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2021年03月30日(火) |
最高に甘いある春の一日 |
歯医者の予約があり、ロクちゃんを連れてニースに出た。もうロクちゃんはかなり目が見えてるようで、色んな物を目で追う。電車の中でも車窓に流れる風景をじっと見つめてた。
歯医者はさっさと終わり、ブーランジェリーで一切れのピッツァを買って公園へ。フランスは外出制限中だが、沢山の人がごろごろと寝転んで、日光浴を楽しんでる。3ヶ月前までお腹の中にいたロクちゃんの目には、太陽の光が強すぎるんではないかと、わたし達はオリーブの木の下の半日陰にブランケットを広げた。おっぱいをあげながらピッツァを食べ、一緒に寝転んで沢山会話した。
「おぉ!おん!」
「お?」
「おぉん!」
隣に寝転んでるロクちゃんが着てるのは、母が編んでくれたベスト。眼鏡をかけて、目をしょぼしょぼさせながら、触れたことのない孫を思って編んでくれたのだと思ったら胸が熱くなった。母がわたしにしてくれたことを真似てロクちゃんを育てていこう、寝転びながらそんなことを思った。春風が頬に優しく吹付け、日差しが肌にやわらかく当たる。最高に甘い春の午後だった。
抹茶とホワイトチョコレートと桜のケーキを焼いた。東京周辺はもう桜が満開だそうだ。いつかロクちゃんと帰国して、桜の下でお花見をしたいな。
クロちゃんはここで朝日を浴びるのが春の朝の日課。写真を撮ろうとしたら恥ずかしがって隠れちゃった。
2021年03月23日(火) |
母子だけではじめてのお出かけ |
今日でロクちゃん生誕3ヶ月となった。フランスは3度目の外出制限中だが、歯医者の予約があり、ニースへ出かけた。母子だけではじめて電車に乗ってのお出かけ。
電車はガラガラで、一両貸し切り状態。トイレに行きたくなってもロクちゃんを中まで連れていかずにすんだ。母が送ってくれたケープをかけて授乳する。こちらにはこういうのないのか、公園なんかで使ってると、人々の視線を感じる。中で何かがモゾモゾいってるから、不思議なのだろう。
ニースの街も人通りが少なく静か。外出中には声ひとつ発しないロクちゃんが、今日は珍しく歯医者で治療中に泣き始めた。助手のお姉さんがカートを揺すったりしてあやしていてくれる。治療が終わり、おむつを見たら沢山ウンチをしてた。不快だったんだろう。許可を得て、歯医者の待合室でまた授乳。今度は助手のお兄さんが”水飲む?”などと聞いてくれる。フランス人の犬好きは有名だが、彼らは赤ちゃんも本当に大好き。見ず知らずの人もベイビーカートの中のロクちゃんを見たがったりする。そして”なんて可愛い赤ちゃんなんでしょ!!”と目をきらきらさせて言うのだ。妊娠中も公共の場で席を譲ってくれたり、レジで先に通してくれたり、みんな本当に妊婦や子供連れの人に親切。この後も買い物に行ったら、大きなカートに商品を積んで運んでたお兄さんが、
「ショッピングカートならどいてっていうけど、赤ちゃんにはどいてとは言えないなぁ。どうぞお通りください」
と自分がどいてくれたりした。段差があればすぐに近くの人がよっこらしょっとベイビーカートの端を持ち上げてくれたり。いつも文句も沢山言ってるけど、フランス人のこういう人間性は本当に素晴らしいと思う。
帰りの電車は朝より少しだけ混んでた。同じ町に住んでて、電車でよく会う顔見知りのお姉さんとはじめて話した。彼女は腕が片腕しかないのだが、いつも小さな女の子をベイビーカートに乗せて押していて、更にその腕にリードを引っ掛けて、大きな犬まで連れてる。
「ニースで働いてるんですか?」
と話しかけた。
「いいえ。この娘が気管支に問題があって、医者に通ってるの」
片腕しかないと自分の面倒すら大変そうなのに、病気の娘と犬と面倒見るとなると・・・両腕あってもロクゃんでいっぱいいっぱいのわたしには想像のつかないことだった。電車の中でトイレに行く時は彼女がロクちゃんを見ていてくた。
こうして親切な人々に助けられ、なんとか母子だけのはじめてのお出かけから無事に帰宅することができた。
家の近くでは、季節がくると箱いっぱいに"servez-vous(ご自由におとりください)"と書かれた箱いっぱいのレモンが置かれる。庭にレモンの木を持ってる人が置くらしい。これ、 Bioだし、果汁が沢山絞れるとてもいいレモンなので、いつももらってきてる。今年はみかんも置かれてた。種が多くて、十分甘いもののやや野生味。サラダや果汁を絞って水の代わりにしてパンを焼いたりして楽しんだ。もう柑橘系の果物の季節もぼちぼち終わりだ。
2021年03月11日(木) |
隣のインディアン・ガール |
ロクちゃんと散歩中、運動場に"隣のインディアン・ガール"を見つけた。この運動場はいつもちょっと躾のワルいティーネイジャー達が屯して、サッカーやバスケットをして遊ぶ傍ら、お菓子を食い散らかしたり、喫煙したりしてる。今日もいつもと変わらない光景があった。違うのはインディアン・ガールがいるということだけ。彼女は正確にはデンマーク人あるいはフランス人だが見た目はインド人、そして今度引っ越すにあたって隣人になる。名前を一度聞いたが忘れてしまったので影でそう呼んでる。彼女はダウン症で、言動が少しおかしい。自分が黒髪でデンマークやフランスで育っているためアジア系の見た目になにか愛着を感じるのか、とにかくわたしは彼女に好かれていて、電話もしょっちゅうかかってくるし、会えば"I love you!!!"と抱きつかれたりする。コロナが心配で、最近は"やめてねっ"ときっぱり断っているのだが。彼女がロクちゃんの最初のお友達になるかもしれないと思うとちょっと不安になる。彼女はお祖母ちゃんと二人暮し。彼女の家は少しだけ複雑だ。お祖母ちゃんはデンマーク人(白人)なのだが、子供ができなくて、二人の子供をインドから養子として迎え入れた。そのうちのひとりの息子がインド系の顔の女性と結婚し、彼女が生まれた。だが、母親はダウン症の娘を見るなり逃げるように去っていってしまった。こうして父親とお兄ちゃんと三人でデンマークで暮らしてた彼女だが、父親は仕事が忙しく面倒を見ていられないため、彼女だけがフランスに移住したお祖母ちゃんの元にやってきたのだ。父親は休暇のたびにここに彼女に会いにきてる。
いつも会う時はひとりかお祖母ちゃんと一緒なので、この辺りのカレッジに通うちょっとワルい子供達と一緒にいるのはすごく違和感があった。しかし、近くまで行き、何が起こっているのか理解して、すごく嫌な気持ちになった。彼女は単純に仲間に入ろうとするのだが、みんな彼女をからかって右にいかせたり左にいかせたりして小馬鹿にしたように笑ってる。純真な彼女は笑われているのなんて全く気にもかけず、仲間に入るためなら何でも言われた通りにしてしまうのだ。彼女は空気を読まずいつでもわたしにまとわりついてくるので、鬱陶しく思うことばかりだが、全くもって心の悪い子ではない。それに彼女は他の子とは違うところで人より秀でてることだってあるのだ。例えばデンマーク語、フランス語、英語と既に3ヶ国語話せるように。この状況を壊したくて、彼女に手を振ってみたが、彼女は仲間に入ることに夢中で全くわたしが目に入っていなかった。苦い気持ちで背中を向け、ロクちゃんは絶対にこういう子をからかって笑うような子にはさせない、そう強く決意しながら帰ってきた。
フラジョレという若いインゲン豆の餡を炊いて、田舎饅頭を作った。白インゲン豆と味はそんなに変わらない気がするけど、ふわふわの白い饅頭を割ると若草色がでてくるのがなんとも春色でときめく。桜の花の塩漬けも乗せたら気分はすっかり春。
家族のアルバムを作りはじめた。わたしも妹も独身だった時、母のケータイの待受画面がもう40歳になろうとしてるわたしの写真なのを見て、うしろめたい気持ちになったものだった。しかしそれから4年、今では毎晩布団の中で二人の孫の動画を見てから眠りにつくというハッピーグランマライフを満喫しているらしい。自分が出産を経験してはっとしたことがある。今までわたしの誕生日には毎年母が何かをプレゼントしてくれてた。でもこの日は母が苦しんで苦しんでわたしをこの世に産みだしてくれた日なんだ。わたしが感謝の意を込めて何かプレゼントしたい。わたしの誕生日まであと半年ある。わたしとクロちゃんのこちらでの生活ぶり(母はクロちゃんのことも気にかけてて、日本から大好物の蒸しカツオを送ってくれてるのだ)、ロクちゃんの成長ぶりなんかを写真と共にBLOGに書き溜めて、製本してわたしの誕生日に贈る予定。
誕生日といえば、リュカの妹が自分の誕生日に家族に告白した。1年半前から交際してるひとまわり年上の男性がいると。昨年の夏、突然職場の近くに部屋を借りて実家を出た時わたしは既にぴんときていたが、家族は全く気付かなかったらしく、このニュースにかなり沸いてるらしい。30歳の女が職場が遠くなったとかそういう理由なしに実家を出ていくとしたら、オトコでしょって思わない?
「思わないよ!!だって30年一度もオトコの話なんか聞いたことないんだよ。一緒にテレビ見てて、お母さんが"この人かっこいい〜"とか言ってても全く興味なさげでさぁ。てっきり女が好きなのかと思ってた」
とリュカ。はぁ、そっちかっ。
買い物から帰る途中ぱちり。いつもわたしの胸ですやすや眠ってるロクちゃん。もうこの辺りでは桜が咲いてる。ロクちゃんの目には桜はどんな風に見えてるんだろう。友人がくれたウールの毛糸で編んだ羊の帽子、なかなか似合ってる。