My life as a cat
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2021年01月26日(火) いつか夢見た生活

ロクちゃんを連れてニースの小児科へ。体重増加がスローなので、再度呼ばれたのだが、今日測ったら先週から一日あたり34g増えてた。生後3週間くらいまでは、あまり空腹を訴えて泣くこともせず、夜もひたすら眠り続けてたりして(小児科医に相談したところ、これが負のサークルで、おっぱいを飲まない→泣く体力がなく眠り続ける→おっぱいを飲まない・・・となってしまうらしい)心配だったが、頑張って起こして飲ませ続けたらみるみる強くなってきて、今では夜も昼も正確な腹時計で3時間おきに空腹で目を覚まして手足をパタパタ動かしだして、少しがっついておっぱいをごくりごくり飲むようになった。わたしのほうも悪露はほぼ止まって、産褥体操だったのを筋肉を取り戻すためのエクササイズに少しずつ移行してる。母子共に大分生活のペースができてきて、少しだけ余裕ができたかな。

小児科の後、妊娠中の検診の後にいつも行ってたピッツァ屋まで歩いた。ここのピッツァは塩加減と生地の厚さがまさに自分好みで、焼き立てをすぐ向かいのベンチに座ってはふはふいいながら食べる(コロナでレストランに腰をおろすことはできない)その時ばかりは幸せだったが、そのうちお腹が圧迫されてるせいで、たちまち苦しくなって、トイレに行きたくなるし、寒さでお腹が張ってきたりすることもあってそうなるとたちまち気分がすぐれなくなった。それが、今はベビーカートに乗ったロクちゃんがピッツァを頬張るわたし達の傍らですやすやと寝てる。

「前回ここでピッツァを食べてた時、こんな日が来ることが想像できたかい?」

「まさか。こんな美しいべべがわたしのお腹からでてくるなんて未だに信じられない」

妊娠中のそれなりに苦しかった日々もロクちゃんが目の前に現れて以来すっかり甘い記憶のようにすり替わってる。20代の時、"いつかもっと歳をとった時、今日と同じ明日がくることを願える日々を送りたい"と思った。その時のわたしは不安定で人生に満足などしてなかったから(20代で人生に満足することは通常難しいと思うが)、40代になるくらいにはこうなってたらいいな、と漠然と思ってた。夜中に授乳しながらしみじみ思う。横たわるわたしにかじりついて懸命におっぱいを飲むロクちゃん。足元に体の温かいクロちゃんがごろりと眠ってる。隣にリュカ。幸せがこみ上げてきて、また朝目が覚めても同じ日がきたらいいと願う。わたしは20代の時に願った自分になることが出来たんだ。みんなそれぞれのペースで成長し歳をとるから今日と同じ明日なんてない。そしてそれを知ってるからこそ、今この瞬間をしっかり噛み締めながら生きることができるんだ。


2021年01月22日(金) タイミングの悪い人々

ロクちゃん新生児を卒業。体重は退院時より400g増加(理想は1kgらしい)というかなりスローペースではあるけど、彼なりに大分前進して健やかに成長を遂げてる。たった28日の間に大分人間っぽくなったように見える。ただ人肌恋しくて泣いたり、昼間起きてる時間が長くなって、夜ぐっすり眠ってたり。母子共に大分生活ののペースも整ってきた。リュカは仕事に戻り、わたしはロクちゃんを胸にぶら下げて買い物に行く。体が密着してると安心するのか、家を出てから帰宅するまで爆睡してる。

母になり、驚いたこと。それはロクちゃんの声だけがいつだってわたしに届くこと。子供の頃、階下から聞こえる母にとってはとんでもなく騒音である父のイビキを聞きながら、安堵して眠った。今でも、誰かのイビキがどこからか聞こえてくると心地よく眠れる。20代の頃、街のど真ん中に住んでいたことがあった。中華料理屋とナイトクラブに挟まれた家。夜になっても通りを行き交う人々の喧騒、中華料理屋から聞こえる忙しい中国語、そしてナイトクラブの音楽。そんな環境でスヤスヤとよく眠った。むしろ人の気配が心地よくもあった。嵐でも台風でも気付かない。これは特技でもあったが、子供ができたら、ロクちゃんの泣き声にも気付かないのではないかと心配になった。ところが、テレパシーのごとく、彼のあげる小さな声にさえ、わたしはすぐに目を覚ますのだった。朝リュカが仕事に出かけたのには全く気付かないというのに。これは本当にすごい。9ヶ月わたしのお腹にいた子だから、見えない糸で繋がっているんだろうか。

クロちゃんはパスタが茹で上がった瞬間や、急いで家を出ようとする瞬間、ウンチをする。母はトイレに入り、便座に腰をおろした瞬間や電車に乗った瞬間に電話をしてくる。この二人のタイミングの悪さはピカイチなのだが、今はそれに加えて、ロクちゃんが朝のカフェを淹れた瞬間に"お腹すいた!!!今すぐおっぱい!!!!"と泣きわめく。朝の一杯だけはカフェインの入ったのを飲んでるから、結局カフェイン摂取しながら授乳するという思わしくない一日の出だしになってしまう。ちゃんと時間を計ってベッドから出てカフェを淹れるのに何故か毎日このパターン。ロクちゃんとの時間はこの上なく甘くて、愛おしいけど、朝のカフェ一杯だけはひとりがいいんだけどな。


2021年01月14日(木) 授乳とおむつと

授乳は”休日なしの一日8時間労働”と助産師さんが言ってたけど、本当だった。授乳して一息ついたらすぐまた授乳の時間。”新生児は欲しがるだけ与えていい”と教わったけど、困ったことにロクちゃんは眠ってばかりいて、滅多に空腹を訴えて泣くことがない。だから2、3時間おきに起こして飲ませる。日中はあげればよく飲むのだが、問題は夜。眠りこけてて頬を叩こうが、目をこじ開けようが起きない。ある夜はなんと10時間おっぱいを飲まず眠り続けた。こちらは脱水症状を起こすのではないかと心配で、1時間おきに授乳を試みて寝不足でへろへろになった。翌日当人は何事もなかったようにいつも通りおっぱいを飲んでいたが。こんな風なので体重がなかなか増えない。ここ数日は調子よく、それでも夜中は4時間くらいで一度起きて飲んでくれてる。この新米ママと新米べべの二輪三脚は、三歩歩いて二歩下がるといった調子で、かなりスローペースな成長ぶりだ。

生後からしばらくは紙おむつを使っていたのを、布おむつに替えた。紙おむつを使い続けた場合、赤ちゃん1人につき、1トンのゴミ(土に還らない)を排出し、20万円かかるというデータがある。布おむつの場合、ゴミはもちろん1トンになるはずもなく、価格も多めに見積もっても半値いかないのではないか。わたし自身もう20年以上布ナプキンを使い続けてきた。ゴミの量、経費を考えてもかなり良い選択だったと思う。我が家は、現時点ではお祝いに頂いた布おむつカバー4セット、これに充てるライナーは余った布で作成。それにHamacというブランドのBioコットンのおむつカバー1つとライナーなんかを買い足して、70ユーロの支出。おしり拭きも余り布で間に合わせてる。外出時用に紙おむつを少し買ってあるがこれが10ユーロほど。これに水道代、洗剤代がかかる。環境にもお財布にも優しい布おむつだが、使い心地はどうなのか。ロクちゃんに意見を聞くのは難しいのだが、恐らくちょっとでも濡れるとたちまち不快、でもおむつを替えた直後は洗いざらしのベッドシーツに体を横たえたような気持ちよさなのではないのかと見受ける。

ロクちゃんがこの世に生まれてきた瞬間から自分の世界ががらりと変わってしまったみたい。リュカは”君は変わらずセクシーだ”と言ってくれるけど、本当かな。わたしの服はあちこちミルクが付いてるし、自分の顔や髪をゆっくりいじっている時間はなかなか作れない。この日記は母乳をあげながら片手で書いてるのだし。一日は授乳とおむつに過ぎていく。でもロクちゃんがこの世に生まれてきてくれたことに感謝しない日はない。”卒乳”という単語を目にして、ポロポロ涙がでてきた。そんな日はあっという間にきてしまうのだろう。ロクちゃんができても、わたしのほうが卒乳できるか・・・自信ない。


2021年01月08日(金) 壁裏の闇

ノエル辺りからリュカの勤務する病院で死人が激増してる。死体の置き場に困り、苦肉の策でレクリエーション・ルームが潰されたというくらいに。生きてる患者も大勢がコロナに感染してる。今フランスでは、全ての医療従事者にワクチンの摂取を義務付けるということが検討されている。リュカのコロナ感染も心配だが、ワクチン接種も心配だ。

昨年の春崩壊してからまだ放置されてる我が家のカーヴ。大雨でカーヴの裏の壁が崩壊して、その瓦礫が我が家のカーヴの屋根に崩落するという事故。我が家もこの家の家主も保険には加入してるが、まずはこのカーヴの裏の壁のオーナーが誰かというところから話は始まるのだが、これがもうマフィア臭むんむん、みんなシラを切っていて、まったく進まない。夏が過ぎ、放置された瓦礫の間から雑草が生え、秋が過ぎ、年越ししてもまだこのまま。そして家主がなんとか突き止めた壁のオーナー。この人は一見優しいおじさん風で、通りで会えばわたしを"マドモアゼル(お嬢ちゃん)"などと呼んで手を振ったりするのだが、目つきがどこか不穏な感じなのだった。痺れを切らして、町長に訴え続けた家主からリュカの電話に残されたメッセージを聞いてひっくり返る。

「今日判明したことは、町長はシラを切り続けてる壁のオーナーの父親でした」

保険に加入してないとかそんなところなんだろうな。カーヴは今年も放置か。


2021年01月01日(金) 瞬きもせず

産院から帰宅して一週間が経とうとしている。赤ちゃんの泣き声が耳にストレスなのだろう、クロちゃんは数日家出気味で心配だったが、ようやく慣れてきたのか、以前と同じルーティンで暮らせるようになってほっとした。ロクちゃんは突然おっぱいが上手に飲めるようになった。リュカはいつもはちょっとした物音で目が覚めたりしてたのに、ここ数日はわたしが夜中に起き出して授乳しててもオムツを替えてても気付かず眠っていられるようになった。今は休暇中でも仕事がはじまったらわたしのように日中仮眠できないから、これすごく大事。わたしは、妊娠中15kg増えた体重は既に8kg減った。大きくなった子宮は6週間かけて元に戻るというが、産後10日で既にかなりへこんでいて、肋の骨が浮いて見えるようになった。仰向けになって眠れることで短時間でも質の良い睡眠が取れてる。妊娠中、体が辛いせいで精神的にも落ち込みがちな時があった。ところが周囲の人は"あともう少しすれば楽になるから"という励ましの言葉なんかじゃなく、"出産したらこれまた夜中に起こされたりして休む間もなくてもっと大変だよ"などと追い打ちをかけてくるではないか。"産後鬱"とか、"育児ノイローゼ"とかそんな言葉が脳裏をかすめて、すっかり不安になっていたのだが、心配いらなかった。体が楽になったことで精神的に開放された。そして、ロクちゃんはすぐに大きくなっていってしまうんだと思うと瞬きもせずずっと見つめていたくて、彼のために夜中に起きることすら嬉しいのだ。手がかからなくなったらきっとそれはそれで淋しいに違いないもの。今しか体験できない"子育ての大変さ"を存分に味わいたい。それにしてもわたしいつからこんなになったの?(笑)(写真:お風呂の大好きなロクちゃん)
                          
正月はこれといって何もない。出産を控えてて、ノエルも正月もどうなるかわからなくて、12月の中旬にはノエル恒例のローズマリーポテトも正月恒例のぜんざい(今年はリュカが突いた突きたての餅で。美味しかったな〜)も既に食べてしまった。家にあるもので何か作ろうと、新年は4本指のカヴァテッリ、パン粉のソースではじまった。何度食べても食べる度に"イタリア人は食の天才!"と唸ってしまう。口の中で幾重にも感じるカヴァテッリの噛みごたえ、パン粉のカリッとした舌触り、こんな少ない材料でこんな複雑で絶妙なハーモニーのレシピを生み出せる人々。デザートにティラミス。妊娠中、わたしに付き合って大好物なのに我慢して食べなかったリュカのために大きな大きなのを作った。

おっぱいをあげながら、ぼんやり目に映る景色はなんとも甘い。カウチに寝そべる猫、毛糸玉、編みかけのニット帽、必死で母乳を飲む赤ちゃん・・・。

今年は新年の目標を掲げる。フランス語上達。自分の感情を感じたそのままに違和感を感じず言葉選びができるくらいには。ロクちゃんの母国語になるのだから、わたしも頑張らなきゃ。


Michelina |MAIL