倍―3倍。歯肉炎の保有率も同様の傾向がうかがえ、平均の1.4倍―2.9倍だった。 県歯科医師会の山形光孝常務理事は「口の中の状態が悪い子がすべて虐待を受けているわけではない」としながらも、「密接にかかわっているのも事実。歯科医が、健診や診療で虐待との関連を意識することが必要だ」と指摘する。 調査結果を基に同会は会員向け冊子「歯・口から気づく子どもへの虐待」(A4判、14ページ)を2000部製作。6月1日に発送する。虫歯の多発や重度の歯肉炎、歯の亀裂、舌や口唇の外傷といった所見を例に挙げ、虐待が疑われる場合は学校や市町村に報告するよう求めている。 冊子は歯科医のほか、県内の全公立幼稚園と小中学校、各市町村にも送る予定。山形常務理事は「歯科医と行政、学校現場が連携して虐待防止に努めていきたい」と話している。
現在、全国各地の学校では定期学校検診が行われています。この定期学校検診は学校保健法に基づくもので、先日、僕が学校歯科医をしている地元小学校でも歯科検診がありました。
検診時、僕は必ずむし歯や歯周病の状態をチェックはしているのですが、それ以外に過去に指摘されたむし歯が処置されているかも必ずチェックしています。 検診でむし歯であると指摘された児童、生徒に対して学校からは必ず治療勧告書が出されます。治療勧告書は治療や精査の必要がある歯や歯肉などがあることが書かれてあります。歯医者での治療が終了すれば、歯医者は児童や生徒本人、もしくは保護者に対し治療勧告書の報告書を書き、手渡します。この報告書は児童や生徒を通じ学校側に戻され、学校は治療報告書の報告に関して検査用紙に記入することになっています。
検診用紙は小学校から中学校までの義務教育の機関は概ね同じ用紙です。都道府県ごとに若干の書式の違いはありますが、例え生徒や児童が転校をしても、基本的に元の学校の検診用紙をそのまま引き継ぐことになっています。そのため、時系列で歯の状態を把握することができるのです。
現在、むし歯の数は非常に少なくなっています。特に永久歯のむし歯は非常に少なく、平成17年に行われた歯科疾患実態調査によれば、12歳の時点での永久歯のむし歯経験歯数は1.7本。18年前の昭和62年の調査では4.9本ですから、ほぼ20年で3分の1に減少しています。それ故、むし歯、特に永久歯のむし歯の本数が多く、むし歯が放置されている場合には、本人もしくは家庭に何か問題がある場合があると疑います。 このことは学校側も既に把握しているようで、養護教諭は必ず歯科検診の結果を参考に、虐待や育児放棄などの可能性のある生徒を見守っているのが現状です。
虐待を受けている生徒、児童は親が自分を虐待しているとは言いません。自分が虐待を受けているのは自分が悪いせいだと思っていたり、言いたくても言い出せないケースが多いもの。 その一方で、体はうそをつきません。特に、体に現れた傷は本人が本当のことを言わなくても真実を語っています。口の中の状態もうそをつかないのです。専門家が見れば、口の中の衛生状態は、本人もしくは家庭の生活状況をつぶさに物語っているといっても過言ではありません。虐待を疑いたくなるような状態は直ぐにピンとくるものなのです。 上の記事に書かれている通り、永久歯のむし歯を放置している生徒、児童が全て家庭に問題があるとは断言できませんが、虐待を受けている児童、生徒を見つける一つの有効な方法となることは間違いありません。
ただ、歯科検診が虐待を調べる手段の一つとして注目されているのは、本来の目的からすれば悲しいことです。できることなら、歯科検診は虐待を見つける方法ではなく、本来の目的である健康状態の把握のために行われて欲しいと願います。
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