歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年07月30日(水) 日記小休止

今日から、“歯医者さんの一服”日記は休みを頂きます。先日、書いていましたように某所へ家族旅行をするため日記を更新することができないためです。悪しからず御容赦下さい。



2008年07月29日(火) もしも自分の日記が研究対象になったなら・・・

今の時代、技術発展のおかげで我々はこの世から亡くなったとしてもいろいろなものを残すことができます。自分が書いたもの、自分が読んだ本、自分が購入したもの、自分の写真やビデオ映像などなど。鬼籍に入った人について研究するならば、いろいろな資料が残されている可能性があるわけです。

過去であればそうではありませんでした。写真や映像などは残されておらず、故人が残した数少ない資料を参考にあれこれ考察をしながら、故人の研究が行われているはずです。例えば、クラシックの作曲家で有名なモーツァルトやベートーベンたちを研究する際、これら作曲家が残したものといえば、自筆の作品や作品を書く際に残したスケッチと呼ばれる下書き、そして、近親者や友人などと交わした手紙などしかありません。中でも、手紙は故人の当時の生活や性格を知る上で貴重な研究資料となっているのです。

この現状をもし天国にいるモーツァルトやベートーベンが知ったらどう感じるでしょうか?手紙というもの、受取人に対して個人的に書いたものであり、公開することを前提に書いていません。それ故、差出人の人となりが手紙に現れるが故に研究資料としては有用なものではあるでしょう。しかしながら、きっとモーツァルトやベートーベンは受取人以外には手紙の内容を知られたくなかったはず。いくら研究のためだとはいえ、故人の意志に反して他人が読んでしまう。僕はモーツァルトやベートーベンが不憫でならなく感じる時があります。

この8月1日をもって、歯医者さんの一服はサイト開設6周年を迎えます。これまで6年間を通じて書いてきたテキストは何らかの方法でインターネット上で読むことができるはずです。万が一、僕と言う人間がこの世から無くなり、研究対象となった時には、僕が書いていたこれらテキストも研究対象になることでしょう。多くの人に生の歯医者の声、考え、生き方を知ってもらいたいという思いから、歯医者さんの一服日記は6年間、公開し続けているわけですが、これが研究となると話は別です。僕という個人の隅から隅まで調べ上げる一つとして僕が書いたテキストが読まれる。それは僕の翻意ではないからです。

もっと平たくいえば、自分が研究対象になること自体、めちゃくちゃ恥ずかしいのです。できることなら、僕と言う人間を研究対象としないで欲しい。僕という人間のプライベートはプライベートでそっとしておいて欲しいと願わずにはいられません。

まあ、僕という人間が研究対象になるなんて話はあくまでも架空の話であり、そのようなことを書く僕は自意識過剰ということですけどね。皆さん、笑ってやって下さい。



2008年07月28日(月) いつまでも少年のような気持ちで

今日の日記のタイトル、一体何のつもりで書いているのだろうと思われる方もいるかもしれません。既に齢42歳になっている歯医者そうさん。少年時代はとっくの昔におわり、日々体力は衰え、少なからず人生の荒波に揉まれながら汚れている身です。そんな輩がどうして“いつまでも少年のような気持ち”を追求したいのか?

それはやはり感性の問題です。何の知識も経験もない少年時代。ちょっとした周囲の出来事や景色、物語に思わず心が揺れ、感動し、時には楽しみ、驚き、悲しみ、怒りがあったものです。ところが、年を取るにつれ、そうした感性は段々と錆付き、些細なことでは何も感じなくなっているのが現在の僕のように思うのです。

いちいち周囲に起こる出来事や事件、景色や人間関係にハラハラドキドキしているようでは体が持たないのも事実なわけです。その反面、当たり前の生活が続きすぎると、人生に変化がないように感じ、何か新しいモノを作り出したり、発見したりすることを億劫に感じてしまう傾向にある。そのことに最近気がついたのです。
これが果たして良い事なのか?自問自答しましたが、結論としては、今一度自分の感性を原点に戻しても間違いないのではないかということになりました。いつまでも瑞々しい感性を持ち続けていたい。泰然自若としながらも、美しいものは美しいと感じたい、雄大さには驚きを感じたい、好きなものには好きだと感じていたい。そんな感性を持つには、少年時代の瑞々しさ、素直さがある感性を今一度持ち続けていければと考えております。

ちなみに“いつまでも少年のような”というのは、幼稚であることとは違います。いつまでも独り立ちできない、何かにすがりついてまとわり尽きたい優柔不断さとは全く異なるもの。あくまでも自分の気持ち、感性についての話であることを断っておきます。



2008年07月25日(金) ディズニーシー童貞からのお願い

一昨年の夏休み、僕は生まれて初めてのディズニーランドを訪問したことは以前この日記でも触れました。
“暑い夏の時期にディズニーランドへ行くなんて・・・“と言われながら出かけたディズニーランドですが、暑さにはまいったものの待望のディズニーランドを見ることができたことは、一緒に行ったチビ以上にうれしいものでした。風があったため夜の花火は見ることができなかったのですが、昼と夜のパレードをはじめとして様々なアトラクションを堪能できたことは、僕にとって忘れられない思い出の一つなりました。40歳になって初めてディズニーランド童貞を喪失したのが2年前。

あんな暑い夏にディズニーランドへ行くのはやめておこうと思ってから2年。我が家では再びディズニーリゾートを目指そうということになりました。咽喉もと過ぎれば熱さ忘れるではありませんが、暑さを気にするよりもディズニーリゾートの魅力にはまってしまったというべきかもしれません。一応、来週に休診日などを利用して2泊3日で行くことになっておりますが、今年の目的地はディズニーシー。

現在、嫁さんがいろいろとディズニーシーについて調べています。いくつかの本やインターネットを利用して調べているようです。僕も調べようとは思っていたのですが、所用が数多くありディズニーシーについて調べる時間的余裕がありません。
そこで皆さんにお願いがあります。このようなズボラな歯医者そうさんのために、ディズニーシーについて面白いポイント、見逃せないアトラクションなどの情報を教えて欲しいのです。

前回のディズニーランド訪問の際も、日記にお勧めスポットを教えて欲しいと書いたところ、数人の方から貴重な情報を頂きました。こうした優しい読者からの生の情報のおかげで、僕ら家族は非常に楽しい時間を満喫できたものです。そこで、今回も我こそはと思われる奇特な方がいらっしゃれば、是非ともディズニーシーのお勧めスポットを教えて欲しいと思います。

まことに勝手なお願いであることは重々承知しておりますが、僕のディズニーシー童貞を奪うことに協力してやろうと思われる方は、是非とも情報提供をお願いします。



2008年07月24日(木) 顔を洗って出直してきます!

先々週末から僕の額に吹き出物のようなものがたくさん出てくるようになりました。最初は一つか二つ程度だったのですが、気がつくと数個程度見えてきました。これは一体どうしたことか?

実は、僕は診療中は帽子を被っています。使い捨て紙タイプの帽子なのですが、いくら冷房が効いている室内でも診療開始当初はじんわりと汗が出ます。僕の額は粘り気のある汗が出やすい体質ですから、帽子が接触している額の部分に沿って吹き出物が出ているような気がしました。

そこで、僕が考えたのが洗顔です。これまで洗顔というと朝1回だけしていたのですが、これを朝昼晩3回するようにしました。特に、午前の診療と午後の診療の合間には必ず洗顔をするようになったのです。
洗顔石けんは嫁さんが愛用している某社製品を使用しました。肌に優しい洗顔石けんなんだとか。
するとどうでしょう?先週後半あたりから徐々に吹き出物の数が減少し、大きくなっていたものでも縮小してきたのです。予想していた通り、夏場を迎えるにあたっての気温、室温上昇と額の汗により吹き出物が増えてきたようです。

現在も一日三回、洗顔を続けていますが、吹き出物は更に少なくなり、一部では完全に健康な皮膚に戻ってきました。
洗顔に精を出すのは女性がすることだとばかり考えていた僕ですが、今回の額の吹き出物の状態を見ると、決して洗顔を馬鹿にしてはいけないなあと悟った次第。やはり、ある程度年齢を重ねると、ちょっとした汗でもダメージを受けるものなのでしょうか?よくわかりませんが、少なくとも洗顔を繰り返すことは肌の衰えが見られる僕の顔面には悪くないようです。

さあ、今日もこれから顔を洗って出直してくるとしますか!



2008年07月23日(水) 気を遣うファッション、気を遣わないファッション

今日は休診日ですが、某専門学校での講義です。夏休み前最後の講義ということで、今日の講義が終われば9月までは水曜日に少しは気分的にも時間的にも余裕が出てきます。ただ、猛暑が続くとなると、かえって冷房の効いた室内で講義をした方が過ごしやすいかな?そんな勝手なことを思う今日この頃です。

水曜日の講義でいつも考えるのが、服装です。僕が教えに行っている某専門学校は学生が皆制服を着ています。専門学校というと私服であるというイメージが強かった僕にとっていつも講義に出かけている某専門学校の制服は、講義に通いだした当初、ある意味新鮮な感じを受けたものです。
学生たちが制服を着ている以上、僕も講義に立つときはそれなりの格好でなければならない。そう考えている僕は講義をする時はいつもネクタイを締め、ブレザーは最低着るようにしています。僕なりの講義への礼儀なのですが、これでいつも困るのはどんなネクタイやブレザーを着ていくかということです。

僕が持っているネクタイやワイシャツ、ブレザーやスーツといったワードローブは数が限られています。もっと服装に多くの金を投資できればいいのでしょうが、そういった金銭的余裕が無い中、いかに服装を組み合わせるか、非常に難しいものがあります。かといって、毎回同じ服装で講義をするのも何か芸がないようなところもあり、面白くありません。如何に限られた予算、限られたワードローブで少しでも毎週の講義の服装に変化をもたせられるか?いつも悩みます。
一応、講義前日に服装は用意するのですが、いつも僕のファッションコーディネーター係りの嫁さんといろいろと言い合いながら翌日の講義用の服を選んでいきます。

「このネクタイはどうかしら?」
「そのネクタイは先週も着たよ。他のものない?」
「それならこれしかないけど・・・。ワイシャツを別にした方がいいね。」
「その組み合わせならパンツの色が限られてくるなあ。となるとこのパンツだけど。これ先週も着たよ。」
「それでいいじゃない。誰もそうさんが着ていたパンツの色なんて覚えてなんかいないわよ。」

というような光景が毎週、火曜日の夜に我が家で繰り広げられています。

水曜日以外だと、服装の選択肢は決まっています。白色の白衣です。現在、僕が着ているのはケーシー型と呼ばれる袖が無いタイプの白衣。夏ですから半袖を使用しています。パンツも白色のパンツ。全身、白色が僕の診療ファッションです。ファッションに何も気を遣わなくてもいいのが、白衣の気楽なところです。この点、お勤めの方にはうらやましく思われるところかもしれませんね。



2008年07月22日(火) インターネットが通じません!

本当に困っています。何を連休明け早々書いているのだと思われている方もいるかもしれませんが、先週から我が家のインターネット環境が機能していないのです。昨年、待望のS社のADSLサービスに加入し、何とかブロードバンドインターネット回線を手に入れていた歯医者そうさんでしたが、先週火曜日から突如としてADSLが通じなくなったのです。

もともと我が家のインターネット環境は最悪で、友人の多くは光ファイバーでインターネットを楽しんでいるにも関わらず、我が家近辺にはどの会社の全く光ファイバーのサービスの提供もありません。全てのインターネットサービス会社に確認したのですが、我が家の周囲は今後のサービスの予定は無しとの返事。
それでは、ケーブルはといいますと、こちらも基線がないため、サービスがありません。基線の計画はと尋ねても“ありません”。

ADSLに関しては最寄の電話局から9キロあるということでADSLの使用は絶望視していたのですが、S社が50Mサービスを開始したということで一か八かで加入したところ、下りの速度が元の100分の1以下にはなるものの、それでもISDNの10倍のスピードが出ていたことから何とかブロードバンドによるインターネットを楽しむことができたのです。それが去年のことでした。さすがに最寄の電話局から9キロあることから時折ADSLの信号が減衰し、ADSLが利用できない時はあったのですが、日常の使用においては何ら不自由なく使用していたのです。

ところが、先週火曜日、そのADSLが突如としてつながらなくなり、今に至っています。S社のテレフォンサービスに問い合わせ、相談にのってもらい、モデムの交換などの処置をしてもらいましたが、一向にADSLは回復しません。結局、回線そのものを点検する工事を行うということになったみたいです(仔細はわかりません)が、工事完了予定が今週末とのこと。それまで、個人的なメールのやり取りができず、この歯医者さんの一服日記も、かつて使用していたダイアルアップモデムを通じ、“ピィ〜、ガラガラガラ・・・”という音を確認してアップするという手間がかかっております。

ADSLが通じないことで、自分の生活がいかにインターネットと密接につながっているかを再確認することにはなったのですが、それにしても、ダイアルアップでは非常にストレスがかかります。一日も早くADSLが回復してほしいと願い続けている今日この頃です。



2008年07月18日(金) 停電に四苦八苦の医療機関

先日、当地では夕方かなりの荒れ模様の天気となりました。突然空が暗くなったかと思えば雷が鳴り、大雨が振り出したのです。それだけであれば問題なかったのですが、しばらくしてからある事態が起こったのです。それは停電。

ちょうどその頃、僕は患者さんの治療をしておりました。ある患者さんの抜歯を行っていた最中だったのですが、突然の停電で室内は真っ暗。口の中を照らすライトも消えてしまい、口の中がほとんど見えません。停電により冷房も停止しました。夕方の時間帯とはいえ外はまだまだ暑い状態。冷房無しでは治療ができないのが歯科医院ですが、この冷房も完全に停止。僕は抜歯を中止し、抜歯しようとしていた歯の周囲をガーゼで圧迫しておりました。抜歯しかけていた歯の周囲からは当然のことながら出血があります。抜歯を中止する際、出血が続くのは良くないので僕は抜歯しようとした歯の周囲を圧迫しながら止血を待っていたのです。
幸い、停電は10分くらいしてから復旧したのですが、その間、歯科医院の機能は麻痺したままでした。受付のコンピューターも動かず、デジタルレントゲン装置も稼動せず、様々な消毒・滅菌機器も作動しません。保温装置も停止したまま。
停電が終わり、電気が復旧した時にはおもわず安堵のため息がでたものですが、患者さんも僕もスタッフも皆汗まみれになっておりました。

この日の診療後、僕は地元歯科医師会の会合に参加したのですが、会合前の話題はもっぱら停電でした。どうも停電は僕の診療所付近だけでなく、市内全体に広がっていたことが判明。どの先生も突然の停電で対応に苦慮していたようですが、話を聞いていると同じ市内でも停電の状況が異なっていることがわかりました。僕の診療所の地域では停電は10分程度で復旧したのですが、ある先生の診療所付近では2時間以上復旧しなかったのだとか。そのため、診療を再開することができず、治療中の患者さんに関しては何とか応急処置を行ったものの、待合室で待っていた患者さんには事情を説明し、後日予約を取り直したのだそうです。

昨今、エネルギー問題がマスコミを賑わしていますが、ライフラインの一つとしての電気の有無が如何に医療機関に影響を及ぼすか。大きな病院などでは自家発電装置も備え付けられているようですが、うちのような弱小歯科医院であれば自家発電装置を設置する余裕はありません。わかっていたこととはいえ、今更ながら歯科医院がいかに電気に依存しているかどうかを痛感した、歯医者そうさんでした。



2008年07月17日(木) メールのレスを返さないアナログ男

今や現在の日常生活において必要不可欠なコミュニケーション手段として確立された感があるメールです。パソコンや携帯電話からのメールは一日数え切れないほどのやり取りがなされているはずです。かくいう僕も毎日メールのやり取りを欠かさず行っている一人です。

メールをやり取りしていると、誰もが直面するあることがいくつかあります。その一つが自分が出したメールに対して返事やレスがないことです。現在のインターネットでは、メールアドレスが現在使用されず、存在しない場合、そこに出したメールは必ず戻ってくるような仕組みになっています。また、インターネットでは出したメールが行方不明になるような事態もあるようなのですが、僕の経験ではほとんどの場合、メールが戻ってこない限り、メールは送信先に届いているはずなのです。そこで返事やレスがない場合、受信者には以下のような状況が考えられるでしょう。

・携帯電話やパソコンを使用していない場合
・メールアドレス変更を通知していなかった場合
・メールが届いているのは知っているものの返事を出さず放置している場合
・メールの送信者に対してコンタクトを取りたくない場合
・メールの内容に対して答えたくない状況の場合
・何度もメールのやり取りをしたためにインターバルを取りたい場合

これ以外にもいくつか状況があるでしょうが、せっかく自分が出しているメール、返事を必要とするメールに対して返事やレスがない場合、気分的に気持ち悪い、相手に対する心証が悪くなってしまうこともあるでしょう。

僕の友人の一人にメールを出して今まで一度も返事が返ってきたことがない輩がいます。メールを出しても返事がなければメールアドレスを教えなければいいじゃないか?と言いたくなるのですが、本人は全く悪気なく、

「これが俺の携帯メールアドレスだから」
と友人に教えまくるのです。一応、つきあいでこの友人の携帯メールアドレスを登録するにはするのですが、教えてもらったメールアドレスにメールを出しても返事が返ってきたためしがありません。本人に会うたびに
「せっかくメールを出したのにどうして返事をよこさないんだ?」
と詰め寄っても、本人は涼しい顔で

「返事出していなかった?それは悪いなあ。」

結局、この友人は信用ならぬということで、僕の周囲ではだれもこの友人にメールを送らないようにしています。それでは、どうしたらこの友人に連絡を取ることができるのか?それはこの友人の実家に電話をかけることなのです。実家に電話をかけると、友人のお母さんが出てきます。このお母さんに友人とコンタクトを取りたいと連絡を取ると、なぜか時またなくして連絡が来るという次第。そのことも友人に尋ねてみました。

「お袋だけは別なんだよ。」

実にいい加減な友人ではありますが、実にアナログ的な方法でコンタクトを確実に取ることができるという意味では、今時、非常に貴重な輩であります。



2008年07月16日(水) 抜いた歯は棺桶に持っていきます

僕は仕事柄、歯を抜くことが多いのですが、歯を抜いた後、必ず患者さんに確認することがあります。それは、抜歯した歯をどうするか?です。

そもそも抜歯とは、何らかの理由で歯の保存が不可能である場合、やむを得ず歯を抜く行為のことをいいます。歯が割れてしまったり、むし歯が深く進行したり、歯周病が進行して激しく動揺しているような場合、歯を保存することで体に悪影響を及ぼす可能性が高い場合、僕は患者さんに抜歯を提案します。患者さんには抜歯せざるをえない理由をレントゲン写真や患者さんの口の中をミラーやカメラを用いながらわかりやすく説明します。どうして抜歯するのか理由を解説するのです。

患者さんが抜歯の理由を理解し、了承をしてから初めて抜歯を行いますが、抜歯を終えた後にも僕が必ず行うことがあります。それは抜歯した歯の後始末をどうするかです。
抜歯した歯とはいっても元はといえば、患者さん自身の歯。患者さんがもっていた、親からもらった臓器のひとつ。患者さんの大切な臓器を処分する際、患者さんの意向を確認することは必要不可欠なことだと考えます。

実際の患者さんの反応ですが、ほとんどが
「処分しておいてください。」

抜歯した歯は姿も見たくない、これまでこの歯があったことで苦しまざるをえなかった、せいぜいこれからは苦しんだ歯の姿形をみることなく、処分したい。そのように考える患者さんが大半です。
処分を依頼された歯医者はどうするかといいますと、一種の医療廃棄物として歯を処分をしたり、処分した歯に金属の詰め物があったり、金属の被せがある場合、再資源金属として専門業者に委託して、回収してもらい、処分してもらうわけです。

中には抜歯した歯を持って帰りたいと望む患者さんもいます。その大半は、子供の患者さんです。子供というよりも付き添いの親御さんが望む場合がほとんどなのですが、家に持ち帰り、記念として保存するか、昔からの習慣で、軒下や屋根の上に抜歯した乳歯を置いておく場合が多いようです。

永久歯の場合は、ほとんどの患者さんは抜歯した歯を持ち帰らないのですが、中には抜歯した永久歯をもって帰りたいと申し出る患者さんもいています。このような場合、僕はガーゼに包んだ抜歯永久歯を持って帰ってもらうのですが、先日、抜歯した歯をもって帰りたいと申し出た人の理由には驚いてしまいました。

「一緒に棺桶に持って入りたいのですよ。」

棺桶か?誰もが自分の一生を最後に終える場所ということがいえるでしょう。しかも、意識はなく医師から死亡宣告を受け、一人きりで入る棺桶。いくら自分の体から分離した歯とはいえ、一生を終える時には自分の大切な体の一部として一緒にあの世へ旅立ちたい。そのような患者さんの強い気持ちが伝わってきたように感じました。
僕は即座に返答しました。

「どうぞ、この大切な歯をお持ち帰り下さい!」



2008年07月15日(火) 病は突然やって来るのではない

このニュース、かくれファンの一人としてショッキングなニュースでした。あんなに元気な人が咽頭癌となったのだけでも信じられず、病を克服して、再復帰したのも信じられなかったのですが、再発がわかり腸骨転移ともなると・・・。
適当な言葉がみつかりません。

さて、うちの歯科医院に来院される患者さんの中に

「食事をしていたら突然しみてきた」
「何もしていないのに突然詰め物が取れた」
「夜寝ていると突然歯が痛くなってきた」
「朝起きたら顔の右半分が腫れていた」
など訴えられる患者さんがいます。何の前兆もなく突如ある症状に見舞われ、歯医者に駆け込んでくる患者さんというのはどこの歯科医院にも必ずいることでしょう。患者さんからすれば、本当に何の前触れもなくという感覚の人がかなりの割合でいます。以前、歯科医院を受診していた時は何ともなかったのに、どうしてこのようになってしまうのか?と嘆いてしまう患者さんも少なくありません。

こうした患者さんの言い分はわからないではないのですが、歯医者として、そして、医療の専門家の一人として言わせてもらうならば、歯の病を含め、どんな病も突然襲ってくることはないのです。病には病になるだけの条件があり、病が進むだけの時間、過程があるものなのです。突然、病に襲われると言う人は、自らを蝕んでいる病が大きくなってくるまでの間、気がついていないだけなのです。

口の中の病気であるむし歯や歯周病などはその最たる例です。最初は、ほんの些細なむし歯や歯周病であったはずですが、放置しているうちに徐々に進行し、気がついた時には歯が欠けたり、歯が動揺したり、痛みが生じたり、歯肉が腫れたりするものなのです。そういった意味では、口の中の病気は静かに侵攻する病であると言えるでしょう。考えてみれば非常に怖い病気なのです。

こうしたことを防止するには、やはり定期的に歯科医院を受診し、検診を受けることに尽きるでしょう。患者さんが気がつかない小さな、些細な病変をチェックし、治療するべきものは治療する、今すぐ治療をする必要がないものでも経過観察していく。こうしたことで少しでも気がつかない病を見つけることが可能なのです。

一昨年、親父が腹部大動脈瘤の手術を受けた話は以前ここにも触れましたが、これも腹部の大動脈が膨れるまでには相当の時間、経過があったはずです。たまたま撮影したレントゲンCT写真にこの大動脈瘤が写っていたため、親父は直ちに手術を受け、命拾いしたわけですが、僕は静かに進行する病の恐ろしさを痛感しました。

僕の日記を読んで下さっている皆さんも、いろいろと忙しい日常をお過ごしのこととは思いますが、何とか時間を作って頂き、かかりつけ歯科医院を作り、定期的に歯科医院を受診するようにして欲しいと願っています。全ては静かに侵攻する口の中の病から身を守るためなのです。



2008年07月14日(月) 答えに困る“いつまで歯はもちますか?”

「今回治療した歯はいつまでもちますか?」

この質問は患者さんからしばしば尋ねられる質問の一つです。この質問に対して僕は一貫して下のように答えています。

「そればかりはいつまでもつか、答えられません。」

患者さんからすれば非常に無責任な発現に思われるかもしれませんが、これが僕の本音なのです。患者さんならば、同じ治療費をかけて治療をするなら、一度治療した場所がいつまでも健康に保って欲しいものです。歯医者も同じで、自分が治療した所がいつまでも機能して欲しいと願いたいのです。ところが、これが予測できないのが悲しいところです。

例えば、きちんと治療をしても、治療後の患者さんの管理が悪い場合、定期的な歯磨きをしなかったり、定期検診を受けなかったりした場合などは新たな歯のトラブルが生じることがしばしばです。そうかと思えば、治療後の患者さんが口の中に無頓着だったとしても、結果としていつまでも問題ない場合もあるのです。

多くの歯科研究によれば、普段から真面目に歯を磨き、定期的に、積極的にかかりつけ歯医者に歯の管理に通う人の方がそうでない人よりも圧倒的に歯が健康であり続けることが証明されてはいますが、一度歯を治療した場所に関しては、いつまでもつかは非常に不確定な要素が多すぎ、歯医者が自信をもって答えることができないものなのです。

先日のことです。ある女性患者さんが来院されました。この患者さん、2年前に歯を白くしたいということで来院された患者さんだったのですが、直前に結婚を控えているという状況でした。実際にこの患者さんの歯を見てみると、むし歯はなかったのですが、前歯が全体的に薄い褐色傾向にあったのです。このような場合、時間があれば歯の漂白を考えるのですが、治療に許される時間が余裕がないことは明白でした。そこで、僕が提案したのが、歯のマニキュアでした。歯の表面に白いレジンと呼ばれる材料を塗布するのが歯のマニキュアです。これは女性が手や足のつめに塗るのと同じような感覚で歯に塗布するものですが、通常のマニキュアと同様、長持ちするものではありません。あくまでも2〜3ヶ月程度もつものであり、製品の仕様説明書にもそのことが記載されていました。僕はこの患者さんにそのことを説明し、歯のマニキュアを勧めたところ、トライしたいということを申し出られました。
そこで、歯のマニキュアを塗布したところ、患者さんは非常に満足され、うちの歯科医院を後にされました。

それから、2年後の先日、久しぶりに来院されたのですが、この患者さんの前歯を診て僕は少々驚きました。それは歯のマニキュアが2年前に塗布した状況と全く同じ状況だったからです。患者さんに確認をしても、マニキュアが欠けたり破損したりすることなく今に至っているとのこと。これは予想外でした。あくまでも急場を凌ぐような感覚で行う審美治療の一つが歯のマニキュアだったのですが、2年も問題なく経過するとは予想もしませんでした。僕はこの患者さんに対して、もつところまで歯のマニキュアをそのまま使用することを提案し、患者さんも快諾されました。

誰でも想定外の事態に遭遇する経験はあるものですが、僕にとってもこの歯のマニキュアが2年ももつことは全く想定外でした。患者さんには事前に2〜3ヶ月しかもたないであろうと説明していただけに、歯の治療後の状態がどうなるか全く予想できないことを改めて感じた、歯医者そうさんでした。



2008年07月11日(金) パソコンは忘れた頃に潰れていく・・・

悪い時は重なるといいますが、この1週間うちの歯科医院ではまさにそんな状況でした。悪いといっても診療そのものが悪いというわけではありません。診療で用いるパソコンの不具合が続出したからです。

事の始まりは、デジタルレントゲン装置で用いるホストコンピューターでした。先週末、スタッフの一人がいつもと同じように新患の患者さんの登録をしようとホストコンピューターを立ち上げたところ、MS−IMEという文字を入力する言語バーが表示しないことに気がつきました。いろいろと設定を調べていたのですが埒があかず、何度か再起動を繰り返しているうちにMS−IMEの症状がおさまりました。
ところが、その解決とほぼ同時に思わぬことが発生しました。それは、ホストコンピューターの基本ソフトであるウィンドウズXPプロフェッショナルの起動画面が表示されなくなったのです。突然、MS−DOSの画面が映ると同時に起動がストップする症状。幸いなことにあるファンクションキーを押せば基本ソフトは立ち上がり、業務に支障はきたさなかったのですが、それにしてもどうしてこのようなことが起こるのか皆目わからず、結局専門家に来てもらいました。
その結果は、ある一つの設定が変わっていたことが原因だったことが判明。うちにやってきた専門家がその設定を変えるやいなや基本ソフトは問題なく動き始めたのです。どうしてこのような事態になったのかは業者もわからないとのこと。僕が事の次第を説明したものの、
「直接結びつくようなことではありませんね。」
何が原因だかわからず気分は晴れませんが、とにかくデジタルレントゲン装置用ホストコンピューターは正常に作動するようになりました。

時同じくして、受付のパソコンの一台もおかしくなりました。受付のパソコンでは患者データを入力し、日常の診療記録を打ち込んでいくデータベースです。月始めにはレセプト(診療報酬明細書)の作成にも使用するのですが、このパソコンのキーボードが突然おかしくなったのです。おかしくなったのは、キーボード上のテンキーでした。0を押すと01と表示されたり、9と押すと9+と表示されるのです。これも当初はいろいろと設定を調べてみたのですが皆目わからず、業者を呼ぶことに。その結果、ソフトやパソコン本体は全く問題が無く、テンキーの基盤が突如おかしくなったのではないかという結論に達しました。そこで、急遽キーボードごと交換。そうすると、テンキー問題は一挙解決。

時またまた同じくし診療所のもう一台のノートパソコンの調子もおかしくなりました。このノートパソコンには仕事で使用する様々な文書や写真を登録していたのですが、使用しようと立ち上げようとしても、全く立ち上がりません。最初は電池の問題かと思ったのですが、どうも電池ではありませんでした。リカバリー用のディスクを探そうとしたのですが、普段の管理がいい加減なせいかそのようなディスクもなく、これも打つ手無く専門家を呼ぶことに。その結果、ハードディスクそのものが潰れている可能性が高いという結論に達しました。現在、このノートパソコンは業者が持ち帰り、ハードディスクの交換をしているのですが、昨日、無事交換し、正常に起動することを確認したという連絡が入りました。幸い、ノートパソコンのデータはまめにバックアップを取っていたので、データの損失は免れましたが、それにしても突然の起動不能にはあわてるばかり。

いずれのケースもメーカーの保証で何とかカバーすることができ、うちの歯科医院の持ち出しがなかったのは幸いでしたが、いずれのパソコンも使用しはじめて4〜5年経過している代物でした。うちの歯科医院だけではないと思いますが、最近の医療機関ではパソコンなしでは成り立たないくらい、様々な業務をパソコンに依存しています。仕事の効率化の上でパソコンは非常に有用なツールではありますが、耐用期限が重なっている場合、一挙に複数台のパソコンの調子がおかしくなる。指摘されるまでもないことではありますが、パソコンに依存することが日頃の診療で多いため、これは非常にリスクのあることだと改めて感じた、歯医者そうさんでした。



2008年07月10日(木) 歯医者の死に方談義

昨夜、僕は地元歯科医師会の夜の会合があり出席してきたのですが、いつものように会合前に何人かの先生と雑談をしておりました。そこで話題になったのが地元歯科医師会のベテラン先生T先生のことでした。
T先生は齢60歳の先生なのですが、最近、脳梗塞になり入院治療中とのこと。見舞いに行った先生の話によれば、命は助かったものの手足の麻痺が残り、歯科治療を続けることは不可能に近いとのこと。T先生の診療所に通っていた患者さんについては近隣の歯科医の先生にお願いをし、迷惑をかけないように手配しているそうですが・・・。

つくづく、そして、あらためて歯医者稼業も体が資本であることを感じさせられた話だったわけですが、その後、雑談の流れは歯医者の死に場所のことに変わったのです。
興味深かったのは、雑談に参加していた歯医者の先生はほとんどが家の畳の上で死にたいとい言われていたことでした。病院のベッドの上で死ぬよりも、自分が日常生活している家で一生を終えたいという意見が多数だったのです。そのような中、雑談に参加していた先生の一人、Y先生がこのようなことを言われました。

「おれは歯医者バカだから、同じ死ぬなら治療をしながら死にたい!」

周囲からは
“そんなことなったら患者さんに多大な迷惑をかけますよ!“
という意見が大勢を占めましたが、Y先生は頑として自分の意見を譲りません。

「歯医者というのは自分の天職だと思うから、自分の仕事場である診療チェアで一生を終えることが私の理想だ。」

かつて、クラシック音楽の某有名な指揮者がオペラ劇場のオーケストラピッドで指揮をしている最中、突然倒れ、鬼籍に入ったというニュースが流れたことがありますが、これなどはまさしく自分の天職である仕事をしている最中に命を落とすという、ある意味壮絶な最期だったといえるでしょう。亡くなった本人にすればどうか?死人に口なしですから亡くなった本人の本当の気持ちは知る由もありませんが、少なくとも死の恐怖に悩まず、悩む間も無かったことは確かでしょう。先生自身もこのような考えのもと、自分の一生を終えたいと強く願っていることが容易に想像できました。

ちなみに、僕は同じ死ぬなら自宅の畳の布団の上で眠るように息を引き取りたい方です。歯医者であることに誇りは持っておりますが、診療中に倒れるということは何だか患者さんに醜態をさらすような気がしてならないのです。死に方に関して誰も好き勝手に選択することは不可能でしょうが、同じ死ぬなら静かに消えるように世の中から姿を消したいですね・・・。

ただし、僕はまだまだ世の中に執着したい性質ですから、今はまだまだ仕事に、家庭に、自分の趣味に打ち込める生活を続けていきたいです。今死んでたまるか!ってところです。



2008年07月09日(水) あなたの給料を教えてと言われて・・・

昨日、ある書類を期限ギリギリで郵送しました。その書類とは、平成20年度賃金構造基本統計調査。

賃金構造基本統計を初めて目にされる方もいると思いますので、若干説明をば。
賃金構造基本統計調査とは、労働者の賃金の実態を、産業、地域、企業規模、労働者の性、学歴、年齢、勤続年数などの別に明らかにすることを目的とした調査です。昭和23年以来毎年行われている調査なのだそうで、厚生労働省が行っている調査のひとつです。統計法により最も重要な統計の一つとして指定統計の一つなのだそうです。

この調査は全国の事業所を無作為に抽出し、選び出した事業所に対して調査を依頼する方式を取っているようで、どうやら今年度、医療関係の事業所の中の一つにうちの歯科医院が調査対象に選ばれたようなのです。送られてきた書類は2種類あり、一つは事業所全体の状況を報告するもの、もう一つが事業所に勤務する労働者の個別の状況を報告する書類でありました。

僕はこの調査に協力するかどうか迷いました。なぜなら、いくら厚生労働省が行う調査とはいっても、義務ではなく任意の調査でしたし、何よりもうちの診療所の僕や親父、スタッフの給与を正確に報告するのが嫌だったからです。
給与、賃金というのは事業所にとって非常にデリケートな情報の一つです。できることなら誰にも知られたくない、公にしたくないのが経営者としての正直な気持ちではないかと思うのです。いくら政府による統計調査だといっても、うちの歯科医院の情報が筒抜けになるような気持が強く、僕はこの調査に協力するかしないか迷っておりました。

そんな中、提出期限ぎりぎりになってから僕は決断しました。調査に協力しようと。その理由は、スタッフの給与を冷静に見直すきっかけになるのではないかと感じたからです。スタッフに対する給与は僕自身充分過ぎるほどわかっているつもりでしたし、今のうちの歯科医院の経営状況を考えても最大限の誠意を示しているつもりでした。
ところが、実際に数字に書いて見直してみると、客観的な数字の印象と自分のイメージとが若干異なるような感がしました。あの人はこれだけもらっていたのか?この人は勤務時間のわりには、少ないなあ等々。

そして、いざ、返送することになったのですが、書いた調査票をみて、あらためて我が歯科医院の経営がいろいろな苦労を重ねていることも見えてきました。今回の調査、自分の恥ずかしいところを観られているような気もしつつ、自分の置かれている状況、経営状況を冷静に見つめられる機会に恵まれたと感じた、歯医者そうさんでした。



2008年07月08日(火) あまりにも臭い!

昨日の朝のことでした。午前中の診療をしようと診療開始30分前に診療所の玄関を入ると、待合室には既にある患者さんが来院しておりました。朝一番の患者さんでした。まだ診療が始まるまで時間があるのになあと思いながら、その患者さんに挨拶をしようとした時、僕は驚きました。その理由は、待合室に異臭が充満していたからです。

“なんだこの臭さは!”

汚い話で恐縮ですが、何か大便のような臭いがしたのです。明らかにこれはオナラの臭いでした。

自宅の隣にある診療所ですので、僕は毎朝起床すると、必ず診療所に行き、玄関のシャッターを開け、窓を開けます。そして、必要な機器の電源をオンにしたり、診療の準備をするのが日課となっています。その後、この日記をアップしたり、朝食を取ったりし、身支度してから、診療所に入るということをしております。
昨日も起床後、診療所に出向いた時には何も異臭は感じませんでしたので、この異臭は明らかに僕が一度診療所を離れてからのものでした。スタッフはまだ来院していない状況を考えると、おならを発した張本人はというと、一人しかいません。どう考えても朝一番に来院した患者さんの可能性が高かったのです。患者さんには失礼かとは思いましたが、あまりの臭さに僕は窓を開け、空気の入れ替えをさせてもらいました。

その後、診療が開始となり、朝一番の患者さんに入ってもらったのですが、口を開けてもらうなり、またも異臭がしました。今度は何か卵臭い感じの臭いで、明らかに口臭でした。この患者さんは総入れ歯の患者さんだったのですが、総入れ歯の表裏にびっしりと食べかすがついているではありませんか!常日頃、入れ歯を装着している患者さんには、入れ歯の清掃の大切さを説いているのですが、患者さんの中には入れ歯の清掃に全く無頓着というべきか、関心の無い方もいます。昨日の患者さんもそのような患者さんの一人だったのです。
僕は毎日何人も患者さんの息を吸わざるをえない立場ではありますが、そんな僕でも眉をひそめたくなるような臭い。僕は直ちに入れ歯を口の外に取り出し、スタッフに入れ歯の清掃をお願いしました。僕は僕でこの患者さんの口の中の歯ブラシをする始末。

“診療前には歯を磨いて下さいね”

うちの診療所の受付にはこのような掲示をしているのですが、今回の患者さん、どうもまともに歯を磨くという発想があるのかと疑いたくなる人でした。
幸い、歯を磨き、入れ歯を清掃することで強烈な口臭はましになり、治療を開始することができたのですが、この臭いに本人が気がつき、臭いを無くそうとする意思が無い限り、せっかくの治療も意味がないのですが・・・。

それにしても、朝一番からの強烈な臭い攻撃はまいりました。昨日一日、何となく診療リズムが悪かったのはあの連続した臭い異臭を浴びたからではないかと思いたくなった、歯医者そうさんでした。



2008年07月07日(月) 患者に厳しく言いたい時もある

今更言うまでもないことですが、自分の体は自分で守るものです。他人は誰も守ってはくれません。医者や歯医者などは患者さんからの訴えを聞き、何が原因か医学的知識をもとに探り、何らかの処置を行うのが本来の役割です。患者さんが自らの体の異常を察知し、治さなければならないところ、専門家として患者さんの代わりに原因をさぐり、患者さんに治療法を提案し、実践するのです。この点、意外に思われる方も多いかもしれませんが、考えてみれば当たり前のことで、自分の体に起こった様々な不調や症状の責任は突き詰めれてみれば全て自分に原因があるものなのです。

どうしてこのようなことを書いたかといいますと、最近、患者さんの中にはどうも医者や歯医者に依存しすぎている人が多いのではないかと思うことが何度もあったからです。

“歯医者へ行けば、むし歯は治るだろう“
“歯医者へ行けば、歯槽膿漏は落ち着くだろう”
と心底信じきっている患者さんが多いのです。僕はその都度、患者さんには歯医者での治療はあくまでも応急処置、対症療法に過ぎない。真の原因治療は患者さん自らが常日頃実践していかなくてはならないことを伝えているのですが、どうも僕の意図するところを真に理解している患者さんは少ないのが現状です。

僕の説明の仕方にも問題があることは重々承知しています。自分がもっとわかりやすく、患者さんの立場にたって歯の健康の大切さ、普段からの心がけ、自己管理の重要さを伝えなくてはいけないのですが、それがなかなか伝わらない。どうしたらよいのか?時には患者さんに厳しく、叱りつけるように諭さなければならないのかもしれません。

“どうして俺の言うことを理解しようとしないのだ。もっと自分の体のことを真剣に考えてくれ!”

何度口を開いて言おうとしたことがあったでしょう。
しかしながら、僕はこれまで一度も厳しい口調で諭すようなことを言ったことがありません。それができないのです。

歯医者稼業も医業とはいえ一種の商売です。患者さんが何人来院して経営が成り立つという側面があるのです。そのため、患者さんに厳しく当たることでその患者さんが二度と来院しなくなる。そんな思いがどこか心の片隅にあるのは事実です。しかしながら、真に患者さんのことを思うなら、時には厳しく叱責することも必要ではないか?

難しい問題です。いくら歯医者が一生懸命熱意をもっていたとしても、患者さん側に関心がなければ馬の耳に念仏です。如何に患者さんの関心を引き出し、患者さんの利益にかなうことを実感させ、持続させていくか?おそらくほとんどの医者、歯医者がこのような悩みを持っているはずです。押してもだめなら引いてみる。アメとムチではありませんが、時には患者さんに適度な刺激を与えることも必要なのかな?最近、そのようなことを自問自答すること多くなった歯医者そうさんです。



2008年07月04日(金) 太っ腹上司に感激

昨日は、午前と午後の診療の合間に地元医師会の会館へ出かけてきました。地元医師会主催の市民向け健康講座に地元歯科医師会の上司の一人K先生が講師として講演することになっていたのです。この度の講演会、K先生はパソコンのプレゼンテーションソフトを利用して講演を行うことになっていたのですが、K先生はパソコンに疎く、どうやって使用、操作すればいいのかわかりませんでした。そこで、僕に白羽の矢が立ち、手伝うことになったのです。
当初は単にパソコンやプレゼンテーションソフトの使用法を伝授するだけの予定だったのですが、いつの間にか僕がプレゼンテーションそのものを作ることになってしまったのです。何かと雑用の多い中、かなりこの講座の準備のために時間を作ることには苦労をしましたが、何とか時間をやりくりし、K先生とも何度も打ち合わせを行いながら昨日を迎えたというわけです。

実際の講演は特に大きな失敗やミスもなく、講演終了後、多くの質問も出たことから成功裡に終わったといえるでしょう。今回、僕は完全な裏方として仕事をしてきましたが、K先生が恥をかくことなく、地元歯科医師会代表として立派に講師を務められた姿を見て、内心ほっとしておりました。

講演終了後、僕は車を置いていた駐車場へ行く時のことでした。K先生の講演のことを話しながら歩いていたのですが、僕が車に乗ろうとした時、K先生が突然言い出されたのです。

「そうさん、今回の講演の手伝い、本当に有難う。これは僕の気持ちなので受け取って欲しい。」

K先生が懐から出されたのは封筒でした。見てみると、封筒には地元医師会の名前と会長名と謝礼の文字が書いてありました。封は全く開いておらず、これは講演を行った演者に対する謝礼金であることが直ぐにわかりました。この謝礼金をK先生は僕にそのまま渡すというのです。

「先生、それはいけません。僕は単に先生の仕事を手伝っただけで、いい経験をさせてもらったと思っています。この封筒はあくまでも先生の講演に対するものですから、僕が頂く性質のものではありません。」

K先生は全く引き下がりませんでした。
「今回、講演が滞りなく終わったのもそうさんの協力のおかげだよ。ただ働きさせるというのは僕の美学に反することなんだ。一番仕事をしてくれた人に謝礼を渡すのは当然のことだよ。」

僕はその場では受け取らざるをえませんでした。しばらくしてから、僕は地元歯科医師会の会長に電話でこのことを伝え、謝礼の扱いについてお伺いをたてました。会長の答えは

「K先生の心の底からの気持ちだと思うから、これはお返しするのはかえって失礼。ここは有難くもらうのが一番じゃないですか。」

ということで、僕は予想しなかった給金を得ることができました。確かに僕は仕事の手伝いはしましたが、主役ではありませんでした。そんな僕に自らの謝礼金を全て手渡すとは。

K先生のお気持ちにひたすら感謝、感激した、歯医者そうさんでした。



2008年07月03日(木) 事前の日程調整がないと・・・

昨日、某専門学校の講義を終え、帰宅すると一通の僕宛の手紙が届いていました。封を開けてみると、中には僕が学校歯科医をしている地元小学校からの案内が入っていました。
内容は、学校保健委員会を開催するので参加して欲しいというものでした。

学校保健委員会とは、学校の保健計画の立案や実施の評価、健康診断結果の評価と対策、疾病の予防、環境の美化、清掃、学校行事や長期休暇における保健問題の討議などを行う委員会です。学校長が主催し、児童会・生徒会の代表、教職員の代表、PTAの代表、地域保健期間の代表とともに学校医、学校歯科医、学校薬剤師などが参加し、議論を行う委員会で、年に1〜2回程度行われるのが普通です。僕も地元小学校の学校歯科医ということで、毎年行う定期検診や就学時検診以外にこの学校保健委員会には積極的に参加をしています。

僕自身、学校歯科医ということで学校保健委員会には必ず参加しようと思っていたのですが、開催日程を見てびっくりしました。開催日が2週間後だったからです。
実は、同じ日に僕は同じ学校保健委員会と同じ時間帯に地元歯科医師会がらみの公務があり、どうしても参加しなければならなかったのです。

正直言って、僕は地元小学校側にもう少し配慮があるべきではないかと考えました。僕自身、いくら青息吐息の零細歯科医院の院長だとはいっても、毎日何もしていない身ではありません。患者さんの治療をしながら、合間に地元歯科医師会の仕事や某専門学校の講義の準備、その他いくつかの仕事をしております。決して暇ではないのです。
せめて1ヶ月前くらいに日程調整をしてもらえれば、僕自身、何とか学校保健委員会の参加時間を作ることが可能だったわけですが、ところが、開催日まで2週間となると、さすがの僕でも日程調整は不可能です。
一ヶ月前、学校歯科検診の際には一年生相手の授業の依頼をされていましたし、実際に授業の準備もし、授業を行ったのですが、学校保健委員会のことは全く聞かされていませんでした。
何だか学校側が自分たちの都合で勝手に日程を決めてしまったとしかいいようがありません。学校側には学校側の事情があったかもしれませんが、それにしても、あまりにも急な学校歯科委員会の開催通知。別な見方をすれば、学校歯科医である僕の参加を拒むために無理やり予定がつきにくい日程を組んだとも言えなくない。そう受け取っても仕方のない日程設定です。

僕は学校側に欠席の返事を出さざるをえませんでした。これまで欠かさず参加してきた学校保健委員会であっただけに、事前の日程調整の連絡がないまま決められた委員会に納得がいかず、精神的なストレスが溜まる一方の歯医者そうさんでした。



2008年07月02日(水) 1ミリグラムの歯垢にばい菌1億個

先週、小学校1年生相手に授業をしてきた歯医者そうさんです。今週は、一般社会人を相手に健康講座をお手伝いすることになっております。いろんな方に歯の健康の大切さ、むし歯や歯周病予防について話をすることがあるのですが、常に心がけていることがあります。それは、極力専門用語を使用せず、わかりやすい言葉で説明することです。しごく当たり前に思われるかもしれませんが、これが結構難しい。普段、歯医者として当然のように使用している言葉や概念、イメージが患者さんには伝わっていないことが多々あるからです。多くの人に歯のことを伝えるには、専門知識を持っていない人の視野に立ち、普段自分たちが話している言葉、考えを翻訳しなおす必要があります。

そんな歯の健康を伝える啓発的な講演、講義、授業ですが、老若男女、全ての人に衝撃を与えることがあります。それは、普段見慣れていないものを見せることです。例えば、歯垢です。誰の口の中にでもある歯垢ですが、これをピンセットなどで一掻きし、顕微鏡の上に載せて見てみると、ほとんどの人はその異様な光景に目が点になります。何せ、数限りない微生物がウヨウヨ存在し、動き回っている像が見えるわけですから。

歯科研究者の調査によれば、口の中には300種類以上のばい菌が存在します。全身には700種類のばい菌がいるとされていますので、口の中には全身のばい菌のうちほぼ半分が存在することになります。
驚くべきはその数です。わずか1ミリグラムの中に含まれるばい菌の数は1億個なのです。一億ですよ!想像できるでしょうか?一億といえば、日本国の人口数にほぼ匹敵する数。わずか1ミリグラムの歯垢の中に日本の人口数分のばい菌が存在しているのです。

もちろん、全てのばい菌が口の中で悪さをするわけではありません。それぞれのばい菌はバランスを取って共存していますが、中には歯に害を及ぼすばい菌が存在するのです。むし歯の原因菌や歯周病の原因菌がそうです。ばい菌の数が増えれば増えるほど、これらむし歯の原因菌や歯周病の原因菌の数も増える。ということは、歯を磨かず、放置したままの口の中は自ずとむし歯や歯周病になるリスクが高くなることが言えるでしょう。

口の中のばい菌数は想像を絶する数があるわけですが、我々は望むと望まないとこれらばい菌と共存していかないといけません。口の中は適度な湿度と温度があり、ばい菌の繁殖には絶好の条件が整っています。そのため、放置していると口の中は歯垢だらけ、すなわちばい菌だらけの状態に陥ってしまいます。ということは、歯や口の健康維持にも悪影響を及ぼす可能性があるわけで、日頃の歯磨きはこれらばい菌を定期的に減少させ、ばい菌の暴走を防ぐ役割があるわけです。
また、定期的に歯医者の下に通い、日頃の歯磨きでは取り除けない汚れや歯垢、歯石などを除去する必要があるのです。



2008年07月01日(火) もしも、相手の心のうちが全てわかる人が患者ならば・・・

以前、誰かのSF小説の主人公設定の一つに他人の心の内が全て瞬時にしてわかるというものがあったように思います。これって非常に興味深い人物設定だと思います。なぜなら、世の中の人は自分と相対している人の気持ちはわからないものですから。もちろん、向き合う人の表情や雰囲気、行動、言動パターン、そして、これまで培ってきた人生経験などからどのようなことを考えているのか推測することは可能でしょうし、推測が当たる確率はかなり高い人もいるでしょう。が、会話を直ぐに理解するが如く、相手の心の内がそっくりそのままわかる能力というのは、おそらくほとんどの人が持っていないものと思います。

もしも、相手の心の内が瞬時にわかる人が僕の患者だあれば、どうでしょう?例えば、親知らずの抜歯が難しく、四苦八苦している時の状況だとします。以下、僕の心の内です。

どうして抜けないのだろう?根っこが大きく膨らんでいるのかな?それとも、根っこが先の方で分かれてしまっているのか?レントゲンではどうも根っこが膨らんでいるように思うのだけど・・・。それであれば、根っこを割るか、骨を削るかだが・・・。根っこの大きさや根っこの位置を考えると骨を削った方がよさそうだ。

そうなると、抜歯後、かなり腫れるなあ。患者さんにはいつもよりも長めに薬を服用してもらうよう処方しておかないといけないし、口だけでなく、紙にも書いて念入りに説明して了解してもらわないと、後でトラブルのもとになる。本当は骨は削りたくないけど、骨を削るしかないか?

必要な器具は器具棚に置いてあったはずだな。○○さん(アシスタントの人の名前)に言って取ってきてもらおう。患者さんはずっと口を開けっぱなしだから、器具を取りに行ってもらっている間は口を閉じて休んでいてもらおう。その時には、患者さんには一言声をかけて、もうしばらく頑張ってもらうように伝えないとなあ。

それにしても、もっと簡単に抜歯できるはずだったのに、予測と実際の抜歯とは違うものだなあ。ああ、何だか肩に力が入っているのがわかるよ。こんなことでは自分が変に緊張していることが患者さんにバレバレだ。ただでさえ抜歯に時間がかかっていることがわかって患者さんは不安がっているはずなのに、俺の肩が力が入っていたら、患者さんに余計に不安を与えてしまう。ああ、どうしたことか?そんなことを思っている間に局面打開だ。○○さんに言わなきゃ・・・・。


これは以前、僕が親知らずの抜歯が上手くいかず、感じていたことを言葉にしたものですが、これが抜歯を受けている患者さんにまるわかりになれば、おそらく患者さんは卒倒してしまうかもしれません。実に頼りない歯医者なのか?と思ってしまうことは必定でしょう。

これからどんな患者さんが僕の歯の治療を受けるか想像がつきませんが、望むなら、僕の心の内を生で理解できない患者さんだけを治療したいものです。


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